第71話

「で?何で当人はいねーんだよ?」


「・・・そのことなんだけどね凌久、」


「この子だよ。この子が"仮面の女王"。

伊東織果さんだよ。」



洸太郎の言葉をハン君が遮った。


結論だけを話すハン君に洸太郎が溜め息をつく。


その溜め息に被せるように、不機嫌そうなハスキーボイスが部屋に響いた。



「あ"?ふざけんなよ??」



立ち上がった魔王がソファに掛かる白いTシャツを羽織る。


鍛えぬかれた肉体美がシャツに覆われると、銀髪の長い前髪から金色の目が光りを放った。


その美しい獣の姿に思わず私の目が惹かれる。



「・・・そのガキもハーフか。

女王もハーフなんだろ?もしかして妹でもかっさらって来たのか?」



私に視線を合わせる魔王が一歩ずつ私に近付いて来る。



ハン君に無理矢理抱きかかえられた私は、反抗心からハン君の胸元のシャツを掴めずにいた。



でも前からは魔王がやって来る。


幼虫のぬいぐるみを形が変わるくらいにきつく抱き締めた。



駄目だ。


張りつめていた糸が切れる。

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