最強ギルドを経営している両親を持つ俺は実は最強でした。

羽川 空

第1話 悠々自適な最強冒険者

「んー今日も皆頑張ってるなー」


 俺はダンジョン配信者を複数のモニターを使って見ながらそう呟いた。

 人によってはソロで潜って居たりパーティーで潜っていたり、深い階層に居る人も居れば浅い階層でわちゃわちゃしいる初心者たちもいる。


 今配信している人で特に目に入る人はAAAランク冒険者の東宮寺久遠(とうぐうじくおん)さん。

 24歳にしてAAAランクまで上り詰めた女性で、強さは勿論モデル顔負けなルックスを持っていている。

 光龍というギルドに属していてその中でも高い人気を誇っている。


 次はAAランクで年齢は35歳の丸山隼人(まるやまはやと)さん。

 見た目こそ普通のおじさんだが、戦闘スタイルが凄く参考になる。

 安定した立ち回り、分かりやすい動き方を多くの冒険者が参考にしていて、人柄も良い事から久遠さんほどじゃ無いけどダンジョン配信者の中でもトップクラスに人気を誇っている。


 今配信している人で特別人気を誇っているのはこの二人だろう。

 宍戸久遠さんは登録者が250万人いるし丸山隼人さんは登録者が120万人いる。

 人気の方向性こそ全然違うがこの二人は間違いなく光龍での戦力と言えるだろう……まぁ、俺はこの二人以外の配信者は名前すら憶えて無いんだけどね……


 因みに250万は日本ではトップクラスだ。

 Sランク冒険者になる人は基本的に自分のギルドを持つ様になるから配信をしなくなるって所も大きいかな?

 日本の現役Sランク冒険者は俺を除いたら5人いるのだが父さん含むその内3人は既に年齢が40を超えているので今は自分のギルドを経営している。


 ギルドマスターじゃないSランク冒険者は二人いるのだが……

 一人は自由人過ぎてギルドには属さないで、気が向いた時に配信しているみたいでそれが凄い人気で登録者は1000万とぶち抜けている。

 まぁ、25歳で見た目も可愛いく戦闘スタイルが派手なので海外人気もすごいんだよな。


 あと一人は男性で34歳なのだが彼は全く配信しないし、国や彼の所属しているギルドから要請が入らないとダンジョンには潜らないらしい。

 まぁ、これまでに稼いでるから今はゆっくりと暮らしているのかな?


 冒険者の事を全く分からん俺でも日本のSランク冒険者の事くらいは知っている。


 俺がそんな事を思っていたら後ろから頭を軽くチョップされた。


「いて……何すんだよ母さん」

「何が、今日も皆頑張ってるな……よ、あんたも配信でもしたらいいのに」

「したく無い訳じゃないけど今は良いかな……」

「まぁまぁ、いいじゃないか、今の光龍があるのは間違いなく龍星のおかげなんだからさ」

「そうだそうだー」

「はぁ、全くあなたが甘いから龍星が調子付くのよ」


 そんな会話をしている二人は俺の両親でギルド光龍のギルドマスターと副ギルドマスターだ。

 五年前、俺が11歳の頃にギルドを立ち上げ、今では日本最強とまで言われるようになったのが光龍だ。

 と言っても先程父さんが言った様に俺の功績がデカいだろう。

 

 一年前このギルドが日本最強と言われ始めたのだが、それは原宿ダンジョンの深層で、配信こそしていなかったがエンペラードラゴンを討伐したからだ。

 世間には配信はしていないが光龍のギルドメンバーである、"ナンバーゼロ"が攻略したとだけ言っていて、ソロかパーティーかすら言っていないけどそのおかげで注目を浴び始めた。

 疑う人も居たのだが、証拠としてエンペラードラゴンの素材を持って帰ったら簡単に信じて貰えてそれから波に乗って来て現在では日本で最も最強と言われるようになったのだ。


 因みに俺の家族を軽く紹介する。


 俺が新堂龍星(しんどうりゅうせい)

 冒険者ランクはSランクで高校二年生の16歳だ。

 自分で言うのもなんだけど俺には冒険者としての才能が滅茶苦茶あって圧倒言う間にSランクまで上り詰めた。

 まぁ、遺伝だねこれは。

 一応両親以外は数えれるほどしか俺の正体を知っている人はいないが、光龍では自意識過剰とかではなく確実に一番強いと思う。


 父親が新堂龍一(しんどうりゅういち)

