第49話 体調を崩した慶
「はぁ、ちょっと具合悪いかもな……」
学校に来て授業を受けていたが今は三時間目……俺は少し体調が悪くなってきていた。
朝は普通だったのに急にの事だった。
そんな俺に気付いた結衣が紙切れを渡してきた。
俺はなんだろうと思いその紙を見た。
"どうしたの?具合悪いの?保険室に行ってもいいんだから無理しないね。私も心配だからね"
俺がそれを見た後に結衣の方を見ると結衣は心配そうな顔をしていた。
俺はそんな結衣を見てから紙切れに文字を書いた。
"心配かけてごめんな。でもちょっと気持ち悪いかなってくらいだから大丈夫だぞ"
それを結衣に渡した。
そしてそれを見た結衣はムッとした顔になって再び文字を書き始めて書き終わったら俺に渡してきた。
"駄目だよ!慶君に何かあったら私も嫌だからちゃんと休んでね!授業が終わったら保険室に行くよ!"
俺はそれを見てつい微笑んでいた。
こんなに心配されると流石に嬉しいよな。
彼女になった事もありなおさらそれを感じていた。
そのあと俺は紙切れに"分かった。そうする"そう書いて結衣に渡した。
◇
三時間目の授業が終わって俺は結衣に連れられて保健室に来た。
「慶君。保健室の先生が午前中は居ないみたいだから取り敢えずベッドに寝転んでね。さっき他の先生に確認したら体温計で熱を測ってベッドで休ませなさいって言われたから」
「あぁ」
さっきの授業のはじめより明らかに体調悪くなってるな……
それと結衣は教室から俺に肩を貸してここまで来たけど大丈夫なんだろうか。
俺は余裕がなかったから見てなかったけど高堂にも見られてたと思うのだが……
そう思い俺は体温計を探している結衣に話しかけた。
「なぁ、結衣?」
「何?」
「教室で俺に肩を貸してたけど大丈夫なのか?」
「大丈夫って何が?」
「えっと……高堂だよ……前も俺の事で色々あったしな」
俺がそう言うと結衣は何も言わずに体温計を持って近づいてきた。
「はい。これで熱を測ってね」
「分かった」
そうして俺は熱を測り始めてた。
「さっきの事だけど私は慶君と付き合ってる訳なんだからどんな事があっても慶君を優先するつもりだよ。空がそれで何か言ってきてもそれは変わらないよ。それに最近はもう空にばれても良いと思ってるしね……どうせいずれは言う事になると思うしね。大体慶君は隣の席なんだし今は彼女だけど元から友達なんだからそれについて言われるのもちょっと違うと思うしね。空とは付き合ってるわけでもないんだからさ」
結衣はそう言って俺に対して優しく微笑んだ。
「そうか……」
「うん……」
そうして体温計の音が鳴った。
「38.0度だな」
俺の平熱が36度前半なので38度は結構高めだ。
「ちょっと待っててね慶君。流石に勝手に薬を漁るわけには行かないからタオルを濡らして持ってくるね」
「ありがとう……」
そういえば久しぶりに熱を出したな。
前世でも十年以上なかったもんな……
なんか懐かしい感じがするな。
それにしても寝転んでましになったとはいえまだ頭がくらくらするしだるいな。
たぶんただの風邪なんだろうけど……
そんな事を薄っすら思っていたら結衣が帰ってきた。
「おでこに乗っけるね」
「うん」
そうして結衣は濡らして冷やしたタオルを俺のおでこの上にゆっくりとのせた。
「慶君。次の授業の先生には私の方から言っておくからゆっくり休んでね」
「ありがとう。そうするよ」
「それじゃあもう少しで次の授業が始まるから私はもう行くね」
「うん」
「また来るからね」
そうして結衣は保健室を出て行った。
◇
★高堂明香里(side)
私は四時間目の授業が終わり結衣さんと美月さんと合流しようとしたら二人に連れられてどこかに向かっているようだった。
「結衣さん?美月さん?どこに行くんですか?神道先輩がいつもいる空き教室じゃなさそうですけど?」
私がそう聞くと先に美月さんが答えた。
