第44話 高堂明香里の焦り(上)
「よし……」
私は風紀委員の仕事があるため早めに起きて学校に行く支度をしていた。
ここだけの話、私は少し前までは必要最低限の身支度しかしていなかったのだが最近は身支度にかける時間が増えていた。
理由は勿論神道先輩に良く見てもらいたいからだ……まぁ、恥ずかし過ぎてそんな事は誰にも言えないけど。
私はまだ少し早いけど学校に向かおうとスマホと取るとLIENの通知が沢山来ていた。
なんだろうと確認してみると私と結衣さんと美月さん三人のグループチャットだった。
「こんな早くに珍しいですね……」
私はそう思い早速確認する事にした。
『美月ー明香里ちゃん起きてるー?』
『起きてるよ結衣ちゃん』
『明香里ちゃんは学校に行く支度をしてる頃かな?』
『そうだと思うよ、今日は風紀委員の仕事がある曜日だしね』
そうですねその通りです。今終わりましたけど。
『そっか。まぁ、後で見てくれるだろうし今話しちゃうね』
『何かあったの結衣ちゃん?』
『うん!実はね昨日慶君とキスしちゃったんだ……』
『え!!!!!本当に!?』
美月さんは凄く驚いているが当然だろう……だって私も凄くびっくりしているから。
神道先輩とキス……羨ましいけど結衣さんが相手だったら嫉妬心は全くない。
恐らくそれは美月さんでも同じ気持ちになるだろう……ただただ良いなって思うだけなんだと思う。
勿論この二人だったらの話ですけどね……
私はドキドキしながら続きを確認した。
『実は昨日、たまたま慶君のお母さんに会ったから挨拶したら晩御飯に招待してくれたの!!!それからね……』
そうして結衣さんは昨日あったであろう事を話していた。
晩御飯を神道先輩の家で頂いた事。
神道先輩のお母さんが凄く優しくて仲良くなれた事。
そして帰りに気分が高まって神道先輩にキスした事。
『す…進み過ぎだよ結衣ちゃん』
『えへへ、私も自分でびっくりしてるよ。キスまでするつもり無かったんだけどね』
『そ、それでどうだったの?』
『どうってキスしてみてって事?』
『うん』
キスしてみてですか……正直私からしたらキスなんてもっと先の話だと思っていたのでそんな事考えていなかったな。
でももし神道先輩とって考えると……
私は想像しただけで顔が火照った事が分かった。
同時に私にはまだ早いかもな……そうも思ったがしてみたい気持ちもあった。
『えっと。シンプルに言うと凄く幸せな気分になったよ』
『幸せ……』
『うん!凄く恥ずかしかったけどそれ以上の幸せだったな……美月もしてみたら分かると思うよ!』
『そ、そうかもね……幸せか』
幸せって言うけど私は神道先輩と一緒に居るだけで落ち着くし幸せなんだけど……
勿論二人もそうだとは思うけどそれ以上にって事かな?
『所で美月は昨日どうだったの?何か進んだ?』
『えっと……そうだね結衣ちゃん程じゃないけど少しだけ頑張ったよ』
『なになに!!!』
『えっと。私は……』
そうして美月さんも昨日の事を話した。
手を繋いでバイトに向かった事。
事故ではあったけどキス一歩手前まで行った事。
神道先輩もドキドキしたと言ってくれた事。
私はそれを聞いて凄く焦った。
結衣さんは元々神道先輩と凄く仲良かった事もあって一番積極的だったので分かってはいたけど、美月さんまでそんなに積極的に行くとは思っていなかったからだ。
それと同時に私だけ何も出来ていないで置いて行かれている現状に……
『そんな事があったんだね!』
『うん。でも良かったよ。私的には結衣ちゃんより先にならなくて……』
『え?どうして?』
『だって結衣ちゃんの方が先に好きになった訳だしね』
『そんな事気にしてたの!?大丈夫だって気にしなくてもさ!寧ろ皆で頑張って三人ともって思わせる位じゃないとね♪』
『そ、それもそうかもね……』
『うんうん!私的には二人にもあの幸せな気持ちを知って欲しいから頑張ってね♪』
『そうだね。私も頑張ってみるね!』
『うん。明香里ちゃんもね♪』
そこでやり取りは終わっていた。
「はぁ、どっちが先に好きになったとか考えた事もなかったな……」
私は経験もなければ知識もないので自分の事だけで精一杯だった。
そこら辺を考えている美月さんと比べても大分私は遅れていると言うかまだまだなんだなと思ってしまった。
でもそう考えたらそれは間違いないと思う。
結衣さんが言う様に私達は神道先輩に三人ともと……そう思わさなければならない。
今現在で神道先輩はそう思ってくれるのか……そう考えたら私だけはそうじゃないんじゃないだろうか?
