第37話

三潴がカートを押してくれると益々楽しくなった。



「いや~俺も子供出来たら将来こんなんするんかな~♪」



絶対にこいつの子供は1人や2人じゃない気がする。



ハンドルをくるくる回す私と将来の予行演習三潴を見て里桜がちょっと嫌そうな顔をしている。



「おい~、いい年した男がそんなもん押してて恥ずかしくないか??

やたらでかいしよこれ~。」



「なんで?織果ちゃんめっちゃ喜んでるよ?

なんか笑顔の織果ちゃん見ると色々やってあげたくなっちゃわない??」



「甘やかしたら後々いい大人にならないぞ!!ったく。。」



やっぱり私を育てるつもりなのだろうか。


里桜が溜め息をつきながら白菜を物色する。



「白菜よりキャベツがいいでしゅ。」


「ダメだ!白菜のが安いから白菜にしとけ!」



私は反抗心からカートのハンドルについているクラクションを思い切り鳴らした。


腑抜ふぬけた音が野菜売場に鳴り響く。



あ、楽しいなこれ♪



「お前俺を殺す気か!///

んなもん鳴らすなよ!!」



里桜の言葉に私は「プピー」というクラクション音で反応した。



恐らく周りには私たちが兄妹のように見えているのだろう。


奥様方が微笑ましい目で私たちを見る。


でも三潴は若い可愛いママにお菓子売場の場所を聞いていた。


急に動かなくなったカートにイラ立ちを感じ、私は「押してくれ」と里桜の手首を指でつついた。



カートに乗る子供と若いママをナンパする男。


里桜は恥ずかしさのあまり気が少し動転していたのだろう。


ぽん酢を6本も取り、かごの中に入れていた。


今日は鍋かしら。

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