 冒険者ランクはSランクでギルド光龍のギルドマスター。

 自慢じゃ無いが俺と同じSランクとはいえ実力で言うと俺の方が圧倒的に強い。

 これはSランク以上のランクが存在しないからそういった形になるのだ。

 とはいえ父さんも冒険者としては滅茶苦茶トップクラスなんだけどね。

 見た目もイケオジで配信こそしないものの立場やルックスから高い人気を誇っているのだが、当の本人は全くと言って良いほどそれを気にしていない。

 因みに今はほとんどダンジョンには行かないで書類の整理云々かんぬんで忙しそうにしている。


 母親が新堂光(しんどうひかり)

 冒険者ランクはAAAランクでギルド光龍の副ギルドマスター。

 父親同様配信はしていないが副ギルドマスターとして、AAAランク冒険者として活動する事もあったので、多くの人に知られている。

 子供の贔屓目無しにしても母さんは綺麗だと思う。

 そんな見た目も博してこちらも人気が凄い。

 まぁ、母さんは父さん一筋過ぎて父さん同様に全く評判を気にしないんだよな……


「所で今のギルドはどんな感じなの?」


 俺はふと気になりそんな質問をした。


「そうだな……とりあえず安定してきたから今は、中ランク冒険者の育成に力を入れてる所だな」

「そうね、低いランクでも配信で人を集める子もいるしね」

「そう言えばうちのギルドって結構入るの難しいんだっけ?」

「うん、色々と選考してから選んでるからね、悪い人とかやる気のない人は絶対に入れないようにしてるし、まぁやる気があっても才能が無さそうな人も入れないかな?逆にやる気と才能を感じたら本当に稀だけど低ランクでも入れるね。因みに最低ランクは先日入った子だけどCランクよ」

「そうそう、それに配信する人限定で受け入れてるからな、尚更だな」


 なら配信をしないし特にやる気も無い俺はいて良いのかとも思うがそれは胸にしまっておいた。

 てかCランクって世間的には割と高い方じゃないのか?まぁ、うちでは低いのか。


「んじゃ量より質って感じ?」

「まぁ、そう言う事になるな」

「最近はかなり有名で入りたいって言う人が後を絶たないから大変なのよね」

「へー今良い感じなんだねー」

「自分で聞いたくせに適当に返事しないの!」


 俺が素っ気ない返事をしたら母さんがプンプンし出した。


「いや、ちょっと気になったから聞いたけどほとんどギルドメンバーの事知らないし聞いても分かんないなって思ってね」

「そう言えばあんたはギルドメンバーの事何人くらい分かるの?」


 どの位って……冒険者の人で考えると久遠さんと丸山さん以外は名前どころか顔すら憶えてないや……

 てかそう考えると俺って血縁者以外はその二人以外で考えると、光龍ギルドの誰とも知りあいじゃないんだな……まぁ、俺は時々しかギルドに来ないしな、今日も一月振りだしね。


「……母さんと父さんとを除いたら数人かな?俺が一方的に知ってる人だったらもう少しいるけどね。てか光龍って今何人くらいいるの?」

「……光龍は冒険者で見ると大体30人くらいかな?多すぎても管理が難しいしね」

「意外と少ないんだね」

「まぁ、元々の方針的にね……敷居は高く設定してるし少しでも悪の心と言うか不穏を感じたらいくら強くても拒否してるからね」


 まぁ、変な人がギルドメンバーだと嫌だし俺的にもそれが良いけどね。

 

「参考までに他のギルドはどの位人居るの?」

「そうね、光龍ギルドが上に上がるまでは二強と言われていたギルドだと、聞いたところによると100人位らしいわよ」

「まぁ、少なくてもそれで光龍ギルドが最強って言われてるんだったら光龍ギルドって凄いんだね」

「一応あんたはナンバーゼロなんだからね?少しは自分のギルドに関心持てばいいのに……」

「まぁ、母さんと父さんに仕事を丸投げしてるからね、俺は自由に過ごすよ……それにナンバーゼロって言っても俺以外ナンバーとか無いじゃん」


 俺は一応ナンバーゼロって形になっているけどそれは立場を明らかにするためで、いざとなった時に俺の存在を証明出来るようにそうしたらしい。

 勿論ギルド内では先輩後輩、ランクなどの要素では上下関係が変わってくると思うけど、そこら辺は冒険者同士に一任しているらしく、ナンバー何とかの概念はない、

 そんなこんなで俺はいつの間にか、世間では光龍最強のゼロなんて呼び名で呼ばれているので少し恥ずかしいんだよな……


 ちなみに俺は自分がゼロっていずれはバレると思うし、その時はその時だと割り切っている。

 

