第45話 高堂明香里の焦り(下)
私は今、神道先輩が居る教室の前に居る。
結衣さんと美月さんに言われた通りに自分の心に従ってみよう……
「ふぅー」
私は大きく深呼吸をして教室のドアを開けた。
私は先程落ち着かせたのに神道先輩を見た瞬間凄く緊張してしまった。
昨日まではこんなんじゃなかったけど頑張るって決めたからかな?そんな事をつい意識してしまう。
私は神道先輩がこっちを見ていたが何も言わずにあたふたしてしまっていた。
「明香里?どうした?」
「え、えっと……神道先輩……一緒にご飯食べても良いですか?」
そんな私を見て神道先輩が少し心配そうにそう聞いて来たので私はゆっくりそう返事をした。
「勿論いいぞ!それじゃあこっちに来て一緒に食べよう」
「は、はい……」
そう言われて嬉しかったけどそれ以上にドキドキしていた。
私は本当に頑張れるのだろうか……
「明香里来てくれてありがとな」
「い、いえ……私が来たかっただけですから……」
「だけって言うけど俺からしたらそれが凄く嬉しいんだけどな」
「そうですか……良かったです」
どうしよう凄く嬉しい事を言われてるのにそれのせいで尚更ドキドキしちゃってちゃんと話せない……
落ち着かないと駄目なのに……これじゃあアタックなんて出来ないよ。
私がそんな事を思っていたら神道先輩に言われた。
「明香里?なにかあったのか?ちょっと今日の明香里は様子が変だけど?」
「な、何も無いです!!ちょ、ちょっと待っててください!」
私は焦ってしまってどうしようもなくなったので結衣さんと美月に助けて貰おうとスマホを取った。
はぁ、今の私は顔が真っ赤になってるんだろうな……
『結衣さん!美月さん!助けてください!』
『どうしたの美月ちゃん?』
『何かハプニングでもあった?』
『ハプニングは無いですが、どうしても意識しちゃってまともに話せなくなっちゃいました……』
『ふふふ、意識ね。それだった明香里ちゃんはどうしたいの?さっきも言ったけどその通りにしちゃって良いと思うよ』
『そうだね。意識するのは当たり前だしね。恥ずかしいのは分かるけどそれ以上に後で嬉しい気持ちの方が大きくなるからね。私達だって最初は恥ずかしいんだよ』
『うん。私も美月も恥ずかしいのは同じだから明香里ちゃんが可笑しいわけではないから大丈夫だよ!』
良く分からないけど恥ずかしくても頑張れって事かな?
でも今がんばれば後で嬉しい気持ちが大きくなるか……それは確かにそうかもしれない……それに二人も恥ずかしい気持ちは同じだったんですね……
『そうですね』
『うんうん!私達は応援してるからね♪』
『そうだよ!それに何かあれば絶対に手助けするから思い切って頑張ってね!』
『わ、分かりました頑張ります』
私は二人にそう言われて少し勇気が湧いて来た。
大体頑張るって決めたんだから、恥ずかしくても頑張らないと!
そんな事を頭では思っていたけど実際の私はかなりてんぱっていた。
それでも私はこれ以上神道先輩を待たせる訳にも行かなかったので神道先輩の隣に戻った。
「すいませんでした……ちょっと確認したい事があったので」
「そうか?良く分からんけど明香里が大丈夫そうなら大丈夫だぞ」
「ありがとうございます……」
「あぁ」
頑張らないと……美月さんはキスの手前まで……でも結衣さんはキスしちゃってるし……それだったら私は?
私がしたい事……キス?駄目だ!したい気持ちはあるけどそれをしたら暫く神道先輩と顔すら合わせられない自信がある。
どうしよう……手を繋いでみる?肩をくっつけてみる?お弁当を食べさせあってみる?
分からないけど何かしないと……
私はそんなてんぱってる状況で何かしないと!って言う気持ちと神道先輩とくっつきたいと言う思いのみで体が動いていた。
「し、神道先輩……何も言わないでくださいね……」
「え?」
私は立ち上がりそう言って神道先輩の前に立った。
「明香里?」
そんな神道先輩の声が聞こえた気がしたけど今の私の耳には入って来なかった。
そうして私はそのまま神道先輩の胸に私の後頭部を当てる感じでべったりとくっついた。
どうしよう……つい体が動いちゃったけど凄くドキドキして何も言えない。
急にこんな事されて神道先輩も困っちゃうんじゃ。
でも神道先輩とくっつけて凄く嬉しい……それに温かい気持ちになる。
私がそんなちぐはぐな心情の中神道先輩に話しかけられて更に焦ってしまった。
「明香里?」
「す、すいません……私……焦っちゃってつい……」
「焦った?」
「は……はい……私がここに居るのは嫌ですか……」
私は恐る恐るそう聞いた。
嫌だったらどうしよう……嬉しいのは私だけなんじゃ。
緊張からついそんな風にマイナス方向に考えてしまう。
そんな時神道は私を軽く抱きしめて言ってくれた
「そんな事は無いぞ。いたいならいつまでも居て良いぞ……」
「あ、ありがとうございます……」
私はそんな言葉聞いて心配事は全て吹き飛んだ。
勇気をだしたら嬉しい気持ちになれる……二人が言っていた事はこういう事なのか。
今の私は生きていた中で一番嬉しい気持ちで幸せな気分だった。
まぁ、それでも恥ずかしい気持ちは変わらないので自分の体温がどんどん上がっているように感じた。
――それからは二人とも無言だったが神道先輩は温かく抱きしめ続けてくれた。静かな時間が凄く心地よい……そんな時間だった。
「明香里?そろそろ教室に戻る時間だぞ」
「そうですね……」
私はもうそんな時間なんだと残念に思った。
そんな私はそう返事をしつつも真っ赤になっているであろう自分の顔を神道先輩に見せるのは凄く恥ずかしくて顔を合わせない様にして帰ろうと思っていた。
「それじゃあ帰るか」
「……はい」
「結局お弁当残ってるど大丈夫なのか?」
「家に帰ってから食べますから……」
「そっか」
そんな感じの会話をしていたが私は階段で神道先輩と別れるまで神道先輩と顔を合わせる事はなかった。
「緊張したな……」
神道先輩と離れて今でも心臓の鼓動が凄く速いのが分かる。
神道先輩に好きになって貰わないといけないのに逆に私が更に好きになっちゃった……
いつまでも居て良いぞ……そう言われた時は本当に嬉しかった。
「私って本当に神道先輩の事大好きなんですね……」
これからの人生で神道先輩より好きになれる男性が現れるんでしょうか……私にはどうしてもそうは思えない。
一緒に居れるだけで幸せな気分になれる……神道先輩はそんな人だ。
「でも頑張って良かったな」
今は本当にそう思う。
さっきの事を思い出したら自然と笑顔になれる。
結衣さんと美月に追いついたかは分からないけどそれはもう考えない様にしよう。
私は私のペースで頑張ろう……先程神道先輩と話せてそう改めて思えた……だってこれからは私はもっと頑張れそう……そう思えるようになったから。
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