第5話 オークロードの討伐完了

 ――闘いを終えた俺は笹木さんの所に来たのだが……何故かポーションを使っていなかった。


「えっと?笹木さん?」

「は、はい!」

「何でポーション使って無いの?」

「こんな高いポーション私じゃ使えませんよ!!」


 笹木さんは慌ててそう言うが……何で敬語?


「何で敬語なの?それにそれは使ってくれないと俺が怒られちゃうからさ、使ってよ」


 今の笹木さんはイレギュラーな怪我を負った訳で、そんな笹木さんにポーションを使わないで放置したら確実に母さんに怒られる。

 ダンジョンで起きた事は自己責任とは言え、母さんはギルドの人……特に女子に対しては滅茶苦茶甘いからな。


「敬語はついね……それで怒られるって誰に?」

「誰って……そりゃ母さんにだけど」

「母さんって……何で怒られるの?」


 そうか、そう言えば母さんは偽名で活動しているから俺が息子って事すら知られて無いんだったな。

 まぁ、同じギルドの人だし話しても良いか。変に言い訳すんのもめんどくさいし。


「俺の母さんは光龍の副ギルドマスターだよ」

「え?えぇぇぇぇぇ!!!いててっ」

「そんな大声だすから痛むんだよ……良いから早く飲んでよ」


 俺はあえて呆れたような目で笹木さんを見た。


「分かったからそんな目で見ないでよ……」


 そんな俺を見た笹木さんは少ししょぼんとした感じでポーションを飲んだ。


「ありがとう……」

「うん、笹木さんが無事で良かったよ」

「えっと……」

「ん?どうした?」


 笹木さんは何かを言いたそうにしている。


「新堂君のお母さんが副ギルドマスターならお父さんはギルドマスターって事だよね?」

「当たり前だろ?」


 何でそんな当たり前の事を聞いて来るのだろうか?


「じゃあやっぱり新堂君がゼロって事???!!!」

「……何でそう思うの?」

「いやだって光龍のメンバーは配信義務があるじゃん、でも新堂君は配信してないし、その上あんなに強いんだから誰でも分かるよ」


 まぁ、そうだよな。

 遅かれ早かれバレる事だしもう良いか。同じクラスで同じギルド同士何だしね。


「そうだよ俺がゼロで合ってる」

「やっぱりそうだよね!!!!!凄いよ新堂君!!!!!」


 俺がゼロと分かって笹木さんは目を輝かせて喜んでる。

 とてもじゃないけど今さっきまで死にそうになっていた子とは思えないぞ……


「あっ、でも何で隠してるの?」

「んー、隠してると言うよりかはわざわざ言う必要も無いかなって感じ」

「え?凄!」

「え?何が?」

「だって自分が強いのに自慢しないどころかそれを隠す何て超謙虚じゃん!!!冒険者って基本自分を大きく見せたい人ばっかりだからさ」


 えっと、とてもじゃ無いけどめんどくさかったとは言えないな……

 まぁ、良い方向に誤解してくれてるならいちいち訂正する必要もないか。


「まぁ、いずれはバレると思うけどね。出来れば笹木さんも内緒にしておいてね」

「え?」

「ん?何か変な事言った?」

「えっと……ずっと配信されてるんだけど……」

「え?」


 配信?配信ってドローンを使ってするんじゃ?どこにもドローン無いぞ?


「ドローンは?」

「ドローンだったらそこにあるよ」


 笹木さんが指を指す先の空間が若干歪んでいると思ったらドローンが姿を現した。


「え?なんでドローンが透明なの?」

「何でって、ドローンは透明じゃないとモンスターが壊しちゃうから撮影中のドローンは透明が普通だよ?それにほら、ここに赤い腕輪があるでしょ?これは配信してるって証なんだよ?」


 マジかよ……全然知らんかった。

 完全にやらかしてんじゃん俺……いやまぁ、ドローンがあると分かっていたとしても笹木さんを助ける為に動いてたから同じだとは思うけど……


「因みにどの位見てるんだ?」

「えっとね、凄い……更に増えてる。今は1万5千人ですね」


 てことは久遠さんの半分くらいか……って滅茶苦茶多いじゃねーか。

 これはもう誤魔化すの不可能だな……てか俺の名前バレたら両親もバレるが……問題は特にないか。


「なる程ね……」

「えっと、配信は一旦切るね……」

「うん」


 そうして笹木さんは気まずそうに配信を切った。


「ごめんなさい」

「いやいや、俺の知識不足だし笹木さんは何も悪く無いよ、それに別に俺がゼロってバレても問題ないしね」

「そうなの?」

「うん、自分で言いふらす事はしないだけでバレた時はその時って思ってたしね」

「そうなんだ、良かったよ……」


 俺がそう言うと笹木さんはほっと胸をなでおろした。


「まぁ、そう言う訳だからこれからは同じギルド同士よろしくね笹木さん」

「えっと、出来れば穂乃花って呼んで欲しいな……」

「そう?なら穂乃花って呼ぶよ。後それだったら俺の事は龍星で良いよ」

「うん、よろしくね龍星!!!」


 俺がそう言うと穂乃花はぱあっと笑顔になりそう言って来た。


「取り敢えず帰ろっか、オークロードの討伐完了報告は急いだほうが良さそうだしね」

「うん!そうだね」


 それにしてもこれからは騒がしくなりそうだな。



 ――俺は穂乃花とオークロード討伐を報告するためにギルドに戻って来た。


「母さん終わったよ」

「お疲れ様……穂乃花ちゃんも大丈夫だった?」

「はい、龍星が助けてくれたので」

「穂乃花が居るの分かってるって事は母さんは配信見てたの?」

「うん、龍星が出て行って暫くして気付いたの」

「なる程……」

「それよりとうとうバレちゃったわね」

「まぁ、別に何も変わらないよ、ゼロってバレてもね」

「そうね……」

「あぁ」


 少し周りが騒がしくなりそうだけどやる事が変わる訳でもないしな。


「まぁ、そんな事より穂乃花ちゃんが無事って事が大事だからね……所で二人は配信だと呼び方違ったよね?」


 ニヤニヤしながら母さんがそんな事を言って来た。

 

「え、えっとその……」


 穂乃花……滅茶苦茶慌てるじゃん。


「まぁ、クラスメイトだしね、特に深い意味がある訳じゃないよ」


 俺がそう言うと穂乃花は首をブンブン縦に振った。


「あらそう、まぁこれから龍星をよろしくね穂乃花ちゃん」

「えっえ?よろしくって……え?」

「龍星はダンジョンの事は詳しいんだけど、その他の事は全然知らないの。他の配信者の事だったり、光龍ギルドの冒険者すら分からない位だからね。そんな訳でちょっと色々と教えてあげて欲しいの。私達が教えようとすると適当に流しちゃうとおもうから。強制じゃないから良かったらだけどね」

「……はい。分かりました」


 母さんの言葉に穂乃花は明らかに恥ずかしそうにしている。


「まぁ、今日は疲れただろうから解散しましょうか」

「そうだね、俺もちょっと寝不足だからね」

「あんたは昨日遅くまでゲームをしてたからでしょうが」

「……」

「ふふふっ」


 母さん……俺も思春期の男だよ。

 クラスメイトしかも女子が居る中でそれを言われるとちょっと恥ずかしんだけど……

 穂乃花も笑ってるし。

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