第24話 結衣の過去と仲良し三人の話し合い

「小さい頃の私ってね……今の私からは想像出来ないかも知れないけど友達が一人も居なかったの」

「え?」

「驚くでしょ?でもねこれ本当なの。当時の私は凄く消極的だったからね……それでね、ある日お父さんとお母さんと仲のいい人の子供って事で空と会う事になったんだよね」


 その後も結衣は淡々と話し続けた。


「親の親友の子供と言っても私からしたら仲良くなれるか不安で会う事も怖かったんだよね。それで実際に空にあった時の感情は特に特別な事はなく他の子と同じ感じだったんだよね。それでも親の都合もあり会う事が多くなっていってその度に空は私に話しかけてくれてたんだよね。でも当時の私はろくな返しが出来なくて無視に近い感じだったんだ」


 それは意外だな……確かに今の結衣を見てたら信じられ無いな。


「そんな事が長く続いて私は少しずつ話せる様になって行って、始めてあってから半年位たった時には普通に会話出来るようになってたんだよね。それから私は少し自分が変われるきがして、空とは小学校が違ったんだけど私も少しずつ勇気を出して自分の力で友達が作れるようになったんだよね。私的にはその時は空に対して感謝の気持ちでいっぱいだったけど恋心自体はなかったの。でもね、中学が同じになり一緒にいる時間が多くなっていって、気付けば好きになってたの。だから何がきっかけ?って聞かれても分からないって言うのが正しいのかな」

 

 そんな過去があったのか……仮にも自分が変わるきっかけをくれた人なんだな。なら尚更俺のせいで喧嘩したのは申し訳ないな。


「まぁ、喧嘩する事もあったけどそれでも空以上に仲良かった男子もいなかったしね。前に私が友達は多いけど気を遣うって言ってたのも、もしかしたら小さい頃友達が居なかった事が影響してるのかもね……」

「なる程ね……そんな過去が」


 まぁ、一緒に居る時間が長ければその分良い所も悪い所も分かって来るけど、恋心を抱くのもおかしな話じゃないしな。


 そんな事を思いつつも俺は再び質問をした。


「でもそれだったら尚更いつまでもこのままじゃアレだろ?宮本さんや明香里とも気まずいんじゃないか?」

「そうれはまぁ、そうだね。でも二人とは今日の放課後話す事になってるから大丈夫だと思うよ。二人は慶君の噂を聞いていないっぽいしそれも含めて何があったかをちゃんと話すからさ」

「そうか……俺に出来る事があれば言ってくれよ?まぁ、高堂の事に関してはほとんど何も出来ないと思うけどさ、高堂とも早く仲直り出来るといいけど……」


 俺がそう言うと結衣は少し暗い表情になってから言った。


「うん。ありがとね……ねぇ?慶君……」

「ん?どうした?」

「人の気持ちって変わるんだよね……それに最近では悪い所が凄く目立つしね……」

「え?それって……」


 俺がそう言うと結衣は先程とは違って笑顔で言った。


「ううん。何でもない!それじゃそろそろお昼休みが終わる時間だから教室に帰ろっか」

「あ、あぁそうだな」


 そんな感じで昼休みが終わった。



★ 遠坂結衣(side)


 ――私は今美月と明香里ちゃんの三人で私の家で話している。


 いつもはカフェで話しているのだが今日は私の家に招待した。

 今日の話題は私が慶君に助けられた事も詳しく話すし外は止めた方がいいとおもったからだ。


「えっと?結衣ちゃんそれで話って何?」

「そうですね。大事な話があるって言っていましたけど」


 二人は恐る恐るそう聞いて来た。

 確かに二人には大事な話があるって言ったがそこまで身構えないで良いんだけど……


「えっとね……実は空と慶君の事でね」

「え?空君と神道君の事?」

「何かあったんですか?」


 二人は心配そうにそう尋ねて来た。


「うん。その前に一応聞くけどさ、二人は慶君の事はどう思ってる?」

「え、え?神道君をどう思ってるって……」

「ど、どうって言われても……な、何かあったんですか?」


 私は噂を聞いたかどうか確認するためにそう質問をしたのだが、二人は何故か凄く慌てている。

 一体どうしたのだろうか?

 

「えっとね。実は最近こんな事があったの……」


 私は慶君に助けられた所から空の事まで全部話した――


「そうなんですね……そんな事があったんですか」

「それで昨日から空君と口をきいてなかったんだね……」

「うん。もっと早く言えば良かったねごめんね」

「それは大丈夫よ。それより結衣ちゃんが無事で良かったよ」

「そうですね。私もそう思います」

「うん!全部慶君のおかげだよ!」


 私が笑顔でそう言うと二人は不思議な表情になった。

 

「そうですか……神道先輩が……」

「神道君……」

「うん。それでね私は今空に対して恩人の悪口を言われて怒ってるから、空から頭を下げるまでは許す気は無いの……それで気まずくなっちゃうけどごめんね」


 慶君は全然気にしてなかったし、仲直りした方が良いんじゃみたいな事を言われたが、私は許すとしても空から頭を下げない限りは許す気は無い。

 それにいずれは幼馴染として仲直りはしたいと思っているが、ゆっくりでも良いと思っている。

 慶君と出会う前だったら早く仲直りしないとって思っていただろうけどね。

 

 もしかしたら空には思い出フィルターみたいなのが掛かってたのかもね……慶君と出会ってから落ち着いて考えてみたら空って凄く子供っぽいし、私の事を適当に扱う事もあるし、自分の思い通りに行かないと拗ねるしで、幼馴染って目で見ると別に良いんだけど今では恋愛対象で見る事は出来ないんだよね。


「それはまぁ、兄さんが悪いですから……」

「そ、そうだね……ろくな事実確認もしないでその、結衣ちゃんと仲良くしてる人の事を言った訳だからね……」

「そうなの……でもね私が空とギスギスしてるからって二人は気にしないで空と仲良くして良いからね?勿論私とも今まで通り仲良くして欲しいし」

「それは当たり前ですよ。兄さんどうこうは置いておいても私達が結衣さんと仲良くしない訳が無いじゃないですか」

「そうだよ結衣ちゃん!私も明香里ちゃんと同じ意見だよ」


 私はそれを聞いて本当に良い親友を持ったなと改めて思った。

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