第27話 明香里の家にお邪魔する
「よし!そろそろ外に出る準備を始めるか」
俺は今日、明香里の家に行く時間になるまで暇だったので家で小説を読みつつ時間を潰していたが、そろそろ良い時間になっていた。
この家から明香里の家までは1kmくらいで結構近いが遅刻をする位なら早めに出て待っていた方が良いだろう。
――身だしなみを整えた俺は準備を終えたので早速明香里の家へと向かったて歩いていた。
明香里の家に近づいて来たので、一度止まった俺はスマホで時間を確認したら4:30だった。
「少し早く着きそうだな。まぁ、少しだけ待ってから明香里に連絡を入れようかな」
俺がそう思って道の隅で止まって居たら後ろから話しかけられた。
「あ、神道先輩」
俺を呼ぶ声が聞こえたので振り向くと明香里が少し重そうに買い物袋を持って立っていた。
「お!明香里か。買い物に行ってたのか?」
「はい。飲み物を切らしていたので近くのコンビニに行ってました。神道先輩は私の家に向かってる途中ですか?」
「そうだよ。ちょっとだけ早かったかもだけど」
「そんな事ないですよ。この位の時間だったら問題ないですし寧ろ早めに行動出来るの偉いですよ」
「それはありがとな。じゃあ一緒に行こうか」
「はい。行きましょう。今お母さんが料理を作っている頃だと思いますので」
「それじゃあ、その飲み物は俺が持つぞ。ちょっと多めに買ってるみたいだしな」
俺はそう言って明香里が両手で持っていた買い物袋を受け取った。
「あ、ありがとうございます」
買い物袋を受け取る際に手が触れ合った明香里は恥ずかしそうにそうお礼を言って来た。
そうして俺達は明香里の家に向かった。
◇
――俺と明香里は明香里の家に着いた。
途中止まって話していた上に明香里と一緒だったので、ゆっくり歩いていた事もあって既に時間は五時近くになっていた。
「ここが私の家ですので入りましょう」
「そうだな。お邪魔するよ」
「はい」
明香里に導かれる形で俺は家に入った。
ここは高堂も住んでいる家と言う事もあって実際に来てみるとちょっと不思議な気分になった。
そういえば俺は今日小説を読んでいる時に実は今後高堂と仲良くしてみるかを考えていた。
そうすれば結衣たちにも余計な心配や苦労をかけないで済むんじゃないかと思ったからだ。
しかし現状で言うと俺が一方的に敵視されてる上に結衣の事で嫉妬されてるのは明らかなので、例え仲良くなったとしてもそれはそれでめんどくさい関係になるのが目に見えて分かったので没にした。
「ここがリビングなので入りましょう。お母さんも居ると思います」
「あぁ」
そうしてリビングルームに入るとキッチンで明香里の母親が料理をしていた。
そんな明香里の母親は俺達に気が付き挨拶をして来た。
「あ!君が神道君なのね!いらっしゃい」
「はいそうです。お邪魔します」
「そこに座って待っててね。今最後の料理を作っている所だから」
「わかりました。ありがとうございます」
そう返事をすると明香里にこっちですと言われたので明香里の隣に座った。
机の上には唐揚げなど既にいくつかの料理が置かれてあって凄く良い匂いがしていた。
美月の時もそうだったが、俺は両親が家に居ないので基本は本当に簡単な料理をするかコンビニで買うかのどちらかだ。
そんな訳でこんなに凝った料理を食べる事は普段無いので結構楽しみだった。
――明香里の母親が最後の料理を作り終えたらしいので運ぶのを手伝って三人で席に着いた。
「そうじゃあ食べようか」
明香里の母親が笑顔でそう言った。
「はい。頂きます」
「頂きます」
そう言って俺はまず唐揚げに手を付けた。
唐揚げは久しぶりに食べるが明香里の母親が作った唐揚げは凄く美味しく感じた。
「凄く美味しいです」
「ふふふ、ありがとうね神道君」
そう言えば明香里の母親ってずっと笑顔で凄く優しそうだな。
明香里の母親だから明香里に性格も似てるのかと思ったけど全然違うんだな。
勿論どっちが良いとかは全く無いがちょと意外だとは思った。
「神道先輩、お母さんの作った肉じゃがは凄く美味しいですよ。食べてみてください」
「そうか?じゃあ頂くよ」
俺は明香里にそう言われたので肉じゃがを口に運んだ。
「本当だ。滅茶苦茶美味しいよ」
「はい。そうですよね」
明香里の顔を見ると凄い笑顔だった。
普段あまり表情を変えないけど母親の前ではこんなに可愛く笑うのか。
俺達がそんなやり取りをしていると明香里の母親が言った。
「二人は仲が良いのね」
「え、そ、そんな事ないですよお母さん!普通ですよ別に!」
いや。そんなに慌てて言うと逆に怪しいぞ明香里。
明香里は普段クールだけどこういった可愛い面もあるんだよな。
「でも明香里がそんなに楽しそうにし話す子なんてなかなかいないでしょ?しかも男の子にね?」
明香里は母親のその言葉を聞いて口をぱくぱくさせて慌てている。
母親も母親でそんな明香里を見て楽しんでるようだしな。
そんな二人を見ていると微笑ましくて仲の良さが目に見えて伝わって来る。
まぁ、これ以上放って置くと明香里が更に慌てそうだしそろそろ話を変えた方が良いかな?
そう言えば明香里の母親の名前も聞いて無かったしな。
「えっと。よろしければ明香里さんのお母様のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「あら、そう言えば言って無かったわね。私は高堂詩音(こうどうしおん)よ。そのまま詩音って呼んでくれて良いからね」
詩音さんは笑顔でそう言って来た。
「分かりました。それでは詩音さんと呼びますね」
「うん。それで急に話が変わるけど本当にありがとうね神道君……それにケガまでしたって聞いたけど大丈夫だったの?」
詩音さんは笑顔だったのが急に真面目な顔になりそう言って来た。
「いえいえ。明香里さんが無事で本当に良かったと思いますし、俺のケガは本当に全然軽い物ですので大丈夫ですよ」
「それでも明香里が今元気で過ごせているのは間違いなく神道君のおかげなのよ?大体明香里が私以外に笑顔を見せるのは珍しいからね。男性は勿論、空にですらなかなか見せない笑顔よ?」
「そうなんですか?」
詩音さんがそう言って来たので明香里の方を見てみると顔を真っ赤にして俯いていた。
結衣や美月といる時は笑うって聞いてたけど高堂の前でもそんなに笑顔にならないのかな?
「そうなのよ。それにね私に神道君の事を話す時は凄く嬉しそうに話してくるのよね」
そうなのか?でも明香里からは結衣たちみたいに好意を向けられてる感じではなかったけど……まぁ、心は多少開いてくれているんだろうとは思っていたかな。
そんな事を思っていたら明香里が慌てて話し出した。
「お母さん!それ以上は駄目ですよ!……ちょっとお手洗いに行って来ます……」
明香里は恥ずかしそうに顔を真っ赤にした明香里は速足で出て行った。
明香里の反応を見ても本当っぽいな。まぁ、詩音さんが嘘つく理由なんてないんだけどね。
そして俺は明香里が出て行ってから再び詩音さんと向き合い、今度は二人で話す事になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます