第3話 配信者笹木穂乃花

「皆元気だった?今日は光龍ギルドに入ってから初めての配信だよ!!!」


:ネットニュースにもなってたけどやっぱりガチネタなんだ!!!おめでとう!!!

:1000円 おめでとう!!凄すぎるよ

:5000円 光龍ギルドは流石に熱すぎる!トレンド入りしてたよ!!

:流石僕が認めた穂乃花ちゃんだ

:↑きもくて草 でも本当におめでとう!!!

:光龍ギルドってCランク冒険者穂乃花ちゃんだけ?

:↑光龍ギルドは確か所属している冒険者は一人を除いて全員が配信者であるのが基本条件だから分かるけど、半年くらい前は他にもCランク冒険者が一人だけ居たけどその人はもう上がってるから現在は穂乃花ちゃんのみ。

:マジか……滅茶苦茶スゲーじゃん……

:10000円 光龍ギルドおめでとう!これからも応援してます!!!


 ヤバい……視聴者がいつもの三倍以上いるよ……

 分かってはいたけど光龍ギルドの影響力って凄いんだな……よし!気合を入れて頑張ろう!!!


「皆ありがとうね、スパチャを送ってくれてる人も本当にありがとう!!!本当に自分でもびっくりだよ!まさか光龍ギルドに受かるとは思っていなかったからさ」


:光龍ギルドって一年前の快挙の頃はギルドマスター、副ギルドマスターを含めずに冒険者が10人しか居なくて、現在は穂乃花ちゃん含め30人くらいだから本当に入るの難しいからね?

:↑マ?って事は一年で20人しか入れてないのか……ハードル高!

:少数精鋭って感じのギルドだしそれで日本最強ギルドだからね、かっこよすぎる……入れた穂乃花ちゃんマジ凄い!!!

:10000円 プレッシャーがあると思いますが頑張って下さい!!!いつも可愛いです!!!


 プレッシャーか……不思議とそこまで感じて無いんだよね。

 私の心情的にプレッシャーよりわくわくの方が圧倒的に強いからね。


:それで今日は何をするの?


「そうだね、今日は初めて見に来てくれた人も多いと思うから、私の戦いを見て貰いたと思ってるのでちょっと深めに潜って見ようと思ってるよ」


:マジ?どの位?

:頑張って!!!

:大丈夫!!!穂乃花ちゃんが強いってのはいつも見てる人だったら全員わかってるからね!!!

:でも俺達は分かってるけど新規リスナーは光龍ギルドを見てる人が多いんだよね?目が肥えてそうでちょっと心配

:↑それは思った。


 そうなんだよね……正直そこについては私も心配している。

 私のリスナーにはCランク冒険者でも上位の方と言われているから、ちょっと自信がついていたけど光龍ギルドと比べてたらまだまだってのは明らかだからね。

 でも今はネガティブになっても意味無いし思いっきり頑張ろう!!!


「そうだね、今日はソロで40階層の攻略できたらいいなって思ってるよ」


:40ソロってCランクで可能なん?

:↑ランクが全てじゃ無いから一概には言えないけど可能ではある……と言ってもかなりキツイ

:俺は一応Bランク冒険者だけど普段から穂乃花ちゃんを見ていて可能だと思ってる……実力的にはBランク冒険者でも良いと思う

:確かに実力あるけど経験が足りないって感じはする

:私は冒険者じゃ無いから良く分からないけど、とにかく頑張ってね穂乃花ちゃん!!!安全にね!!!

:500円 ファイト!!!


「応援ありがとう、それじゃあ早速行くね!」


 そう言って私は転送陣を経由して40階層まで足を進めた。


 ――それから数分後あっという間に40階層まで着いた。


「おっ!早速モンスターが居るね!!!トロールか、パーティーだと簡単に倒せるけどソロだとどうだろう」


:穂乃花ちゃんなら大丈夫でしょ?

:一匹なら何とかなるかな?複数体いたら確実に負ける。

:まぁ、トロールはそんな強い方じゃないし大丈夫でしょ、攻撃が重いだけど速度遅いし。


 私はコメントをチラ見した後に、何も言わずにトロールと対峙する事にした。

 トロールだったら一対一なら負けない自信があるから大丈夫!


 手に持っていた双剣に炎を纏わせて攻撃態勢に入る。

 トロールの弱点は背後。私は双剣使いでスピードには自信があるのでトロールは得意な相手だ。

 トロールが放つ暴れ攻撃さえ気を付ければ無傷で勝てるはず!


 私はまず勢いをつけてトロールに軽く剣を振う。威力は無くていい。この攻撃はトロールのおお振りを誘って次に繋げる攻撃だ。

 私の攻撃につられたトロールは誘導した通りに目の前に来た。そして私に向かって大きく武器を振りかぶった。

 それに合わせて私はスピードを活かしてトロールの背後に立つ。武器を振り下ろしたトロールの隙だらけの背中を両手に持つ炎を纏わせてある双剣で思いっきり攻撃をする。


 流石にこれだけじゃ倒せなかったが、トロールは目で見て分かる位に明らかにダメージを負っている。

 私は同じ事を数回繰り返してトロールをあっと言う間に討伐した。


「ふぅー、トロールだったら何とかなるね」


:え?本当にCランク?スピード早くね?

:いつも通りだよ、穂乃花ちゃんはスピードと炎が武器だからね

:動きだけ見たらちゃんとBランク冒険者だな……てか経験不足にも見えないよ

:↑マジでそれ、現在Cランク冒険者の俺よりかは明らかに全然強い……自分より10歳以上も年下なのに……

:↑元気出せ、俺はあんたと同じ位の年でEランク冒険者だよ……

:流石に光龍に入れただけあるわ……これは流石に納得。

:初見だけどマジで将来有望じゃん……


 よし!コメント欄を見た感じだとかなり好印象だ!!!

 とは言え相手は私の得意なタイプだから簡単に倒せた訳なので油断は絶対に出来ないよね!


「それじゃあ先に進むね♪」


 ――そう言って暫く歩いていたのだが……


「何か全然モンスターが居ないね」


:ほんとにね、何でだろう

:有識者居ないか?

:誰かが先に来たんじゃない?

:そんな狩りつくす事ある?

:まぁ、トロールを倒して実力はちゃんと見れたんじゃない?

:↑そうだね、トロールが40階層で考えるとそこまで強くはないとは言えちゃんと強い事は確認できた。


「んー、でもここで終わるのは流石に味気ないからもう少し探してみるね」


:頑張れ

:気を付けて


 ――それから数分間足を進めた時の事だった。


「え?」


 前方にとてつもなくデカい影が見えたと思ったら、一瞬にして体全体の力が抜けた。

 絶望、その言葉がピッタリな位私は恐怖を感じた。

 戦う必要なく分かる……圧倒的な力の差。余りの圧に動く事すら出来なかった。

 徐々に近づいて来るそのモンスターの正体は……


「お……オーク……ロード……」


:は?何でオークロードが40階層にいるんだよ!!!!!!

:イレギュラーモンスターだったのかよ!!!穂乃花ちゃんはやく逃げて!!!

:いや無理だ……オークロードの圧にやられて身動き一つ取れない状態だよ……それ位圧倒的な差があるんだよ

:オークロードってAAAランクの冒険者が倒せるくらいのモンスターだよね?ヤバくね?

:何でリスナーは誰もイレギュラーモンスターに気が付かないんだよ!!!

:↑いやリスナーを責めても意味ねーだろうが!!!てか分かる訳無いだろう!!!

:てかイレギュラーモンスターってなんだよ……


 私の前のオークロードは私の事をじっくりと眺めた後に、餌を見つけたかのように嫌悪感を感じさせる様な顔でニヤっとした。

 次第にオークロードは持っていた武器を私に振りかざしてきた。


(駄目だ!こんな所で終わる訳には行かない!!!折角憧れの光龍に入ったんだから!!!動け!動け!動け!)


 武器を振り下ろすオークロードに対して私はギリギリで動く事が出来たがその際に右足をやられてしまった。


(痛いけど動けない程じゃない……逃げるか……いや、今の状況で逃げ切れるとは思えない、ならどうする……相手が油断している隙を見つけてどうにかして逃げ切るしかない……今は攻撃を避ける事だけに集中しよう……)


 それからオークロードが追撃をしてくる。

 一発目は避ける事が出来て、二発、三発目も避ける事が出来た……しかし四発目は明らかに攻撃の速度が速くて左足を狙われて攻撃を受けてしまった。


(あ……これは……もう動けないや……)


 オークロードは終始手加減をしていて、最後の一撃だけそれまでと比べて数倍早かった。

 もろにダメージを負った左足はとてもじゃないけど自由に動けるようなケガじゃなかった。

 分かってはいたけど弄ばれてただけだったんだね……


(はぁ、お姉ちゃん泣くだろうな……光龍に入ったって聞いた時あんなに泣いて喜んでくれたのに……)


:おい!まじで死ぬじゃん!!!!!!!!

:国は何も対処して無いのかよ!!!

:↑無理だろ?そんなに早く対応できる訳無いだろうが!!!

:久遠さんとかは居ないのか?光龍じゃなくてもいいから誰か来てくれよ!!!!

:穂乃花ちゃんは俺の生きがいなんだぞぉぉぉぉぉ!!!!!


 醜く嘲笑うオークロードは、涎を垂らしながら最後の一撃と言わんばかりに武器を振りかぶった。

 そんなオークロードが雄叫びと共に武器を振り下ろそうとした時、オークロードの振りかぶった方の腕と武器が地面に落ちた。


「え?」

「あぶねー、まさか被害者がいるとはな……あと一秒遅かったら手遅れだったよ……」


 そこには私の所属する光龍ギルドのロゴが入った緊急対策部隊の服を着て、天使の羽みたいな物を生やした男の人の後ろ姿があった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る