第2話 光龍ギルドの新人
俺はいつも通りの時間に登校して教室に入った。
俺が通う高校は比較的冒険者の人が多い。
一応クラスの人数が35人くらいで大体30人位の人が冒険者として活動していてるのが俺の高校だ。
それ以外の人も将来的に冒険者関連の仕事を目指している人がほとんどだ。
例えば、ギルド経営やトレーナーを目指している人がコネクション作りや知識を得る為に来る人が多い。
今はもう引退をしているが、この学校の学園長が割と有名な元AAAランク冒険者って事で、その学園長に憧れてこの高校にした人もいるらしいからその影響もあるだろう。
「おっす、おはよう龍星」
俺に話しかけて来たのは友達の眞壁哲夫(まかべてつお)だ。
彼は親が冒険者なので親と同じギルドに属しているらしい。
「おはよう哲夫……なんか今日はやけに騒がしくないか?何かあったのか?」
俺が教室に入った時からそうなのだが、クラスメイト達がやけにざわざわしている感じだった。
「お前って奴は、本当に冒険者界隈に興味ないんだな……同じクラスの笹木穂乃花(ささきほのか)っているだろ?」
「あぁ、Cランク冒険者で一目を置かれてる人だよな」
高校一年生でCランク冒険者というのはかなり凄い方なのだ。
この国では13歳から冒険者になれるのだが、全員Fランクから始まるので高校一年生でCランク冒険者となると2年ちょっとで三ランクアップしている事になる。
「そうそう、それでその笹木さんが光龍ギルドに入ったって訳だから教室中が騒いでるんだろうな」
「ごほっ!」
俺はそれを聞いて飲んでいたカフェオレを吐き出しそうになってしまった。
今までは光龍ギルドに俺以外の高校生は居なかったのだが……そう言えば母さんが、最近Cランクの子が入ったって言ってたけど……笹木さんの事なのかよ!
それだったらいずれ俺の事バレそうだな……まぁ絶対に隠したい訳じゃないからいいんだけど。
「どうしたんだ?」
「いや、ちょっと飲み物が変なところに入っちゃっただけだ」
「そうか?てかヤバいよな、高校一年生でCランクな上に、あの光龍ギルドに入れるとか流石に将来有望過ぎるよな」
「そうだなー」
「滅茶苦茶興味無さそうだなお前……」
「そんな事ないぞ?」
「まぁ、龍星だもんな……」
哲夫は呆れたようにそう言って来るがいつも通りなので特に気にする事でもない。
俺が冒険者について全然知らないのは事実だしね。
――その後俺達が話していたら教室のドアが開き、一人の人物が入って来て教室が一瞬無音になり直ぐに騒ぎ始めた。
「おはよう!笹木さん!」
「おはようございます、穂乃花ちゃん!」
「おは!穂乃花!」
クラスの大半がテンション高めで笹木さんの周りに集まって行った。
笹木さんは社交的で、元々コミュニケーション能力が高く友達が多かったので、皆と楽しそうに話している。
「なぁ、哲夫……笹木さんってどういう冒険者なんだ?」
「お!珍しいな龍星が他の冒険者を気にするなんて」
「そりゃこんだけ騒がれたら気になるよ、俺も一応冒険者なんだからさ」
俺は哲夫にもSランクで光龍と言う事は話していないが、冒険者をやっている事だけは何となくで話している。
「笹木穂乃花と言えば高校一年生でCランク、その上ルックスも良くて男性ファンだけじゃなく、女性ファンも多く配信者として活動していて今では30万人の登録者がいる大物だ」
へー、30万人だとしたら多いのかな?基準が久遠さん達の俺からしたら良く分からないけど……多分凄い事なんだろうな。
「因みに30万って多いのか?」
「そうだな。かなり多いと言っていいと思うぞ、Bランク配信者でも30万行かない人も結構いるし、でもまぁ光龍で考えると少ない方だけどな、とはいえ高校一年生でCランクなんて普通はあり得ないから、かなり注目を浴びてるってのもあるな」
「ほう……なるほど」
「それから笹木さんは双炎と呼ばれていて期待の新生で有名だ」
「双炎?」
「そう!使う武器が双剣で炎属性持ちだからそう呼ばれてるんだぞ」
双炎か……かっこいい名前だな。
「てか笹木さんは実名で活動してるのか?」
「そうだぞ、最近のダンジョン配信者は実名で活動する人が増えて来たんだ」
そうなのか、父さんと母さんは実名を公表してないからそれが当たり前なのかと思ってたわ。
丸山さんも偽名らしいし……あっ、でも確かに久遠さんは実名って言ってたな。
◇
――そんなこんなで学校が終わったので俺は家でゴロゴロしていた。
「んー、暇だし配信でも見てみるか」
余りにも暇だった俺はそう思いスマホを手に取ると、母さんから電話がかかってきた。
『あ!龍星!学校終わってるよね?』
「うん、今家いる」
『お願いがあるんだけど良い?』
「んー、事によるけど何かあったの?」
『実は国営から依頼が来て、どうやら原宿ダンジョンに異常が発生したらしいの』
「異常?スタンピード……ではないかそれだったらもっと騒がれてるだろうし」
『実はイレギュラーモンスターが発生したみたいなの』
イレギュラーモンスターか……
本来ならもっと深い階層で出現するはずのモンスターが浅い階層で現れるモンスターの事だよな。
「なる程それで緊急で光龍まで依頼が来たんだね」
『うん、そうみたい』
「イレギュラーモンスターってどのモンスター?」
『原宿ダンジョンの40階層にオークロードが出たらしいの』
オークロードは本来なら深層階にいるはずで、俺が戦った時は65階層位だったはずだ……
強さ的には久遠さんならソロで倒せるレベルかな。
そんなのが40階層にいるのは流石にヤバすぎるな……
「俺に頼む場合ソロで行くけど問題無い?」
『うん、急ぎだからそれで大丈夫』
「分かった」
『ごめんね、今ギルドで動ける人が居なくてね』
「良いって、大体俺は戦うの好きだし、オークロードだったら相手にならないしね」
俺的にはこれは本音で、ダンジョン関連の問題だったら是非頼って欲しい。
普段ギルドの事を両親に丸投げしてほとんど手伝っていないから戦闘面では手助けをしたい気持ちは大きい。
戦うのが好きなのもそうだし、被害が出るのも気になるしね。
『それともし他の冒険者がいたら注意喚起してあげて欲しいの』
「勿論そのつもりだけど光龍ギルドの人はダンジョンに潜ってるの?」
『それが一番心配なのよね……一応全体連絡は送ってるけど見てない人も居るからさ……』
「なる程……だったら急いだほうが良さそうだね」
『うん、それじゃあお願いね、大丈夫だとは思うけど気を付けてね』
「分かってるって」
『それと念のためにポーションを持っていってね』
「了解」
そうして俺は軽く準備をして原宿ダンジョンへと向かった。
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