第23話 あの日の噂
俺は高堂が去った後、一人で立っている結衣に近づいて話しかけた。
「結衣?」
「え?あ!慶君!」
俺が呼ぶと結衣は振いたが、いつも通り……ではないな。
ちょっと元気がない感じだった。
「何があったんだ?さっき講堂の怒ってる声が聞こえて来たけど?」
「あ!そうだね……空については全く気にして無いんだけどさ……実はね?あの日慶君が私を守ってくれた日があったでしょ?」
「えっと、あの先輩の件だよな?」
「うん……」
確かにあったが今更どうしたのだろうか?
てか高堂の事はどうでも良いのか……かなり怒っていた様に見えたけど。
「そうれがどうしたんだ?」
「実はさっき空が言ってたんだけどさ……あの日一年生の子が丁度慶君が先輩を倒してる瞬間だけを見て、慶君が喧嘩をして人をボコボコにして病院送りにした不良みたいな噂が広まって来てるらしいの」
あーなるほどな、確かに一方的ではあったからな……でも病院に行かないといけない程ボコボコにはして無いんだが?
まぁ、でも正直に言うと噂に関してはどうでも良いな。
俺の性格的に知らない人からどう思われようと気にしないし、分かっていて欲しい人が分かってくれれば別にって感じだ。
でもめんどくさいってのはそうだけどな。
てか結衣凄く不安そうな顔してるな。
多分自分を守ってくれた事が原因だから相当責任を感じてるって感じか。
「まぁ、良いんじゃない?」
「え?」
俺がそう言うと結衣は驚いた表情になった。
「俺は別に知らない人にどう思われても気にする性格でもないしな」
「でもそんな噂……」
「てかさ、別に大丈夫じゃない?もしヤバくなってもいくらでも訂正出来るじゃん?だってあの時の結衣が動画取ってた上に警察までからんでたんだからさ。それに先生にも報告行ってたじゃん。俺達も話したしね」
俺がそう言うと結衣は「そうだった!!!」みたいな表情になった後に 胸をなでおろした。
「そうだった……私ってば慌て過ぎててそんな簡単な事すら意識になかった……」
「な?だからさ、もし噂が広まり過ぎて問題がありそうなら訂正するって感じで大丈夫だぞ」
「なんで??私は学校につき次第知ってる人に言おうと思ったけど」
「まぁ、そうしたら逆に噂が広まる可能性もあるし何より変に大きくするのもめんどくさいからな、機会が有ったらでいいぞ」
「慶君が言うならそうするよ……」
「あぁ、てかアレだよ、マジで全然心配する様な事じゃないから心配すんなよ?」
「うん、分かったよ慶君。それに何かあれば私がちゃんと説得するから安心してね」
「頼もしいな。それじゃよろしくな」
そんなこんなで俺と結衣は学校に向かった。
てかそう言えば高堂と喧嘩してた理由って何だったんだろうか?
◇
――その次の日の昼休み俺はいつも通り空き教室でコンビニで買った弁当を食べていたのだが、今日は珍しく結衣も一緒だった。
結衣と一緒に昼を食べるのは初めてでは無いが数えられる程度だ。
ていうかやっぱり今日の結衣は変だよな?高堂と喧嘩したっぽいしそれが原因なのか?
「ねぇ?慶君?大丈夫だった?」
「え?大丈夫って何がだ?」
「えっと。噂の事で……」
結衣は心配そうにそう尋ねてくるが、大丈夫ではある。
確かに少しいつもよりも見られていた気はするが、昨日と比べて今日はそこまで酷いものではなかった。
俺の目線から感じたのは「あ!あの人って……」感じで寧ろマイナスどころかプラスの印象を持ってる感じがしたし……俺の気のせいじゃ無ければだけどな。
いやまぁ、そんな訳無いから気のせいなんだとは思うが、俺的にはそんな感じなのでマジで気にもなっていない。
「全然大丈夫だぞ。思ったより嫌な目は向けられなかったし」
「あ!それなんだけどね実はさ、昨日慶君の陰口を言っているのを先生に聞かれちゃった子がいてね、その時先生から私に事実を教えて良いかって聞かれたから説明して貰ったの」
そんな事があったのか……てかそんなに簡単に解決できたんだな。
俺も大丈夫だとは思っていたがもう少し大変だと思ったから結衣に大丈夫って言ったんだけどな。まぁ、結果的に解決したならそれで良いか。
「へーなる程な……それでか……ってじゃあ何でそんな心配そうな目で見てたんだ?」
俺がそう言うと結衣はピクって体が動いて少し焦った感じになっていた。
「あっ、えっとそれは……だって、今回の件で慶君が……」
結衣は何かを言おうとしているがやけに躊躇している様だった。
「俺がどうしたんだ?」
「慶君が強くて頼れる男性ってバレて女子から人気が出ちゃったんだよ!!!」
「はい?」
恥ずかしそうにそう言うと結衣だが、何故そんな事に?
でも確かにそう言われると今日の女子から向けられる視線の事も辻褄が合うかもな。
ん?でも何でそれで心配を?
「でもそれだったら結衣は何で心配してたんだ?それを聞くと尚更心配する要素無いと思うんだが?」
「いや……だからそれは……慶君が人気になっちゃうと私と一緒にいる時間が減っちゃうじゃん……」
そんな事を言う結衣は顔を真っ赤にして言っている。
ていうかこれって……え?
そんな告白まがいな事を不意に言われた俺はびっくりしつつドキドキしていた。
俺はそれから少しして心を落ち着かせてから言った。
「まぁ、大丈夫だ。俺は結衣と一緒にいる時間が好きだし減る事はないよ」
「う……うん。ありがとう……」
――それから数分間無言が続いたが俺は気になった事を聞く事にした。
「なぁ?結衣?」
「どうしたの?」
「その……高堂と何があったんだ?喧嘩でもしたのか?」
俺がそう言うと結衣は恐る恐る言い出した。
「えっとね、実は……」
そうして俺は喧嘩をした理由を聞いた。
って、原因は俺かよ……
「えっと。ごめんな俺のせいで」
「それは違うよ!!!慶君は私を守ってくれただけなんだから!!!」
俺がそう言うと結衣は大きな声でそう言って来た。
「そうか……」
「ごめんね……ちょっと大きな声出しちゃった」
「いや大丈夫だ。それよりさ……いいのか高堂と喧嘩したままでさ?」
「まぁ、喧嘩をする事は今回が初めてじゃないけど……今回はどうしても許せないから……」
初めてじゃないか……そう言えば結衣ってなんで高堂の事を好きになったんだろうか?
俺はそんな事をふと思った。
「結衣ってさ?高堂のどこを好きになったんだ?」
「空のどこをね……そうだね……慶君には話してもいいかな、別に特別な理由があった訳じゃ無いんだけどね……」
俺がそう聞いてみると結衣は懐かしむ様に話しだした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます