第33話 三人の想い(下)
★宮本美月(side)
「まぁ、この話はここら辺で終わらせて次は慶君の事について話そうか。こっちの方が大切だしね」
結衣ちゃんの一声に私達は頷いた。
きちんと話し合ったからか私達は同じ人が好きと知っても気まずくない。
寧ろより仲良くなったとも思える位だ。
「それで慶の事って何を話すの?」
「そうだね。二人は私達の誰か一人が付き合うってなったらどう思う?」
それを聞いて胸が痛くなった。
誰かが付き合えば必然的に残りの二人は諦める事になる。
勿論私以外の二人が付き合うなら応援したい気持ちもある……あるけど……
やっぱり苦しいと思う。
慶の隣にいると安心感が凄い……それでいてドキドキも凄くするしね。
そんな慶を諦める事は本当につらいと思う。
色々と考えた結果、結局私は慶を諦めたくは無いんだ。
「私は、嫌だな……応援してあげたい気持ちは強い……だけどやっぱり苦しいと思うな……」
「私も同じ……ですね」
私の意見に明香里ちゃんは暗い顔をして同意した。
「そうだよね?勿論私も同じだよ。だからさ!これが私が今日一番言いたかった事なんだけどさ。考え方を変えてみない?」
「考え方を?」
「それはどういう意味ですか?」
結衣ちゃんが明るい表情でそう言うがどういう意味かは分からない。
「えっとね?慶君ってどんな事があっても大切にしてくれると思わない?」
それはそうだと思うがそれがどうしたのだろうか?
慶は凄く温かくて優しい人だ。
「そうだね。慶はそう言う人だからね」
「大切にしてくれるとは思いますけどそれがどうしたんですか?」
「じゃあさ、もし仮に私達三人と一緒に付き合ったとしても平等に接してくれると思わない?」
「「え?」」
結衣ちゃんの発言に私と明香里ちゃんはついぽかんとしてしまった。
それも当然だ。一緒に付き合うって事は言っちゃえば三股と同じ意味だ。
一夫多妻制でも無いし結婚も一人しか出来ない。
まぁ、結婚についてはいくらでもやりようはあるけど……
そう思ったら凄く魅力的な話にも聞こえて来る。
誰か一人だけってなると私が選ばれない可能性は高いと思う。
……ていうか今日見た女性と既に付き合ってるんじゃ……とかも思うけどその話はこの話し合いが終わった後にしよう。
それに慶の気持ち次第だけど三人一緒に付き合えるならば必然的に結衣ちゃんと明香里ちゃんともずっと一緒に居れる事になるし……
仮にそうなったとしても慶だったら皆を愛してくれると思う。
そんなに沢山の時間を共にした訳では無いけど慶は一度も私と適当に接した事はないし前提として人と関わる時は相手の事をちゃんと理解しようとして大切にするタイプだと思う。
何故か分からないがそんな気がする。
「結衣ちゃん……それってもしかして……」
「まぁ、二人が考えている通りだと思うよ。結論から言うけど慶君と私達三人が付き合えるように協力しようよ」
「それは本気ですか?」
私は正直に言うと凄くありだと思う……大体私はこれから先の人生で慶以上の男性に出あえる気がしないし……
そんな訳だからその選択肢は当然元々なかったけど実際にそれを提案された今では凄く魅力的だ。
さっきも思ったけど結婚とかはまだ分からないけどやりようはいくらでもある……なんなら結婚しなくても将来的には一緒に暮らして子供を作る事も出来るし……
勿論慶の意思が大事だけど。
明香里ちゃんの表情をみるにどうやら揺れ動いているようだ。
私と同じく魅力的に感じつつも本当に良いのか迷っている感じだ。
もし仮に四人で付き合うとして将来的にも一緒に居るとなったら勿論両親を説得する必要があるし普通じゃない事は分かってる。
私はそれを踏まえても四人で一緒に居たいと思うけど明香里ちゃんまだ整理がついていない様子だ。
「勿論本気だよ。私はそれ位慶君も二人も大好きなんだよ。空の時はこんな事思えなかったけど慶君だったら何があっても大切にしてくれると思ったからさ……」