「明香里ちゃん。今日の三時間目が終わった時からね、慶が体調を崩して保健室で寝てるんだよ」
「え?神道先輩は大丈夫なんですか?」
そんな質問に次は結衣さんが答える。
「私じゃ分からないけど熱は38度だったよ」
「結構高いんですね……それじゃあ今から保健室に行くんですか?」
「そういう事……まぁ、もし慶君が寝てたらタオルだけ入れ替えて帰るけどね。起こすわけにも行かないし昼休みが終わるころには保健室の先生も帰ってくるしね」
「分かりました」
私と結衣さんと美月さんは三人で保健室に向かった。
――保健室についたので私たち三人は保健室に入った。
保健室に入るとベッドの一つに神道先輩が寝ていた。
普段はあんなにカッコいいのに寝ている姿はちょっとかわいいと思った。
「寝てますね……」
「そうだね」
「それじゃあ仕方ないね。タオルを変えてから大人しく私たちは帰ろっか」
結衣さんの言葉に私と美月さんは何も言わずにうなずいた。
「タオルを入れ替えるのは私がやっておくので結衣さんと美月さんは先に戻っていてください」
「そう?それじゃあお願いね明香里ちゃん」
「よろしくね明香里ちゃん!」
「はい!」
そうして私は神道先輩のおでこの上にあったタオルを取って入れ替える事にした。
「よし!これだ大丈夫ですね」
タオルを入れ替えた後私は神道先輩の顔をじっくりと見た。
「神道先輩……」
普段だち恥ずかしくてこんな近い距離から神道先輩の顔を見る事は出来ないけど今は違う。
神道先輩が寝ているので見放題だ。
「それにしても結衣さんと付き合っているんですよね……」
結衣さんに昨日話を聞いて神道先輩が三人と付き合う事に前向きと聞いたときは凄く驚いたしそれと同時に凄く嬉しくなった。
私も頑張んないとな……夏休み前には……そんな事は言えないがせめて夏休み期間内では告白できるようにしたい。
正直に言っちゃうと結衣さんから三人と付き合う事に前向きって聞いた時点で失敗する可能性はないと思うがそんな事は関係ないことだ。
たとえ成功すると分かっていても私からしたら簡単な事ではないのだ。
「キスってどんな感じなんだろう……」
結衣さんは何回も神道先輩とキスしたと言っていたけど……それに凄く幸せとも……
私も神道先輩とならしてみたいな。
「今だったらできるかも……」
そんな事を思っていたら私は不意にそうつぶやいていた。
神道先輩とキス……神道先輩が起きている時には恥ずかしくて絶対にまだ無理だろう。
でも寝ている今なら……
私はそう思って神道先輩に恐る恐る顔を近づけ、そのまま唇を当てた。
その数秒後神道先輩から慌てて離れて私は我に返った。
「な、なにしてるんですか私は!」
自分のしたことに凄く恥ずかしくなって体温が上がるのを感じた。
神道先輩が寝ていれば大丈夫だと思ったけどやっぱりそれでも凄く恥ずかしい。
そう思いつつ私は神道先輩の顔を見た。
「心臓の音が凄くうるさい……頭まで響いてくる……」
神道先輩を見ているとドキドキしすぎてやばい……
私はそう思って恥ずかしくなり急ぎ足で保健室を後にした。
――私は廊下で歩きながらぼおーとしていた。
「はぁ」
ファーストキス……これが私のファーストキスだ。
ファーストキスが寝ている相手っていうのはちょっともったいない気もするけど凄くぽかぽかした気分だ。だって好きな人とキスできたんだから。
神道先輩とキス出来たことがあり得ないくらい嬉しい。
幸せ……結衣さんがそう言っていた意味が凄くわかる……
だって今は神道先輩以外の事を考える事すら出来ないレベルだから。
でも今でこれなら起きている神道先輩とキスするのはまだ時間がかかりそうですね……
「はぁ、暑いですね……」
私はそんな事を考えながら結衣さんと美月さんのいる場所に向かっていた。
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