第26話 神道慶は改めて思う

※コメントを見て気付きましたが25話で神道慶が宮本美月の家を知らないと言っていた場面を修正しました。大した変更ではありませんが一応報告しておきます。


「はぁー」


 俺はバイト終わりに美月を家まで送ってから家に帰りベッドに倒れた。


「ストーリーとか関係なく普通に生きて行くって決めたのは俺だけどさ……」


 俺がそう思ったのは確か……結衣と友達になった時だったかな?

 勿論その時は結衣に対して下心などは一切なかった。

 結衣の恋愛相談相手兼友達として仲を築いて行こうと思っていた……いや、まぁ、そこまで深くは考えてはいなかったがとりあえずそんな感じだった。


「でも最近の結衣と美月を見ちゃうとな……」


 今日の美月は明らかだった。

 俺の勘違いではないと思うが、好意の無い相手にあそこまで照れて名前で呼び合おう何て言わないよな。

 結衣に関しては元々距離が近かったのが、高堂と仲違いをしてからは更に距離が近くなってるし。

 明香里はまぁ、そこまでそんな事は無いが二人……特に結衣からは明らかな好意を感じ取れる。


 俺は確かに結衣も美月も明香里も幸せになって欲しいけどさ……

 

 結衣は初めての友達で、正直俺は結構元気を貰っていたと思うし、いつも元気で温かい。

 美月は優しくて努力家。人の為に頑張れるて倒れるまで努力を出来る人なんてそうそういないだろう。

 

 最初こそそんななかったのだが、最近の俺は少しずつ結衣たちに惹かれているんだと気付いた。

 関わって行くうちに……性格を知って行くうちに……

 

「はぁー」


 それに気付いたのは最近の事なので友達としては好きだけど、恋愛的な好きまでは行っていないとは思うけど……

 俺はこの世界がゲームの世界じゃないと理解してからは、少しずつこの現実に適応して来ていて、最近ではもうその事を考える事も余り無くなっていた。

 そんな中で結衣達に好意を向けられたら流石にな……俺もこの展開は予想すらしていなかったので正直困惑している所がある。


「てか、高堂は何をやってるんだよ」


 マジであいつがしている事が好きな人にする事じゃない。

 今回の結衣の件もそうだが、明香里がストーカーに襲われた時に明香里の話より友達とのゲームを取るとか普通にありえねーよ?

 大体、もっと三人の事を見てあげてもいいだろうが!

 男友達との関係も大事ってのは分かるどさ……優先順位は間違えるなよ。

 明らかに結衣が離れて行ってるのにそれでも何もしないし……いや何も出来ないのか?

 

「何か考えただけでイライラしてきたわ……」


 やばっ!前世で高堂をゲームで見ていた時の気持ちを思い出してきちゃった……

 てかそうじゃん、高堂は鈍感でヒロイン達を傷つけて何回も喧嘩してたんだっけな。

 それで俺もイライラしてゲームをやめちゃったし。


「……ふぅー、一回落ち着け俺」


 今高堂の事でイライラしてもストレスが溜まるだけだな。

 

「てかそう考えるとやっぱ俺が高堂の恋愛イベントを奪ってるんかな?」


 結衣たちの俺に対する好感度が上がってるのは明らかだし、逆に俺が知ってる中では高堂は寧ろ好感度が下がってるんじゃないか?

 明香里と美月が高堂をどう思ってるかは分からないけど、結衣に関しては間違いない。

 まぁ、だとしても勿論俺はそんな事が理由で三人を助けない何て選択肢を取る事はあり得ない。

 

 俺がこの世界でまともに関わっていて友達と言えるのは結衣と美月と明香里だけと言ってもいい。

 勿論その他にも多少は関わってる人はいるが、その三人と比べたら友達と言えるかどうか分からない。

 そんな三人が傷つくのは普通に許せないしな。三人とも良い子だし尚更だ。


「……よし!改めて思ったけど、もう難しい事は考えないで思うようにしようか。この世界は現実で主人公とかヒロインとかモブとか関係無い訳だしな」


  俺がそんな事を考えて吹っ切れているとスマホが鳴った。


(ピコン)


 その通知は明香里からの電話だった。


『神道先輩、今大丈夫ですか?』

『大丈夫だぞ』

『明日の事なんですけど、6時って言っていましたけど5時に変更しても大丈夫ですか?少し夕飯の時間が早くなってしまいますけど』

『大丈夫だけど何かあったのか?』

『いえ。大した事ではありませんが、もしかしたら兄さんが思ったより早く帰って来るかも知れないとの事だったので』


 やっぱり明香里は意図的に俺と高堂を合わせない様にしてくれてたんだな。


『なるほどな。分かったぞ……後ありがとうな、気を遣ってくれて』

『気を遣うって何がですか?』

『いや、こう……空と会わない様にしてくれてるじゃん?』

『まぁ、そうですね。でもこれは気を遣うと言うよりも私達もそっちの方が都合が良いので気にしないでください』


 確かにそうだな。

 普通に考えたら俺と高堂が仲が良くないなら同じ家にいるって明香里や明香里の母親からしたらくそ気まずいか。

 

 俺がそう思っていたら続けて明香里が言った。


『それに兄さんが神道先輩に敵意を持っている理由は何となく分かりますけど、神道先輩は全く悪くありませんからね。結衣さんと何があったかも聞きましたし』


 やっぱり昔から一緒に居ただけあってそこら辺も分かるんだな。

 ていうか明香里がこうやって言ってくれるとちょっと嬉しいな。

 最初にあった頃に比べると結構心を開いてくれてるんだなって感じがするよ。

 

『ありがとな。明香里も何か困った事があれば頼ってくれて良いかなら。俺は先輩だしな』

『そんな先輩を強調して言わないでくださいよ……それにやっぱりなんか子供扱いしてませんか?……でもまぁ、そうですね。何かあれば先輩に頼らせて貰おうと思います……』

『最初に会った時と比べると明香里も結構素直になったな』

『そっ、そんな事知らないですよ……大体最初素直でしたよ……』


 ……最初出あった時の明香里は初対面でぼっち君って言って来てたぞ?

 いや、でも生意気な後輩って感じだったけど、思ったことを素直言って来たから素直ではあるのか?

 てかぼっち君は結衣が言ったから明香里のせいでもないのか?


 いや、まぁ、そこまで気にする事でもないんだけどな。


『そうだな。素直だったな明香里は』

『……も、もうその話は良いですから明日はちゃんと来てくださいね!!!五時ですからね!遅刻は駄目ですよ!』


 俺が改めて揶揄うようにそう言うと明香里は、怒っている……と言うよりかは恥ずかしがった感じでそう言って来た。


『分かってるよ。じゃあまた明日な』

『は、はい。また明日ですね』


「……明香里を揶揄ってみるのは今日が初めてじゃないが、なんか結衣の気持ちがちょっと分かるかもな」


 結衣は良く俺の事を揶揄って来るけど確かに明香里みたいに良い反応をされるとついな……

 いや、俺は別に面白い反応をしていた覚えは無いんだけどね。


「まっ、嫌がってもなさそうだし大丈夫か。本当に嫌なら明香里の性格だったら言うだろうしな」


 そんな事を考えながら寝る準備を進めて行った。

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