第36話

私は一人暮らしで瞳子さんから毎月貰うお金でやりくりしているため、これでも自炊は欠かさない。


バイトはたまに単発でするくらい。


接客業は向かないから人前に出ないような裏方のバイトばかり。




両親はいない。


母親は私を産んですぐに亡くなり、

父親は私が小さい頃に私という存在を拒否した。


ちょうど5歳の頃だ。


子育てに面倒になったのか

施設に預けられそうなところに瞳子さんが私を引き受けてくれた。


でも私は決して愛を知らない訳じゃない。


瞳子さんという血縁関係のある家族に沢山の愛情を注いで貰ってきた。


だから父親のことも恨んでいないし、その影を追うこともない。


それに今は仲間だっている。





スーパーに遅れて入って来た三潴が、とんでもなく私の興味を引くものを持って来た!


子供用カートだ!!


ピンクのハンドルがついた無駄に幅広のそれは、本当にカートとしての役割をちゃんと果たすのか?という疑問が沸いてしまう。


でも今の私にはそんな装飾も全て必要不可欠なものだった。



「やったー☆カート乗せて~!」



喜ぶ私を見てか三潴が微笑むのが分かった。


三潴が私をふわっと持ち上げ、小さな座席にぴったりと収めてくれた。

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