そう思ったら私は凄く悲しくなって更に焦りを感じた。
「あ!時間が!」
ふと時間を確認すると結構危うい時間になっていた。
そうして私は複雑な気持ちで急いで登校した――
◇
「明香里ちゃん?大丈夫?なんか今日の明香里ちゃんぼーっとしてる事多いけど?」
私は同じ風紀委員の子にそう言われてしまった。
実はいうと私は仕事中でも神道先輩との事について頭から離れないで集中は出来ていない。
それが表に出ちゃっていたのだろう……
「いえ大丈夫ですよ。ちょっと疲れているだけですから……」
「そうなの?無理しちゃ駄目だよ?」
「はい」
私は他の人に心配をかける訳には行かないと思いその後の仕事はきちんとこなせたと思う。
――今は四時間目の授業中
今日の私は授業に集中出来ていない。
勿論それでも先生にバレたりするような程では無いけどいつもよりはって話ですけどね。
しかし心の中ではずっともやもやしている物がある。
これは良くないと思った私はこの後の昼休みで二人に相談しようと思った。
◇
――私は昼休みに結衣さんと美月さんに話した。
因みに授業が終わった瞬間に私はグループチャットに相談があると連絡を送ったので、二人が女子だけで食べる日も欲しいと言って兄さん達に話してくれたみたいだった。
「なる程ね……それで今日悩んでたんだね」
「明香里ちゃん。そんなに深く考えなくても良いんだよ?」
「そうだね。遅れてるからって悩んじゃうのも分かるけどそれよりも少しずつでも良いから自分の想いを伝えていく事が大切だよ」
「結衣ちゃんの言う通りだよ。想いの伝え方は人それぞれだし明香里ちゃんも焦らずに頑張れば大丈夫だよ!」
二人は悩む私に優しくそう言ってくれた。
「でもどうやって伝えれば良いのか……」
「そうだね……とりあえず明香里ちゃんと慶の二人っきりで話す時間を作ってみる事からかな?」
「そうだね。私とか美月も慶君と二人っきりの時間を度々作ってる訳だしまずはそこからだね!」
「たしかにそれはそうですね……」
「うんうん!それからは自分の気持ちに従って動いてみると良いよ。それこそ私みたいにキスしちゃったりとかさ!あの時の私は完全に考えて動いていた訳じゃ無いからね」
「そうだよ明香里ちゃん!まだキスは難しいかも知れないけど手を繋いでみたりとかしてみると良いと思うよ」
自分の気持ちに従ってか……私が神道先輩と何をしたいか。
キス……はしたい気持ちも無い訳では無いが今はまだ恥ずかしい。
でもそうだよね、出来る事はしないと!
とりあえずは二人っきりの時間を作ってその後は自分の気持ちに従う……
「そ、そうですね、頑張ってみます!」
「それじゃあ今から行こっか!」
「い、今からですか?」
「うん!慶君はいつもの場所に居るだろうし丁度良いよ!」
「たしかにそうだね。でも焦らなくても良いからね明香里ちゃん!何かあれば連絡してね!」
「わ、分かりました……頑張りますね」
そうして私は神道先輩がいつも居ると言っていた空き教室に向かった。
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