第62話
カーテンから顔を出す私に気付いたハン君が
満天の笑顔を私に向ける。
「ねえ、これ、履いてみて?」
ハン君が、履いているスニーカーと同じメーカーのサンダルを持って来てくれた。
話し方はさっきの店員さんにするそれとは違い甘い声に変わっている。
サンダルのマジックテープを剥がすと私の小さな足をサンダルの中に入れてくれた。
まるでお姫様になった気分だ。
全然悪くない。
こんな扱いをされたことは、過去をどう遡っても今までにはない。
ハン君に、はにかんだ笑顔を向けるとまたハン君が抱っこをしてくれた。
「うん、
ボク色に染まったね。」
このお店は服だけではなく、可愛い小物やぬいぐるみなんかも売っている。
私は目を輝かせ、抱っこされていたハン君の腕から無理矢理降りると一目散にカブトムシの幼虫のぬいぐるみを抱き上げた。
「きゃーこれかわいい~!!!!」
店内で幼虫のぬいぐるみをぎゅっと抱き締めると上から洸太郎が幼虫を取り上げた。
「やだやだ!!取らないで!!」
洸太郎が取り上げる高さまで必死にジャンプをすると洸太郎が私を見た。
「・・・本当に君が"仮面の女王"??」
「そうでしゅ!!」
ぱっと幼虫を彼から取り上げると、彼が鼻で笑うのが分かった。
「宗平もなんでこんな訳わかんない女に夢中なんだか・・・」
"洸太郎"からまさかの宗平の名前が出てきた。
似ていると何度か思ったが、やっぱり2人は兄弟か何かなのだろうか。
「・・・・」
私が洸太郎をそっと見上げる。
「・・・もしかして気付いてなかったの?宗平は俺の弟なんだよ。」
宗平はあまり自分のことをべらべらと話すタイプではない。
兄弟がいるなんて全然知らなかった。
「・・・お、お兄しゃんがいたなんて・・・初めて知りました・・・。」
洸太郎が眉間にしわを寄せ溜息を漏らす。
「宗平は俺のこと兄とは思ってないのかな・・・。
俺はこんなに宗平を想っているのに。」
私は思い切り嫌そうな顔を作ってやった。
気持ち悪いなこの人。。
そりゃあ宗平もあんたみたいなのを兄だとは思いたくないだろうよ。
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