「正直に言うと私は凄く魅力的だと思うかな……その提案は」
「うん!美月だったらそう言ってくれると思ってたよ!」
私がそう言うと結衣ちゃんは笑顔でそう言って来た。
「わ、私は……」
明香里ちゃんはそう言い淀んで考えていたので私達は明香里ちゃんの意見を黙って待っていた。
それから意外と直ぐの事だった。
「私もそれが良いです……将来の事は余り分かりませんが、わ、私も二人と……神道先輩とずっと一緒いたいです……」
明香里ちゃんは顔を真っ赤にしてそう言って来た。
私はそんな明香里ちゃんを見て女子から見ても本当に可愛いと思った。
ていうかずっと一緒に居たいって言われてつい私も嬉しくなっていた。
「ありがとう!明香里ちゃん!!!!ていうか明香里ちゃん可愛すぎだよ」
そう言って結衣ちゃんは明香里ちゃんに抱き着いた。
「結衣さん……ちょっと苦しいです……」
「あっごめんねつい力が入っちゃったね」
「まぁ、大丈夫ですよ」
「はいはい。二人ともイチャイチャしないでね。それで協力するってどうするの?」
「それはまだ考え中かな。私もこの意見を考え付いたのだ今日だしね……でも前提として慶君に私達三人に惚れて貰わないとだからとにかくアピールして行こうよ!!!」
まぁ、それは大前提だよね……
私も慶には積極的に行っていたつもりだけど心の何処かで結衣ちゃんの事を思って躊躇している節はあったし……でもこれからはそれも気にしなくて良いから頑張ろう!
「そうだね。アピールはちゃんとしていかないとね。明香里ちゃんは大丈夫?」
「えっと……正直自身はありませんが、その……頑張りたいです」
明香里ちゃんはもじもじしてそう言った。
「大丈夫だよ明香里ちゃん!私も結衣ちゃんも協力するしアドバイスもするからさ!もし何かあったらちゃんと相談してね!」
「そうだよ明香里ちゃん!私達を頼ってね……といっても私達も頑張らないとだけどね」
「結衣さんも美月さんもありがとうございます」
「うんうん。その先は情報共有しつつ慶君の反応を見てから決めよう!あ!でもね?慶君が誰かと付き合う事になって私達が良いって言っても二人以上と付き合う事はしないって言ったらその時は残った二人は応援に徹して諦めよう……」
まぁ、それは当然だよね。
私達が良いって言っても慶が乗り気じゃなかったら言語道断な訳だしね。
「それはそうだね」
「分かりました。それで行きましょう」
「うん。とりあえずそんな感じで行こうね♪それでねこれで最後なんだけど……さっき慶君が一緒に居た綺麗な女性……気になるよね?」
「当たり前だよ!正直今までずっと気になってたんだよ!!」
「私もです……」
「その件についてはとりあえず私に任せてね。明日学校でそれとなく聞いてみるからさ。二人は慶君にどうアピールするかを考えていてね」
「でももしあの綺麗な女性が彼女だったらどうするの?」
「……」
私がそう言うと明香里ちゃんは凄く不安そうに黙ってしまった。
「んー、その時は三人で笑って諦めよっか……流石に私達以外の人にこの提案は出来ないしね……笑って三人で落ち込もうね。正直私はこの先に人生でも慶君の事を忘れられないと思うけどそれだったらどうしようも無いからね……」
結衣ちゃんは悲しそうにそう言う。
でもその時は仕方ないか……
認めたくはないけど慶君もあの綺麗な女性と居る時楽しそうだったしね……
慶君が幸せならね……
「そうだね」
「……はい」
「でもね?まだ決まった訳じゃないからね?二人は落ち込んでる暇はないよ?ちゃんとアピールの方法を考えないとだよ?」
結衣ちゃんは優しい声でそう言って来た。
「うん!そうだよね!明香里ちゃんも頑張ろう!」
私がそう言うと明香里ちゃんは深く深呼吸をしてから笑顔で言った。
「はい!頑張ります!!!」
その後は三人で楽しくおしゃべりをしてから解散した。
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