第2話 お兄ちゃん
帰りながら学校の向かい側にあるスーパーで買い物をして、家に帰る。家には誰もいない。妹はこの時間アルバイトだ。家からそれほど遠くないところにあるコンビニでね。
お父ちゃんはダンジョン配信の流行によるリーマンショックでお母ちゃん巻き込んで心中。俺は妹助けるのに必死でお母ちゃん助けらんなかった。そんなんだから妹にそのこと知られたらめちゃくちゃ嫌われるだろうなって。
だから、部分的な記憶喪失を良い事に今のところ「お父ちゃんとお母ちゃんは俺達2人を悪漢から護ってくれた」っていう感じで神格化して事なきをゲットしてる。
夕飯を作りながら、スマホをいじる。時々アルバイトの連絡が入ってくる。俺は時々モンスターの解体の仕事をさせてもらっている。解体の仕事は家畜などと違い、適当な知識があるだけでそれなりに熟せるから簡単で嬉しいぜ。しかも最低でも20万は貰える。
ダンジョンに潜るのは怖いが解体の仕事なら俺でも出来るぜ。
「おっ」
清水さんは解体の簡単な仕事に万札を出してくれる。解体の資格を取る時のお金も出してくれたぞ。どうやらお父ちゃんの高校時代の取り巻きだったらしい。
「うまくいけば100万……!」
となると人型だろうか。
ゴブリンとかの人型モンスターは「人型を解体できる」っていう変な方向性のブラックさがあるから、解体人の尊厳を守るとかなんとかそういう配慮で高い金を出してくれる。清水さんが。
「いいね、人型がイチバンやりやすい」
「ただいまー。お兄ちゃんまた解体の仕事?」
「おう! 土曜バラしてくるわ!」
「いいねー。がんばりやさい」
こいつが俺の妹。
こんな環境で育っておいてよくもまぁグレずに優しい子に育ってくれたことよ……。ある程度情緒が育ってたのが功を為したんだろうな、と分析。
こんな毎日アホと喧嘩してる不良みたいなお兄ちゃんでごめんな、翼。
「ご飯は何?」
「なにがいい?」
「カレー」
「ではそれだ」
「おおっ! 私のことをわかってんじゃんお兄ちゃん」
「お兄ちゃんはプロだからな」
「なにそれ。なんのプロ?」
「お兄ちゃんのプロ」
そうだ、俺はお兄ちゃんのプロだ。俺がどんなに俺を卑下しようと、翼が高校を卒業するまでは、「お兄ちゃんのプロ」を遂行するんだい!
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