第43話 元気な結衣と何処かおかしい明香里の様子

「おはよう!慶君!」

「……!?」


 今日の俺は早めに学校についていたので時間になるまで机に伏せていた。

 まぁ、昨日色々あって寝不足ってのもあるだろうがな。


 そして今結衣が俺の耳元でそう言って来た。


 俺はそんな声を聞いてゆっくりと起き上がった。


「おはよう結衣」

「うん♪おはよう。今日は早いんだね!」


 結衣はいつも以上に元気みたいだ。

 そんな結衣を見て良かったと俺は思った。

 俺は昨日少し考えていたのだ……お別れした時の結衣は恥ずかしそうでそれを今日も引きずって気まずくなるんじゃないかと。

 しかしそんな心配は全くと言って良いほど杞憂だったみたいだな。


「そうだなちょっと早く起きちゃったから折角だし早く来たんだ」

「そうなんだね!」

「あぁ、結衣は一人で登校してきたのか?」


 辺りを見渡しても美月も高堂も酒井も居ない。

 俺がそう聞くと結衣は自分の椅子を俺のすぐ近くまで寄せて来た。


「うん!今日はそう言う気分だったからね!……それとね慶君……昨日の事なんだけどさ」


 元気でそう返事をした後、結衣は少し照れながらも小さい声でそう話を切り出して来た。


「うん……」

「あれは私のファーストキスだからね……」


 勿論それは知っていたがどう返事をするべきなのか……知ってるなんて言えないしな。

 それに俺も……と言って良いのか分からなラインだ。

 だってこの体はそうだとしても俺自身は違うから。


 俺がそんな事を考えていると結衣が言った。


「そんなに深く考えなくても良いよ!私はただ簡単にあんな事をする人じゃないし初めてって事を伝えたかっただけだからね♪」


 昨日はあんなに照れていたのに今の結衣は凄い可愛い笑顔でにこっと笑ってそう言って来た。


「勿論結衣が簡単にするなんて思って無いよ」

「ふふふ、そっかだったら良かったよ。それじゃあ今日もよろしくね♪」

「あぁ、よろしく」


 気まずくなったら俺が和ませないとなって思ってたのに逆に気を遣わせちゃったな。

 まぁ、でもいつも通りに会話出来そうで良かったな。



 ――俺はいつも通り空き教室で昼食を取っていた。


(ピコン!)


 LIENの通知がなりスマホを見た。


 メッセージの送り主は俺の母さんだった。


 "慶!今日は仕事で帰りが凄く遅くなりそうだから夜ご飯は先に食べちゃって大丈夫だよ!一応家を出る前に作り置きしておいたからそれを食べても良いし外食に行っても良いからね♪明日の朝は一緒に食べようね"


 そんな内容だった。

 母さんは俺が起きた時には既に家に居なかったのに朝ごはんもあったし作り置きまで作ってくれていたのか……流石に外食の選択肢は無いな。

 

「忙しそうだな母さんも」


 俺は忙しそうなのに俺の為にそこまでしてくれる母さんに対して凄く感謝していると同時に忙しそうで心配でもあった。


「それにしても本当に良い母親だよな……」


 そんな事を思っていると教室のドアが開いた。


 俺は結衣が来たのかな?と思い顔を上げるとそこには明香里がいた。

 そして明香里の様子は何処かそわそわしていてその場から動かなかった。


「明香里?どうした?」

「え、えっと……神道先輩……一緒にご飯食べても良いですか?」


 明香里は不安そうにそう聞いて来た。


「勿論いいぞ!それじゃあこっちに来て一緒に食べよう」

「は、はい……」


 なんか緊張してないか明香里?

 別に二人で話すのは初めてじゃないけど……

 

 そんな感じで明香里は俺の隣に腰を下ろした。


「明香里来てくれてありがとな」

「い、いえ……私が来たかっただけですから……」

「だけって言うけど俺からしたらそれが凄く嬉しいんだけどな」

「そうですか……良かったです」


 明香里は嬉しそうな顔でそう言ってるんだけど……やっぱりなんか変なんだよな?

