第52話 母さんとの最終日
「ただいまー」
俺が早退して起きると暫くしてお母さんが帰って来た。
「お帰り母さん」
「慶ー会いたかったよー」
そう言って母さんは早速抱き着いてきた。
「母さん疲れてる?」
「ううん。大丈夫だよー」
そういう母さんだがどこか昨日よりどこか元気がなさそうだった。
俺はそれが気になるがその前に今日早退したことを一応伝えておく事にした。
「そうだ母さん。今日俺学校で熱が出ちゃって早退しちゃった」
「え?大丈夫なの?今も熱あるの?そうは見えないけど……」
俺がそう言うと母さんは心配そうにそう言ってきた。
「今は大丈夫。先生に家まで送って貰えたし、寝たら熱も下がったからね。最近色々とあったし疲れてたのかもね」
「そうなの?なら良いけど体調には気を付けてね?」
「分かってるよ。それにそれは母さんもだからね?頑張りすぎないでよ?」
「私は大丈夫よ!私って体調崩した事一度もないからね♪」
そういえばそうだったかもな……
記憶を辿っても母さんが体調崩していた記憶は全くと言って良いほどない。
まぁ、だとしても心配なものは心配なんだよな……
「そうだね。でもちゃんと気を付けてね」
「まぁ、慶がそう言うなら気を付けるよ!」
そう笑顔で言う母さんだが、俺にはやっぱり気のせいじゃなくて母さんは元気がないように見える。
「母さん?何かあったの?ちょっと元気がなさそうだけど」
「え?ううん。そうじゃなくてね。私が元気がないのはただ明日ここを離れないといけないから慶と離れるのが辛いだけだよー」
母さんはそう言って再び抱き着いてきた。
そういう事か……それだったら納得だな。
「大丈夫だよ母さん……俺はちゃんとやってけるし父さんには母さんが必要だろうしね」
「うん……そうだよね……」
それから少し経つと母さんが離れて話し出した。
「そうだ慶?結衣ちゃんとかと進展あった?」
「進展……」
進展したのは間違いないがどこまで言って良いのか……
付き合ったのは言っても良いのかもな。
でも美月と明香里とも付き合おうとしてるわけだし……
いや。でもいずれは言わないといけない事なんだから今のうちに素直に話しておくべきなのかもな。
大体俺は三人と付き合う事を後ろめたい事だとも思うつもりはないしな。
結衣には後で考えようと言われたけど母さんに対しては出来れば嘘をつきたくないし……
そう思い俺は今の状況を素直に話すことにした。
「母さん……今から俺凄い事言うけど大丈夫?」
「凄い事?それって結衣ちゃんたちの事?」
「うん……」
「勿論大丈夫だよ」
「実は俺の今の状況なんだけどさ……」
俺は結衣と付き合っている事。
結衣たち三人が全員で俺と付き合おうと話し合っていた事。
俺が三人の事が全員大好きで俺も三人と付き合おうと思っている事。
全てを話した。
「本当に言ってるの?」
母さんは訝しげな顔でそう言ってきた。
「本当に言ってる……」
俺が真剣な顔でそう返すと母さんはしばらく考えてから言った。
「そうなのね……慶は三人と付き合えたとしてどうしたいの?」
「どうしたい……」
「うん。本当に三人を平等に愛せるのかって事」
それは間違いなく出来る。
当然三人以外の女性に興味が出ることも絶対にないし、俺は三人が大好きだしな。
「それは当然愛せるよ」
「そう……それなら良いんじゃない?」
「え?良いの?」
正直に言っちゃうと母さんはそんなに反対するとは思っていなかったがここまで簡単に認めてもらえるとも思っていなかった。
「うん。大体本人たちがそうしたいっていうのな私が否定する事じゃないもの。それに結衣ちゃんは私も気に入ってるしね」
「本当に良いの?」
俺は簡単に認められ過ぎて少し困惑していた。
「そうよ。でも慶?考えることはいっぱいあるからね?高校生だからどうなるか分からないけどもし将来的にも一緒になるというならね?」
「そうだね……でもそれは分かっているうえでだよ」
「そう……だったら私は問題ないよ」
