第61話

ハン君の気持ちがまるで分からない・・・。



里桜の言う通り、私は騙されたのかもしれない。


ハン君は元々私が総長だということを知っていて友達をよそおって近付いてきたのだろうか。



でもさっきハン君は助けてくれたし今も私に優しく接してくれている。


さっき言っていたチーム名、「fake loser」の「fake」の部分が気になってしょうがなかった。




思っていた通り、本当に"話"だけではないということがすぐに現実になった。



まず彼の走らせるMINIは私もよく知るリミテッドビルに到着する。


ここは宗平の家、つまり二越ふたごえ財閥が管理しているビルの一つだったりする。


あのフリフリの服も宗平はこのビルのお店で買ったようなことを言っていたが、

ハン君はもっとナチュラルな子供服のお店に入った。



すぐにハン君が白地に朱い小鳥柄のワンピースを取り、試着室に私を立たせる。



「着替えるから、万歳しよっか。」



ハン君がニコニコの笑顔で私と目線の合う高さでしゃがむ。



「・・・ええと・・・大丈夫・・・


1人で、着替えれましゅ・・・。」



「ん、そっか。」



ハン君が私にワンピースを渡すと立ち上がってシャッと上の方からカーテンを閉めてくれた。


ワンピースを広げて見ると大きく開いた袖がフリルになっていて可愛い。



Tシャツをそのまま下に落として脱ぐとすぐにワンピースを被った。


長い髪の毛を背中に入ったワンピから出すと試着室のカーテンから顔を出す。


すでにハン君の腕にはいくつかの子供服が掛かっていた。


そんなイケメンの太客を見てかギャルの店員さんがハン君に話し掛ける。



「何歳くらいのお子さんに買われるのですかぁ?」



端から見たらハン君は親戚のお兄さんくらいに見えているのだろう。



「自分で選びたいのでけっこうです。」



「・・・・そう、ですか。」



驚くほど冷めた対応だ。


普段のハン君の話し方じゃない。


しかも塩対応な癖に口調だけははっきりしている。


顔すら見ようとしないイケメンの態度に店員さんは向きを変えると、スタスタとどこかへ行ってしまった。

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