第63話
あともう一つ、気になったことがある。
このリミテッドビルは二越が所有しているのに、店員さんたちが洸太郎のことをどうやら認知していないこと。
前に宗平にこのビルに連れて来て貰った時は店員さんたちが口々に「宗平様」と呼んでいた。
でも洸太郎の前を通る店員さんたちは洸太郎を普通の客と同じ扱いをしている。
洸太郎は宗平の兄なのに少し違和感を感じた。
結局ハン君が私の服を3着とサンダル、アプリコット色のリボンを2つ、そしてカブトムシの幼虫のぬいぐるみを買ってくれた。
ハン君は大学の寮で生活しているはず。
そんなにお金があるとは思えないが気前よく払ってくれた。
今度必ずお金を返すと伝えたら、「違うもので貰うから大丈夫」とハン君は答えた。
それは私の血が欲しいということなのだろうか。
それとも強い私と喧嘩がしたいということなのだろうか。
なんだかんだリミテッドビルには1時間以上滞在してしまった。
「凌久からお怒りのラインだよ。」
洸太郎がミラー越しに後部座席を見た。
「ハン、凌久に電話しときなよ。お前のせいで遅くなったんだから。」
隣に座るハン君が自分のスマホを取り出し、画面を見つめる。
「ん。でもまあ、どーせ向こうも女の子連れ込んでるだろうから。ね。」
と言って数秒スマホをタップし、またすぐにポケットにしまった。
そういえば私のスマホ、ハン君が持ったままだ。
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