第97話

「1年前の事件・・・・


かなりきつかったんじゃねえのか・・・」



「・・・・」



「俺ならあんな思いはさせなかった。

"bad jorker"の総長なんか止めて俺んとこ来いよ。」



「・・・・そ、れは、凌久のほっとけない精神で言ってるんでしゅか・・・それとも、私の血が欲しいってことなんでしゅか??」



「は?・・・血??」



少し間が空くと凌久が思い出したように「ああ狂血のことね」と納得した。



「・・・まあお前が飲ませてくれるんなら飲むし、」


「・・・・」


「お前が嫌だってんなら飲まねえよ。」


「・・・・・・」



凌久の無条件に甘えさせてくれるような言葉に、思わず目頭が熱くなった。



真っ直ぐな瞳が私を逃してはくれない。


こんな風に男の人に「守ってやる」だなんて言われたのは初めてだ。


正直、めちゃくちゃ嬉しい。


自分で"総長"だと言っておきながら、

実際それよりも"女"として扱われることがこんなにも嬉しいことだなんて思ってもみなかった。



それはきっと凌久が余裕のある大人だから。



凌久は優しい。


蘭も斗和も。


洸太郎はともかく、ハン君は怖い部分もあるけど「惚れた」なんて面と向かって言ってくれたことには


嘘だとしても嬉しくないはずがない。



横を向いているせいか、すぐに涙がこぼれそうになった。

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