第4話 オークロードの討伐
「40階層に着いたし早速探しに行くか」
それにしてもこの服着るのは半年ぶり位かな?
この服は各ギルドに国から配布されていて緊急事態の場合のみ着る事が許されていて、他の冒険者に分かりやすいようにするための服だ。
そうする事により避難警告などをスムーズに行える事になる。
よし、時間も惜しいし被害者が居るかも知れないから早速移動しないとな。
俺はそう思い真っ白な"天使の翼"を生やした。
まぁ、生やすと言っても実際には服の上に浮いてるだけで魔力によって連携している。
これは俺のスキルで"双極の翼"だ。
今は"天使の翼"で、もう一つの形態が"堕天使の翼"だ。
前者が簡単に言うとスピード特化の能力でリジェネ効果もある。そして後者が圧倒的パワータイプになり防御力も上がるスキルだ。
どちらにも共通して言える事は空を飛べるという所だ。
まぁ、使い勝手が良いのは圧倒的に"天使の翼"だからほとんどの場合で俺は"天使の翼"を使用している。
「とっとと行こうか」
――それから少し移動したのだが明らかに様子がおかしい。
入口で見たトロールの残骸は新しかったから恐らく誰かが戦ったのだろう……
モンスターがいないのはイレギュラーモンスターが原因か?まぁ、オークロードはモンスターを食べるから可能性は高いな。
この事から考えても誰かがついさっきここに居たのは確実だ。仮にその人がこの先に進んで居たらかなりマズイ、もしかしたらもう手遅れの可能性すらある。
その人が進まないで戻った事を祈るしか無いな……
――俺が全力で移動していた時、前方にオークロードの姿が見えた。
「って!女の子に向かって滅茶苦茶武器を振りかぶってんじゃねーか!!!」
女の子は両膝を地面についていて明らかに動けていない状況だ!
オークロードの歪んだ顔を見れば分かるがさっきまで弄ばれていたのだろう。
「クソ!間に合うか!」
思いっきり振りかぶった武器を振り下ろそうとするオークロード。
俺は後全速力で飛んでいき、一秒遅かったら間に合わない所で何とか持って来た剣でオークロードの大きな腕を切り落とした。
「え?」
「あぶねー、まさか被害者がいるとはな……あと一秒遅かったら手遅れだったよ……」
俺はそう呟きながら彼女を見た。
……笹木さんじゃん。
右足はそこまで重症じゃないが左足は明らかに重症だ……冒険者が痛みに強いとは言え凄く痛々しい。
入口で見たトロールは笹木さんが倒したのだろう、確かに燃えていた後もあったしな。
(まぁ、今は先にこっちの処理からだな)
そう思い俺は再びオークロードの方を見たのだが、切り落としたはずの腕が生えていた。
「そう言えばオークロードは再生能力が凄いんだったな……忘れてたわ」
そうだ、戦う前に笹木さんを少し離して置かないとな。
幸い笹木さんの近くに撮影用のドローンは見えなから配信はしてなさそうだし力を出しても大丈夫そうだな。
「ちょっとごめんね笹木さん、少し運ぶよ」
「え?ひゃあ!」
そう言って俺は笹木さんをお姫様抱っこをする様に両手で持ち上げて避難させた。
「あっそうだ、これ使って良いよ」
俺は母さんから念の為にと受け取った最高級ポーションを笹木さんに渡した。
――再びオークロードの前まで来た俺はオークロードの攻撃を軽く弾いて再び腕を切り落とす。
こいつ……イレギュラーモンスターと言っても深層階にいたオークロードより弱くないか?
一年前の時はもっと硬かった上に攻撃も重かったと思うんだけど……今は"天使の翼"でも簡単に切れるなし……もしかして俺が強くなってるのか?
本当ならもうちょっと戦いを楽しんでもいいけど、今は早く笹木さんを連れて帰る必要があるしちゃっちゃと終わらせようか。
「ぐぎゃぁぁぁぁ」
雄叫びと同時にオークロードは緑色の胃液を飛ばして来た。
「あぶね!てか臭!!!」
オークロードの胃液は酷く匂う上に何でも溶かす特性がある。
この攻撃はまともに喰らうと俺でも怪我を負ってしまう。
……まぁ、怪我云々かんぬんの前に汚過ぎて絶対に浴びたく無いけどね。
「ちょっと今日は急いでるからもう終わらせるぞ」
そして宣言して俺は剣を素早く振ってオークロードの首を軽く切り落とした。
「えっと、確かこの辺だったかな……おっ!あったあった」
オークロードは再生能力が滅茶苦茶強く、首を切り落としても動きが止まるだけで数秒したら治ってしまう。
その為オークロードを倒す為には確実に魔核を潰す必要がある。
しかもオークロードにはその魔核が4つあるので首を落として動きを止めてから確実に潰すのが一番手っ取り早く終わる。
それにしても、笹木さんが手遅れになる前に間に合ってホントに良かったな。
俺はそう思いながら笹木さんの元へと向かった。
★笹木穂乃花(side)
私を助けてくれた男性がこちらを向いた。
(え?何で?)
余りの驚きに私は心の中でそう呟いた。
黒髪で中性的で整った顔をしていてるその男性は、同じクラスの新堂龍星君だ。
私は一応クラスメイト全員の名前を覚えているけど、新堂君とは挨拶位しかした事なかったよね……
それにしても何で彼がここに?ていうか何で光龍ギルドのロゴの入った緊急対策部隊の服を着ているの?ていうか今オークロードの腕を切り落とした?その綺麗な羽は何なの?
駄目だ分からない事が多すぎる。
「ちょっとごめんね笹木さん、少し運ぶよ」
「え?ひゃあ!」
新堂君はそう言って私を優しく持ち上げた。
見上げると新堂君の顔が近くて、声には出さないけど私は明らかに顔が熱くなっているのを感じた。
一応配信中なのに恥ずかしい……
私はそんな事を思っていて、さっきまで痛かった足の痛みを忘れていた。
それから私を下ろして新堂君が高級ポーションを置いて行った。
気持ちは凄く嬉しいけど流石にこれは使えないよ……Cランクの私からしたら高すぎてお返しが出来ない。
――そんな事を思いつつ新堂君の方を見ると再生したオークロードが新堂君に向けて攻撃をしていた。
その攻撃をいとも簡単に新堂君は弾いた。それも私にしていた舐めた攻撃じゃなくてオークロードの全力の攻撃をだ。
(あり得ない……あんな事は久遠さんでも難しいんじゃ……オークロード相手にまるで赤子の手をひねる様に戦っている)
それから圧倒言う間に新堂君がオークロードに勝利した。
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