第64話

きっと今頃もぬけの殻になったアパートの

一室を見て宮部さんは慌てふためいている頃だろう。


じきに私のスマホには着信の嵐が来るはず。



幼虫のぬいぐるみをギュッと抱き締め、ちらっとハン君の方を見た。



「あ、あの・・・・私のシュマホ・・・・」


「ん?ああ、スマホ??」



ハン君が反対のポケットに入っていた私のスマホを取り出すと、勝手に画面をタップして言った。



「・・・・ねえ、

なんでボクの電話に出なかったの・・・・?」


「・・・・え?」


「昨日から何回かけても出ないし、ラインも沢山入れたんだよ?」


「・・・・ごめなしゃい・・・電源切れてて・・・」



私はただ自分のスマホを返して欲しいだけなのに何故か逆手さかてに取られてしまった。


甘い声なのに追い詰められている気分になる。


でも電話に出なかった私が悪いのだから仕方が無い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る