第12話

目の前に出された3種類のリンゴに、私はどれから食べようか少し迷ってウサギ型を取った。


いや、やっぱりリンゴ型にしよう!


ウサギ型は皮がついてるから嫌だ。



リンゴをシャリシャリ食べていると今度は

里桜が緑茶を入れてくれた。


熱いからと氷を入れて冷ましてくれ、残ったウサギ型は里桜が全部食べてくれた。



「ほら手がベタベタじゃねぇか。手出してみ?」



両手を出すと濡れ布巾で拭いてくれ、拭きながら私の顔をじっと見る。



「・・・なんでしゅか??」



「いや、織果にそっくりだなと思って。

さすがハーフ、綺麗な顔してんなー。」



「・・・え、いやだから、私が織果でしてね、」



弁解をしようとすると突然里桜の顔が赤くパアッと染まる。



「いや違う!!今のは違うぞ!!

織果が綺麗だとかそういうこと言ってんじゃねぇからな?!!!」



「・・・・・・」



勝手に里桜劇場繰り広げるのは止めて頂きたい。



もうどうでもよくなり、私はまたさっきの歌番組に目をやった。



「・・・・・・」



里桜の視線が私の横顔をじーっと見ているのが分かる。


この人、なんで帰らないのかな・・・


リンゴご馳走になっておいてなんだけど、

さっさと帰ればいいのに・・・・



暫くしてきまずい空気に耐えきれなくなったのか、里桜が立ち上がる。



「・・・・じゃあ、俺はそろそろ帰っから。

ちゃんと戸締まりして織果帰るの待ってるんだぞ?」



「・・・・・」



再び庭の窓を開けると、里桜がサッと塀を乗り越え帰って行った。

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