第41話 家に帰ったら結衣がいた
「ただいまー」
俺が家に帰って来てそう言うと母さんが出迎えてくれた。
「お帰り慶」
「母さんただいま。今日は早く仕事から帰って来たんだっけ?」
「うん。取り敢えず私の仕事を終わらせたからね」
「そっか。お疲れ」
「そうそう慶?今日はお客さんが居るから優しくしてあげてね?」
「え?お客さん?」
何も聞いていないが母さんの会社の知り合いとかだろうか?
いや……それだったら俺に優しくしてあげては可笑しい表現だよな。
「そんなに考えなくても大丈夫だから。会ってみれば分かるわよ」
「まぁ、それもそうだね」
――そうして俺はリビングルームに来た。
「え!?結衣??」
「えっと。お邪魔してるね慶君」
俺はまさか結衣がいるなんて想像も出来なかったので当然滅茶苦茶驚いた。
そして結衣は少し恥ずかしそうにそう言って来た。
どうして結衣が?
俺は理由を母さんに聞こうとリビングルームから母さんを連れ出して聞く事にした。
「母さん?これは一体何があったの?」
「仕事から帰って来る途中に声をかけられたから連れて来ちゃった♪」
母さんはおちゃらけた様子でそう言って来た。
「いや連れて来ちゃったって……ちゃんと説明してくれよ……」
「冗談よ。でもあの子って慶が助けてあげた子でしょ?だから私もちゃんと話してみたいなって思ったからさ」
そう言えば軽く説明した程度だったんだっけな?
それこそ名前も教えてなかったし。
「それで声をかけられて連れて来たの?」
「そう!でも結衣ちゃんの母親にも私からちゃんと説明したし大丈夫だよ」
いやそこは別に心配してないんだけどさ。
大体母さんも結衣もそこら辺はしっかりする人だしね。
「まぁ、良いんだけどさ……今度からはちゃんと俺に連絡してよ?家に帰ったら友達が居るとか流石にびっくりしたしさ」
それに母さんには三人気になってる人が居るって言ったばっかりだしその一人が家に居るって流石に俺もかなり驚くよ。
「それはごめんね。びっくりさせたくてね♪それにあの子って慶が前に言っていた子でしょ?」
言ってた子って……やっぱり気になるって言った事だよな。
いやまぁ、友達って言える人は三人しかいないって自分で母さんに言ったし流石にバレるよな。
母さんだったら別にそこまで恥ずかしいって訳でも無いから良いけどね。
「まぁ、隠す理由もないしそうだね」
「そっか。うん!凄く良い子で安心したよ……慶が好きな子の話をするなんて初めてだからちょっと心配してたんだよね。それどころか女子に興味なさそうだったし」
確かに記憶を辿っても母さんにそう言った話をする事は無かったよな。
それどころか俺が転生する前の神道慶が女子に興味なかったのは確かにそうだったかもね……いや正確に言うと興味がない訳じゃなくて友達以上に思える人が居なかったってのが正しいのかな?勿論恋愛対象が男子だったって事ではなく単純にそうだっただけだ。
実際に母さんに好きな子出来たって聞かれた時はいつも女子はどうでもいい感を出して流していたみたいだしね。
「それはそうだね……結衣もそうだけど残りの二人も凄く良い子だからそこは安心して」
「そうね。結衣ちゃんに会った後だと私も安心してそう思えるからね。それじゃあ結衣ちゃんも待ってるし夕ご飯にしよ?」
「うん」
そんな会話をして俺と母さんは結衣が待っているリビングルームへと帰った――
◇
「お待たせ結衣ちゃん♪少し慶と話してたの」
「はい!大丈夫ですよ」
結衣は母さんにそう言って俺の方を見た。
「えっと……まぁ、急でびっくりしたけど母さんの料理は美味いし楽しんで行ってよ結衣」
「うん!そうするね慶君!」
そんな会話をニッコリして見ている母さんに少し気まずさを感じない事もないが俺は結衣の隣の席に腰を下ろした。
――それから俺達三人はご飯を食べ終わり雑談をしていた。
「へぇーそうだったんだね」
「はい!それで私から友達になって欲しいって頼んだんです!」
今は俺と結衣が友達になったきっかけを話している。
「それにしても勉強まで教えて貰っちゃって本当にありがとうね結衣ちゃん」
「いえいえ。それは私から教えるって言いだしたので全然ですよ!」
「それでもだよ。慶って言っちゃったらそこまで勉強を頑張るタイプでもなかったしあんなに高得点を取ったのは初めてだからね」
「そうなんですか?凄く真剣に勉強してましたし覚えもあり得ない位早かったですよ?」
「まぁ、慶は元々覚えは良かったからね。やる気さえ出せばって感じだったからね」
「慶君がそうだったんですね。意外ですね」
「そうなのよだから私も慶がちゃんと勉強してるって聞いて驚いたんだよね」
まぁ、俺が転生する前の神道慶は確かに勉強をまともにやってなかったしな……
それでもある程度の点数は取っていたのは凄いけど。
てかなんか二人って仲良くなり過ぎじゃね?
話題も俺の事ばっかりでちょっと入りにくいし……でもまぁ、二人が仲良くなる分には俺も嬉しいし別に良いか。
◇
――時間も遅くなりそろそろ結衣が帰る時間となった。
「お世話になりました!ご飯美味しかったです!」
「そう♪ありがとうね。またいつでも来て良いからね……と言っても私は少ししたらまた出張に行かないとだからいないんだけどね」
「はい!そうしますね!それに真理奈さんが帰って来てからでも来ますよ!」
いや……母さんが居なかったら俺と二人っきりだろ……とも思ったが俺も二人が冗談で言っている事位分かって居るのであえてそのままスルーした。
「それじゃあ慶?ちゃんと送って行くのよ?」
「当然分かってるよ。それに家も遠い訳じゃないしね」
「まぁ、そうね。それじゃあ結衣ちゃんまたね」
「はい!お邪魔しました」
そうして俺達は外に出た――
「今日はありがとうね慶君!後急にごめんね」
「いや。大丈夫だよ……俺も流石にびっくりはしたけど凄く楽しかったし母さんも楽しそうだったしな」
「そう?だったら良かったよ。私もすっごく楽しかったしね。それに真理奈さんも凄く優しかったし私も好きになっちゃったよ」
「ははは、そっか。それは良かったよ」
それから俺達は雑談しながら歩いていて結衣の家に着いた。
「それじゃあまた明日な結衣。今日は本当に楽しかったよ。それに母さんの急なお願いにもこたえてくれてありがとう」
「うんん。私も楽しかったし真理奈さんと仲良くなれたから嬉しかったよ。また明日ね」
そうして俺が帰ろう結衣に背を向けると……
「ねぇ、慶君!」
「ん?」
結衣に呼び止められて振り向くとその瞬間……俺の唇に柔らかい感触を感じた。
数秒間……決して長い時間では無かったけど俺は精一杯背伸びをした結衣にキスをされていた。
唇を合わせるだけのキスだったが俺は凄くドキドキしていた。
「そ、それじゃあまた明日ね……」
俺から離れた結衣は顔を真っ赤にして視線を逸らしてそう言って来た。
「う、うん……また明日」
俺がそう言うと結衣は急ぎ目に家に入って行った。
それから数秒後俺も帰る事にしたのだが、自分の顔も温かくなっている事に気が付いた。
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