第28話 明香里の母親とお話しする
明香里が部屋を後にして俺と詩音さんはお互いに向かい合っていた。
「ふふふ、ごめんなさいね。ちょっと揶揄い過ぎきゃったかな?」
「かもですね。明香里さんの顔が真っ赤でしたしね」
笑顔でそう言う詩音さんに俺はそう返す。
「それにしても改めて本当にありがとう」
先ほどまで笑顔だった詩音さんは真剣な表情になって頭を下げてまたお礼を言って来た。
「頭を上げてください。お礼はもう受け取りましたから」
「そうね。でもそれ位感謝しているってことだから……明香里が今笑ってられるのは間違いなく神道君のおかげだからね。神道君は明香里の命だけじゃなくて心も助けてくれわけだから……」
心もか……そう言われると確かにその位の事件ではあったんだよな。
母親の立場からしたら気が気じゃ無かったはずだ。
「そうですか……俺も助ける事が出来て本当に良かったですよ」
その後は少し静かな時間が続いた。
「よし!暗い話はこれで終わりにしましょうか」
「そうですね。そうしましょう」
「それにしても本当に良かったわ。明香里が空以外の男子と仲良くなってくれて」
「そうなんですか?」
「そうよ。明香里ってば昔から空以外の男子と仲良くなろうとしなかったのよ。空の友達の酒井君とも一緒に居てもほとんど話さないみたいだし」
まぁ、酒井とは話せない訳ではないけどって感じなのかな?
俺はそう思いつつも話を聞き続けた。
「母親の私からしたら別に男性と特別仲良くして欲しいとは思わないけど、話す事すら嫌がるのはちょっと心配してたんだよね」
「まぁ、明香里らしいと言えば明香里らしいですけどね」
「それでも神道君には心を許してるみたいだからさ、余計なお節介かも知れないけどこれからも明香里と仲良くして欲しいの。さっきも言ったけど明香里が笑顔を見せるなんて親の私からしたら本当に嬉しい事だから……空の前でも笑顔になる事も無い訳ではないけど、もっと軽い笑顔と言うかどこか心の底からの笑顔じゃないんだよね」
「心の底からの笑顔ですか?」
「そう。それも成長していくうちに尚更ね。それに私があの事件があってから心配して帰って来たら明香里ってば全然元気でびっくりしたのよ。事件の説明をした後に神道君の話も出てたんだけどその時の明香里の表情が凄く柔らかくて楽しそうだったの。だから神道君には明香里と仲良くして欲しいなって思ってね。それに明香里は素直じゃないけど神道君だったらそこもちゃんと理解してくれてそうだからね」
明香里の母親である詩音さんがそう言うなら俺が思っている以上に明香里は俺に心を開いていてくれてるみたいだな。
俺は詩音さんの言葉を聞いてそんな事を思って嬉しくなった。
それに明香里は素直じゃない所が可愛い所でもあるからそこは当然理解している。
「それは勿論そもつもりですよ。俺からしても明香里さんとはこれからも仲良くしたいですしね」
「ふふふ、ありがとうね神道君」
――それから出て行った明香里がいつも通り落ち着いた表情で帰って来て俺達は少し話してから帰る時間となった。
「それじゃ、そろそろ失礼しますね」
「えぇ、また遊びに来て頂戴ね」
詩音さんはそう言って来るが多分そんな簡単な話ではないだろう。
だってこの家には高堂空も住んでる訳だからな。
明香里は詩音さんが俺の事を兄に話さない様に言ってあるらしいが、そこまで詳しい事までは話していないとの事だった。
「はい。分かりました」
「それじゃあ明香里、私は食器の片付をするから見送ってあげてね」
「分かりました。それじゃ行きましょう神道先輩」
俺達はその後玄関を出て少し話していた。
「今日はありがとうな」
「いえ。これはお礼ですので。それにお礼を言うのは私の方ですから」
「それじゃあ。お相子って事でお礼を言い合うのは終わりだな」
「そうですね」
「そういえば兄の方には今回あった事件について全部説明したのか?」
俺はふと気になったのでそう聞いてみた。
「えっと。一応伝えはしましたけど、襲われたけど神道先輩の事は伏せて上手く伝える事にしちゃいました……結衣さんとの事もあって神道先輩と仲が良く無いのは感じていましたので……時間が経ってから伝えた方が良いんじゃないかと思いましたので……ごめんなさい」
「いや、謝られる事じゃないから謝る必要はないぞ?まぁ、一方的に敵視されているのは俺も気付いてる訳だし、余計なトラブルにもなるかも知れないしタイミング的にも言わなくて正解だったとおもうぞ」
それに結衣に聞いてるかは分からないけど俺の事を悪く言っていたみたいだしな。
「それにしても明香里って本当に詩音さんの事が大好きなんだな」
「そ、そうですね。母親ですから当然です」
明香里は俺の言った事に照れながらもそう答えた。
「しかも今日の明香里は表情がころころ変わって新鮮で凄く可愛かったぞ」
「かっ!かわっ!!!」
俺がそう言うと明香里は顔を真っ赤にして口をパクパクしていた。
やっぱり明香里ってうぶで凄い可愛いな……たまたま通りかかっただけど本当に明香里の笑顔を守れて良かったなって改めて感じた。
「それじゃ俺は帰るからな。またな」
「……はい……」
顔をそらして返事をする明香里と挨拶を交わした俺は家に帰って行った。
◇
★高堂明香里(side)
――私は神道先輩を見送った後、お母さんには少し休むと言って自分の部屋まで来た。
「はぁー、顔が熱い……」
私は自分の気持ちに気付いてからも神道先輩とは変わらず話せている。
でもふとした瞬間に神道先輩の言動に狼狽えてしまう。
「お母さんもお母さんであんな事をばらしちゃうなんて……」
私は自分が神道先輩の事を楽しくお母さんに話している自覚すらなかった。
でもお母さんの口からそう言っていたのだから間違いなく自覚していないだけでそうだったのだろう。
確かに神道先輩の事を考える事が多くなっているのは間違いない。
それに神道先輩の事を思うとドキドキするのも感じられる。
「可愛い何て言われ慣れてるはずなのに……」
自慢じゃ無いが私は昔から可愛いと言われ続けていた事もあり男性に向けられる目が好きではなかった。勿論男の人に可愛いと言われてもなんとも思っていなかった。
私が男性と関わらないのはそれが原因だ。
それなのに神道先輩から可愛いと言われた時は心臓が凄くドキドキした。
「はぁ」
私は深くため息をついた。
私は恋愛に関しては人一倍疎い事もあり、この初恋に対してどうすればいいのか分からない。
でも一つ確実に言える事はもっと神道先輩と一緒にいて神道先輩の事を知りたいと言う事だ。
お付き合いしたいかと言われると正直分からないけど、そうなれれば凄く嬉しと思う。
「やっぱり結衣さんと美月さんに相談しましょうか……」
これは一人じゃどうしようもないと思い私は近いうちに相談する事を決めた。
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