「うんまぁ、自由に過ごすのは良いけど今後の為にもさ……高校生になったら他の冒険者とも交流するって約束したでしょ?」

「んー、確かに約束した覚えはあるね……それじゃあ少しずつ配信とか見るようにするよ、暇な時間多いしね」

「確かにあんたいっつも暇っていってるもんね」


 そう言われたらそうだし……この機会に他の冒険者についても知って行こうかな。


「まっ!明日からね、じゃ、俺は出かけるから」

「はい、行ってらっしゃい、あんたの事だから全く心配要らないだろうけど気を付けてね」

「そうだな、俺達より強いと言ってもまだ子供だからな」

「うん、分かったよ」


 そう言って俺は部屋を後にした。


 ――俺はギルドを出て冒険者に良く使われているカフェで好きなカフェオレを飲みながらゆっくりとしていた。


「それにしても暇だなー」

 

 暇つぶしにダンジョンにでも潜って見よっかな……

 俺は戦うのが割と好きなので結構高頻度でダンジョンに潜っている。

 違うギルドの人と一緒にダンジョンに潜る事も出来るので、時々違うギルドの比較的初心者の人と臨時パーティーを組んで遊んでみたり、深い階層に潜って美味い食材を探したりと色々な事をして遊んでいる。

 勿論違うギルド同士だとトラブルも発生するがその時の為にギルドがある。

 光龍ギルドは俺だからって事では無く、基本的にギルドメンバーに対してのサポートが凄くて滅茶苦茶良心的なギルドだ。


 聞くところよると中には簡単にギルドメンバーを見捨てるようなギルドもあるらしい。

 自分の将来がかかってる訳でギルド選びって大切だね。

 俺はもし俺の両親がギルドを経営していなかったら絶対にギルドに属さないで、その時のノリで冒険者として活動してたよ多分。


 俺がそんな事を考えていると中年の冒険者達が、酒を飲みながら話している声が耳に入って来た。

 因みに冒険者がオフの日は日中から酒を飲む人は少なくない。


「なぁなぁ、聞いたか?白夜ギルドのトップチームが、一年前に光龍ギルドが攻略した原宿の超高難易度ダンジョンに挑んで惨敗したってよ」

「知ってるもなにも俺はその日休みだったから思いっきり配信見てたぞ!ありゃ勝てなくて当たり前だよ、ボスに行くまでの敵ですら強すぎてたぞ」

「あのダンジョンってボスがエンペラードラゴンなんだよな?だとしたら光龍ギルドはどうやって攻略したんだろうな?エンペラードラゴンと言えば過去のデータでも50年前に至上最強と言われた海外の冒険者パーティーが倒しただけだもんな」


 50年前か……そう言えば父さんがエンペラードラゴンの討伐は俺で二回目だって驚いていた気がするな。


「ほんとにな!もし素材が持ち込まれてなかったらまず信じられなかったよな、配信はしてなかったって言うし倒した人の情報は光龍最強のゼロって奴のパーティーって事意外はないしな」

「まぁ、素材が本物なのは証明されてるし、新しい素材って事も確実らしいから本当なんだろうな」

「ていうかそのパーティーは何で表に出てこないんだろうな?俺だったら確実に自慢するけどな」


 ただ面倒くさいだけですよ……それにバレたらその時はその時だけど俺は別に自分から言いふらそうとは思って無いのでね。

 あとパーティーじゃなくてソロですよ。


「ゼロの他には誰が居たんだろうな?東宮寺久遠も居たのかな?」

「んな訳無いだろうが……一年前なら東宮寺久遠はまだAAランクだぞ?エンペラードラゴンは無理だろ」

「まぁ、そうか、エンペラードラゴンだったらSランク冒険者でも勝てないって言うしな、AAAランクならまだしもAAランクなんて即死レベルだな」

「それにしても白夜ギルドの被害は少ないって話だよな?」

「あぁ、数人が全治一月位のケガお負ったって話だけど予め準備していた緊急避難用のスクロールがあって助かったらしいな」

「緊急避難用のスクロールか……一つでも相当な額だから白龍ギルドの損失はデカそうだな」


 白夜ギルドと言えば光龍ギルドが浮上する前にトップ2と言われていたギルドだよな。

 こう聞くとあのダンジョンは本当に難しかったんだな……確かに俺もかなり手こずったから納得と言えば納得だけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最強ギルドを経営している両親を持つ俺は実は最強でした。 羽川 空 @hanekawa-sora

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