 こんなに様子の可笑しい明香里の姿は見た事ないしな。

 

「明香里?なにかあったのか?ちょっと今日の明香里は様子が変だけど?」

「な、何も無いです!!ちょ、ちょっと待っててください!」


 明香里は慌ててそう言って俺から少し距離を置きスマホをいじりだした。

 どうしたんだマジで?


 ――それから少しして明香里が再び隣に来た。


「すいませんでした……ちょっと確認したい事があったので」

「そうか?良く分からんけど明香里が大丈夫そうなら大丈夫だぞ」

「ありがとうございます……」

「あぁ」

 

 やっぱり様子が変だとも思いつつも言いたく無さそうだったのであえて聞かないでいたら明香里が言った。


「し、神道先輩……何も言わないでくださいね……」

「え?」


 明香里はそう言ってゆっくり立ってから俺の前に立った。


「明香里?」


 俺の言葉に反応しない明香里はそのまま俺の前に座った。

 それもゼロ距離で明香里の後頭部が俺の胸に当たる形で……

 明香里の表情は見えないがどんな状況だこれは?


 俺は後おにぎりが一つ残っている状況だったがとてもじゃないが食べる状況ではなかった。

 明香里は明香里でお弁当を持ったまま動かないし。


 俺はそう思い再び明香里の名前を呼んでみる事にした。


「明香里?」

「す、すいません……私……焦っちゃってつい……」

「焦った?」

「は……はい……私がここに居るのは嫌ですか……」


 話し方が拙い所から良く分からないが明香里は思った以上にてんぱっているのかな?

 何があったのかは分からないが何に焦ってるのか聞かない方が良いのかな?それに今の明香里が勇気をだしてこの状況になっている事ははっきりと分かる。

 そう思った俺は明香里の事を軽く抱きしめて言った。


「そんな事は無いぞ。いたいならいつまでも居て良いぞ……」

「あ、ありがとうございます……」


 それからは静かな時間が進んであっという間に昼休みの終わる時間となった。


「明香里?そろそろ教室に戻る時間だぞ」

「そうですね……」


 明香里はそう言って立ったが俺の方は向かなかった。

 

「それじゃあ帰るか」

「……はい」

「結局お弁当残ってるど大丈夫なのか?」

「家に帰ってから食べますから……」

「そっか」


 そうして俺と明香里は教室を出たのだが、階段で別れるまで明香里が俺に顔を見せる事は無かったが耳が真っ赤になってる事だけは分かった。


 俺は教室に戻るまでの少しの時間で考えていた。


「明香里もか……」


 結衣と美月に続き明香里もここまで積極的に来るとはな……

 特に明香里は性格的にもこうなるとは思っていなかった。


 明香里は年下だけあって凄く可愛がりたくなるというか二人とはまた違う感情もあるんだよな。

 

 やっぱり三人共一緒に居れば居るほど好きになるしどんどん選びにくくなっていくな。

 三人共幸せにしたいとは思っているがそんなわがままは無理だよな……

 正直に言うとかなり不誠実かもしれないが俺は三人と結ばれるハーレムエンドが理想だとは思っているが三人がそれを望むかも分からないし……何より家族の方々が許してくれるかどうかも難しい課題だしな。


 本当に考えれば考える程分からなくなって来るな……


 そう言えば結衣と美月と明香里ってそう言う話ってするのかな?

 高堂の時はしなかったみたいだけど……

 でも三人は一気に積極的になったしお互いが知って居たら既に気まずくなってるのか?そんな様子はないけど。


 駄目だ……考えても答え何て出ないよな。

 もしかしたらちゃんと皆で話した方が良いのかも知れないな……

 三人共好きならいっその事それを伝えてみるのも一つの手なんじゃないかとも薄々考えていた。


 俺はそう思いながら教室に着いたのでドアを開けて入る事にした。

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