第13話

私はテレビを見ているフリをしてその背中を見送ると、テレビのボリュームを上げ始めた。


言われた通りベランダの鍵を閉める。


さっきの歌番組が終わって、人形劇が終わって、家庭菜園の番組が始まった。


興味がなくなり、チャンネルを変えるも、やっぱり気になる番組はもうやっていない。



布団が敷いてある部屋に行きスマホを取りに行くと充電がなくなっていた。


もう一度居間に戻って宗平が貸してくれた藍色のハンカチをギュウッと握る。



でも今里桜が居た嬉しさはハンカチでは補えなかった・・・


私は途端に寂しくなり、涙が出始める。



「ああ"ーん"・・・ひっく・・・」



暫く涙が止まらなかった。



トントン

トントン



ベランダのガラスを叩く音がして振り返ると、里桜がまた違う色のレジ袋を持って立っている。


私はすぐにベランダの鍵を開けると、里桜が大きな手で頭を撫でてくれた。



「わあ"あ"あーん。。」



さらに涙が溢れ出る。



「おいおい怖かったのか??


ほら、来いよ。」



里桜がベランダから部屋にレジ袋を置くと私を抱き上げてくれた。


両手で優しく抱っこをしてくれると、あやすように庭に連れ出す。


よく考えるとめちゃくちゃ恥ずかしいことだが、私はその時本当にホッとしたのだ。



里桜が私を抱きながらしゃがむと、そこに咲いているタンポポを見せてくれた。



「これ、知ってるか?タンポポだぞ。」



「・・・・・・」



馬鹿にするな、知っているに決まっている。



でも私はタンポポよりもその後ろにいたものに目を奪われた。

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