「ありがとう母さん……」
「うん……私は慶が幸せなら何でも良いんだよ。慶が後悔しないようにちゃんとするんだよ?」
「うん」
今日母さんに話してよかった……
俺は一つ肩の荷が降りたというか心が少しスッキリした感じだった。
「そうだ慶?今度ちゃんと美月ちゃんと明香里ちゃんも紹介してよ?私は顔しか分からないからね」
「え?むしろ何で顔分かるの?」
「それは結衣ちゃんに写真を見せて貰ったからだよ?」
「なるほど……まぁ、そうだね次帰って来た時には必ず紹介するよ」
「うん!それで慶?私に三人との事を詳しく話してみてよ。どういったきっかけで好きになったとかさ!」
母さんは俺に楽しそうにそう言ってきた。
「わかったよ」
それから俺は母さんと一緒に楽しく話していた。
◇
――俺は母さんと話し終えて自分の部屋で寝る支度を済ませてベッドに寝転んでいた。
因みに寝ようとは思っているが昼に滅茶苦茶寝たので寝れるとは思っていなかった。
「良かったな……」
問題の一つが解決したので俺は安堵していた。
しかも父さんには母さんが説得しておくと言っていたので尚更安心だ。
まぁ、だとしても父さんにも俺から話す時間も作ろうとは思っているんだけどね。
「でもまだまだ問題はたくさんあるから頑張っていかないとだな」
まずは付き合ってからだけど問題は皆で一つずつ解決していこう
「そうだ!取り敢えず結衣には連絡しておこうかな」
俺はそう思って結衣に電話を掛けたらすぐに出た。
『どうしたの慶君?』
『結衣、今って少し大丈夫か?』
『うん。寝ようと思ってたけど慶君と話すんだったら何時間でも大丈夫だよ!』
『ありがとうな。でも明日も学校だしそれは駄目だぞ』
『へへへ、確かにそうだね。分かったよ!それで何かあった?』
『実はな母さんには正直に話したいと思ったから俺たちの関係を全部話しちゃったんだ。勝手にごめんな』
『ううん。それは大丈夫だけどさ……全部って私と付き合ってる事と美月と明香里ちゃんとも付き合おうとしているって事も?』
『うん、そうだな』
『だ、大丈夫だったの?』
俺がそう言うと結衣は心配そうにそう聞いてきた。
『母さんは理解してくれたよ。俺がそうしていんだったら応援してくれるってな』
『本当に!良かったー』
『まぁ、今後の事もちゃんと考えなさいよって言われたけどな』
『そうだね。それは皆でちゃんと話し合おうね』
『そうだな』
『まぁ、慶君と美月と明香里ちゃんは付き合う事からだけどねー』
『それもそうだな』
『でもまぁ、二人には二人のペースでやって欲しいしせかしちゃ駄目だからね?』
『それは当然分かってるよ』
『うん♪ならよし!』
『これからもよろしくな結衣』
『うん。よろしくね大好きだよ慶君!』
『俺もだよ結衣。それじゃあもう夜も遅いしこの辺にしておこうな』
俺がそう言うと結衣は不服そうに言った。
『えーもう終わりー?』
『明日も学校だから会えるからな。俺は大丈夫だけど結衣は寝不足になるぞ』
『むぅー。まぁ、慶君がそう言うならそうするね。また明日いっぱい話そうね』
『あぁ。話そう』
『お休みね慶君♪』
『お休み結衣』
そうして俺は結衣との電話を終えた。
◇
――次の日の朝
「慶。それじゃあ学校頑張ってね」
「うん。母さんも元気で頑張ってね」
「うん。風邪ひかないようにね」
「分かったよ。父さんにもよろしくね」
「お父さんに言っておくね。結衣ちゃんにも元気でねって言っておいてね」
「伝えておくよ。それじゃあ行ってくるね」
「うん頑張ってね」
俺は母さんとお別れを済ませてから学校に向かった。
母さんは今日のお昼に出張先に行くとの事だったのでこれでまた暫くお別れだ。
朝も沢山話したし悲しいとかはないがやっぱり寂しくは感じるな。
でもまぁ、母さんも父さんも頑張ってるんだし俺も頑張ろう。
俺はそう思いながら登校していた。
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