第65話

「・・・それに、伊東さん、

ボクには着信30件しか入れなかったよね?」


「・・・・」


「何で?」


「え・・・・??」


「ボクが電話に出なくて、

ボクと同じくらい不安な気持ちにならないのは、何で?」



・・・・ええと


それは247件と30件を天秤にかけて言ってるの??


ファイナルアンサーに辿り着けない質問は苦手だ。


しかも私の30件は"不安な気持ち"でかけたんじゃなく"意地の張り合い"でかけただけだし。


答えに困っていると、ハン君が私の膝の上に手を置いてきた。


私が抱く幼虫のぬいぐるみの下からそっとワンピースの中に手を入れてきた。



「っ!?」



おいこら意味不明。


シートベルトをしていてのがれられないのを分かっているのか、なんとも冷静な手つきでワンピの裾から忍ばせる。


ハン君の指先がやたら冷たい。


私は力いっぱい両足を閉ざすも、今の私は小さな子供に過ぎない。


今の力ではどうにもならず、無理矢理手を入れられ、私は両手でハン君の腕を遮ろうとした。



「やだハン君!!こわいっっ!!」



「大丈夫。

今は、これくらいのお仕置きしかしないから。」



何が大丈夫だ!!


"お仕置き"とかいうハン君の声の表情がまるでみえない。


少なくとも今までのハン君はこんな下衆いことはして来なかった。


誰だセクハラ大魔王の魂をハンに呑ませた奴!!


こんなの私が知ってるハン君じゃない!!

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