第42話 二人の想い
★遠坂結衣(side)
「ただいまお母さん」
「結衣お帰り。楽しかった?」
私は慶君とお別れしてから暫く玄関で心を落ち着かせてからお母さんに会いに行った。
正直今でもドキドキが凄いけど時間を空けた事とお母さんの前だから何とか抑えられている。
だって今おかしいとお母さんが感じたら心配させる可能性があるからだ。
それにもしかしたら慶君に対してお母さんが良くない感情を持っちゃうかも知れないしね……だからお母さんの前では絶対にいつも通りにする必要がある。
「うん!神道君のお母さんも凄く優しい人で楽しかったよ!」
「そう。それは良かったわ。今度私も神道君に会ってみたいわね。神道君のお母さんには言ったけど本人にもやっぱりお礼の一つくらいは言っておきたいしね」
「そ、そうだね。じゃあ、いずれ紹介するよ……それじゃあ私は疲れたからお風呂に入って寝るね!」
「そうね。分かったわ」
私はこれ以上慶君の話をお母さんとしているとさっきの事を思い出して大変な事になりそうと思ったので早めに話を終わらせた。
――その後私はお湯に浸かりながら考えていた。
「慶君……」
私はそう呟きながらそっと自分の唇に触れた。
今でも慶君の唇の感触が残っている。
正直に言うと私は今日キスまでするつもりは無かった。
大体キスより先に手を繋ぐ事を目標にしていたのに完全にすっ飛ばしてしまった。
勿論真理奈さんと会った事もたまたまだし晩御飯に招待してくれるなんて思っていなかったしね。
でも真理奈さんは凄く素敵な女性だし仲良くなれて本当に嬉しかった……それに慶君の家に行けたことも凄く嬉しかったな。
そして慶君とお別れする時の私は完全に浮かれていたと思う。
真理奈さんと仲良くなれた事、慶君の家に行けた事、慶君と一緒に夜ご飯を食べれた事……そんな事があったら当然だよね……だって大好きな人とそのお母さんだよ?気分が良くなって浮かれない方がおかしいと思う……分からないけど私はそうだったし。
そしてこれで慶君とバイバイすると思ったら居ても立っても居られなくなって慶を呼び止めて慶君にキスをしてしまった。
私は自分の気持ちを抑えられなくなってしまったのだ。
でも勿論その行動に後悔はしていない。寧ろよくやったと思う。
だって恥ずかしいけど一回しちゃえば二回目からは簡単に……は出来ないかもだけどそれでもハードルは下がる。
「それにしても私……凄いドキドキしてるな……」
今私は慶君とキスした事を鮮明に思い出していた。
慶君の唇の感触を、温かさを……
自分の心臓に手を当てなくても分かる……だって心臓がとてつもなく速く鼓動して体中に振動している事が分かるから。
「それに慶君も……」
私はキスをした後、もしかしたら慶君は嫌だったかも……そんな事が一瞬だけ頭によぎった。
何も言わずに急にした訳だからね。
でも慶君の顔を見てそうじゃ無い事が分かった。
だって慶君も顔が赤くなっていたから。
私はそれを見て凄く嬉しかった。
そしてそれと同じ位凄く恥ずかしかった。
これが私のファーストキス……
その相手が慶君で本当に良かった。
こんなに胸が高鳴る人なんて慶君以外に絶対に現れないだろう……何故かそう思える。
「なんか凄く幸せかも」
気分が凄く良くてふわふわしている。
大好きな人とキスをするってこんなに気持ちが良くなるものなんだ……
今まで感じた事がないくらい幸福感がある。
「そうだ……二人にも……」
私はそう一瞬思ったがやっぱりやめた。
二人に言うのは明日でも良いか……今日はこの気持ちに浸りたい気分だった。
そして二人もこの幸福感を味わえれば良いなとも思った。
今でこんなに幸せなら全てが上手く行って四人で付き合える時が来たらどれだけ幸せなんだろうか……
――そんな事を考えながらお湯に浸かっていると私は少しのぼせていた。
◇
――俺は結衣と別れたあと歩いて帰っていた。
「まさか結衣が……」
最近グイグイ来てはいたけどここまでしてくるとは思っていなかった。
勿論嫌とかでは全くないし寧ろ凄く嬉しかった。
前世の記憶がある分これがファーストキスって言って良いのかは分からないがそれでもドキドキした。
「流石に可愛すぎるって……」
結衣がキスをして離れた時の顔は今までない位可愛いと思った。
テレがあって顔は赤いがそれでも嬉しそうにしてた……そんな結衣が。
「それにしても今日はどうしたんだ?」
美月も結衣も一気に距離が縮まった気がする……いや確実にそうだ。
美月のあれは事故だけどそれ以前に手を繋ごうって言って来ていたし、結衣に関しては明らかだ。
「思ったよりゆっくり考えててもダメなのかもな……」
前に母さんと話した時からゆっくり考えようとしていたがそうもいかなそうだと今日改めて思った。
明香里も含めて三人が俺に好意を持ってくれているのは明らかだしそれに甘えてる状況は良くない。
大体そのせいで三人の仲がギクシャクする状況になるなんて耐えられないしな……もしかしたらその状況があり得る気がする。
そう思ったら俺はゆっくりしている訳にも行かない。
結衣、美月、明香里……だれの事が一番好きなのか……それを明日からはもっとちゃんと考えて行かないとな。
――そんな事を考えながら歩いていると自分の家に着いた。
「ただいまー」
「あ!慶お帰り。ちゃんと結衣ちゃんを送って来た?」
「うん勿論」
「そう、それにしても結衣ちゃんって本当に良い子ね」
「まぁ、そうだね」
「私に言われるまでもないかも知れないけどこれからも仲良くね」
「うん。そうだねそのつもりだよ」
母さんもかなり結衣の事を気に入ったみたいだったしな。
まぁ仮にそうじゃなくても仲良くすることには変わらないけどね。
「あ!そうそう、一応私がしないといけない仕事があと三日で終わる予定だから四日後にはまた出張先に行かないと行けなくなると思うの」
「そっか、意外と早いんだね」
「まぁ、そうね。でもまぁ、今回はトラブルで帰って来たけど来れて良かったよ。久しぶりに慶にも会えたし何より凄く元気にやってるみたいだし、あんなに可愛いくていい子とも仲良くなってるみたいだしね。私もお父さんも安心して仕事出来るからね」
まぁ、親が心配するのは当たり前だよな。
俺は一応前世の経験もあるからあれだけど普通の高校生で一人暮らしってなかなか珍しい事だもんな。
「まぁ、俺は上手くやってるし心配いらないからね」
「うん。それは伝わって来たよ。それじゃあお風呂のお湯は沸いてるから入っちゃってね」
「わかった。それじゃあ行って来る」
そうして俺は風呂に向かった。
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