第19話 神久和樹の思惑
★神久和樹(side)
俺は神久家に生まれた生まれ持って上位の人間だ。
家柄は日本でもトップクラス。ルックスも言わずもがな、そして冒険者としての才能。
全てにおいて自分より優れた同世代はいない。
雪が唯一付いて来れるかどうか位だが、家柄で俺の方が圧倒的に上だ。
そんな雪もルックスは飛びぬけている上に冒険者ランクは俺と同じでCランクで俺に滅茶苦茶従順だ。
雪を俺の家に連れて行き仕事を任せても進んでやってくれるし、最高に使える人間だ。
雪を隣に置いておくだけで羨ましがられるので凄く気分が良い。
まぁ、一つ問題があるとすれば体を俺に許そうとしない所だ。
高校を卒業するまではとか結婚するまではとか言っているが、まぁ、焦る必要もない。
別に他に抱ける女性はいるし雪は将来的に俺の嫁に出来ればそれでいい。
そしてある日俺はネットで興味深い物を目にした。
光龍ギルドのゼロの正体!?という記事だ。
光龍ギルドは今一番勢いのあるギルドと言える。まぁ、それも時間の問題だけどな。
「へぇーゼロの正体が同じ学校の一年か……」
この情報は俺の興味がそそられた。
配信の切り抜きも見たが、新堂龍星は確かに強い。
正直この配信映像が編集されているとは考えにくいが、それでも何かしらのトリックがあるとは思っている。
「大体高校一年生でSランクなんてどう考えてもおかしいしな」
この映像でも何かしらの道具を使っている可能性が高い。
例えばこの羽が実はスキルじゃなくてアイテムっていう可能性もあるしな。
他にも一時的に身体能力を増加させれるアイテムを使用している可能性もある。
光龍ギルドならそんな道具を持っていてもおかしな話じゃ無い。
それにこいつは光龍ギルドのギルドマスターの子供らしいしな。
「それじゃあ、コイツを味方に付ければそんな道具も俺の手に……」
俺はそう思い高笑いが止まらなかった。
それにこいつは今、トレンド入りする位話題性がある人間だ。
そんな新堂龍星が神久ギルドに入れば、神久のネームバリューと新堂龍星の話題性で神久ギルドが注目を浴びる。まさに一石二鳥って訳だ。
光龍ギルドがいくら勢いがあると言っても俺は神久和樹だ。
母さんは既にいないが父さんの人脈は半端じゃない。
俺も父さんが法律的に違法な事を沢山している事は知ってる。
それこそホワイトギルドに手を出してるのは俺がお願いしたからだしな。
それで雪が俺の傍に居続けるなら犯罪だろうがどうでも良いと思ったからだ。
父さんには昔からバレない様にすれば何の問題もないと言われ続けていた。
ていうか大体下の人間が上の人間に従うのは当然だしな。
「まぁ、でも一応父さんに報告だけしておくか」
俺はそう思い父さんに電話をかけた。
『あ!父さん今良い?』
『すまんな。今は忙しいんだ』
『あっじゃあさ、一人だけどうしても神久ギルドに欲しい人間がいるんだけどさ、神久ギルドにも絶対に得だし』
『あー、それだったら好きにしていいぞ。何かあればこっちで対応するしな』
『じゃあ、俺の好きにしていいって事だね?』
『あぁ、会議中だからきるぞ』
そうして電話を切られた。
「ふはは、父さんに許可も取れた事だしどうするか」
新堂龍星に対して裏で手を回しても良いし、雪を使って誘惑するのも良い。
雪の見た目に魅了されない人はいないだろうし。
でも折角同じ学校なんだからもっと面白い様にするか。
俺が雪を連れて直接スカウトに行けば、注目も浴びれるし何より俺が直接行ってあげるんだから新堂龍星とやらも断れないだろう。
「ふふふふふ、待ってろよ新堂龍星……せいぜい俺の下に入れる事を感謝しろ」
◇
――俺は雪と共に新堂龍星の所に行った後笑いがこみあげていた。
「ふはははは、まさか即答されなかったのは意外だがまぁ良い」
あいつの反応的にも迷ってる様子だったし何よりこっちには切り札がある。
神久の力さえあれば光龍ギルドが相手だろうと全く問題ないのだろうし、それにあいつは俺の隣に居た雪の事を暫く見ていた。
それはつまり雪の美しさに魅了されたのだろう。
神久の力を使うのも良し。雪に誘惑されるのも良し。
これは思った以上に簡単に手に入れられそうだな。
光龍ギルドのゼロ。
そいつが神久ギルドに入るんだから一気にトップギルドに成り上がれるだろう。
それにあいつが使って居たアイテムを俺が使えば……
「そうか……」
アイテムを俺が手に入れるには脅すより自分から献上させる方が良いな。
もしかしたら沢山持っていてる可能性もあるんだから全部欲しいしな。
じゃあやっぱり雪を使うか。
そうだな確実に手に入れる為にはそうした方が良いよな。
どうせ雪は俺から離れられない訳だし従順だから断る事も無いだろう。
雪を使って誘惑させる。雪を信用させてから雪にアイテムを受け取らせてから俺に回して貰う。
よし!完璧だ。雪だったら何の問題もなくやってくれるだろう。
「おい、雪」
「何ですか?」
「お前さ、あの新堂龍星って奴を誘惑して来いよ」
「どうしてでしょうか?」
「あいつが絶対に神久に来るって言い切れない訳だから雪が誘惑して神久ギルドに入る様にしろ」
「……そうですか。分かりました」
「もし難しいようなら体を使ってでも誘惑して来いよ?結婚するまではとか言ってるけど胸を触らせる位は出来るだろ?」
将来的に俺は雪を嫁にして愛人を沢山作ろうと思っているが、正直雪が処女である必要は無い。
どの道俺の所に戻って来させるんだからそれまでどこで誰と寝ていようがどうでも良い。
正直に言えば新堂龍星とあいつが持っていると思われるアイテムが手に入るのであれば、アイツに体を捧げてでも神久ギルドに入れろと言いたいが、まぁ、胸を触らせる程度でも大丈夫だろう。
雪ほどの美女の胸を触るなんて新堂龍星からしたら死んでもあり得ない事だろうし。
――その日の夜
『新堂龍星と連絡が取れました。明日から誘惑してきます。少し時間が掛かるかも知れませんが待っていてください』
『あぁ、絶対しくじるなよ』
『はい』
「ふはははは。流石だよ雪。まさか今日から動くなんてな」
雪程の美女に誘惑されちゃえば普通の男だったら誰でも、堕ちるだろうな。まぁ、少しくらい待っててやるよ。
男だったらその位の気概がなきゃだよな。
「ふははははははは」
※瀬戸宮雪は新堂龍星に神久を潰す為に会いに行くつもりだが、少しでも神久和樹を油断させようとしていた瀬戸宮雪からしたら誘惑して来いと言われたのは僥倖だった。
これで新堂龍星に会いに行っても疑われる事もないし何の心配もなく新堂龍星と話せる。そう思いながら神久和樹に連絡をしていた。
勿論神久和樹は瀬戸宮雪が裏切る事なんて考えもしていなかった訳なので、瀬戸宮雪が自分の為に新堂龍星を誘惑しに行ったと思っている。
大体神久和樹は基本頭が弱いので、瀬戸宮雪が自分の仕事を押し付けてる間に自分の家から不正の情報を抜かれていた事に全く気付いて居ない。
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