第19話 高堂明香里のピンチ?
――俺は学校が終わり結衣と美月さんと別れた後で家に帰った後、夕食時になったが気持ち的に料理を作る気分じゃなかったので外食を済ませていた。
「結構暗くなって来たな……」
今日は天気が曇りだった事もあり、外食を終え家に帰る時には外は既に暗くなっていた。
「ん?なんだあれは?」
俺が帰路を歩いていると前方に明らかに雰囲気の可笑しい二つの人影を見つけた。
俺は何故かそれがやけに気になり恐る恐る近づく事にした。
近づくにつれ二人の会話が徐々に聞こえて来たのだが、どうやら穏やかな状況ではないらしい。
男性は女性のストーカー?らしくてどうやら今の状況的に正気じゃなさそうだ。
女性の方はこんな状況だが冷静に会話を試みてるみたいだが、良く目を凝らしてみると街灯に照らされている彼女を後ろから見た感じ足が震えているのが分かる。
暗くて誰かは分からないが助けた方が良いよな?
俺がそんな事を思っていたら男性が急に大声をあげて女性に近づいた。
男性は手に何かを持っている……街灯の光に反射して光って見えたのは包丁だった。
それに気付いた女性は震えてその場から動けなくなっている。
「マズイ!!!」
俺はそう思いダッシュで距離を詰めていた。
ストーカー男が包丁を女性に向けて刺そうとして、女性が後退り尻もちを着いた所でギリギリ間った俺はストーカー男を無効化する事に成功したのだが無傷とはいかずに腕に少し深めの傷を負って、血がぽたぽた垂れていた。
「っ!……暗くて手元が狂ったな……」
まだ空が明るく余裕もあればこんなのは簡単に対処出来たはずなのだが、慌てていた事もあり思った通りには行かなかった。
俺がそう呟くと後ろから慌てて話しかけられた。
「あ、あの?大丈夫ですか?」
俺は既に気絶しているストーカー男を抑え付けたまま後ろを振り向いた。
街灯の光が当たって顔がはっきりと見えたが、そこには高堂明香里がいた。
俺の目に映る明香里は凄く不安そうに見える……先程まで腰を抜かしていたせいか今でも足をぶるぶる震わせている。
「え?明香里だったのか……」
俺がそう言うと明香里は膝から崩れ落ちて泣き出した。
「神道……先輩……」
「えっと?大丈夫だぞ?どうしてこうなったかは分からないがこいつはもう気絶してるしな?」
「は……はい……ありがとうございます……」
まいったな……急にこんな場面に遭遇するなんて思ってもみなかったぞ。
明香里は普段とは全く雰囲気が違く、力無く泣いている。
まぁ、当たり前だよな……自分よりはるかに大きい男性がナイフを持って襲い掛かって来たんだからな……女の子からしたらトラウマレベルだよな。
俺は「大丈夫だよ」と言いながら明香里の頭を撫でると明香里は俺の服を掴んで泣き続けた。
とりあえず警察に連絡しないとな。
そうして俺は警察に連絡をしたのだが、幸い警察署が近くにあったので直ぐに駆けつけてくれた。
俺達はその後一緒に警察署で事情聴取を受ける事になったのだが状況が状況だったので直ぐに解放された。
明香里の両親は仕事で数日間県外に行っているとの事だったが、どうやら話を聞いた両親は居ても立っても居られなくなり仕事をほったらかして帰ってこようとしたらしいがそれを明香里が諭していた。
あんな怖い事があった後でも両親に心配をかけない様に冷静にそう言う姿は流石だなと素直に感激した。
因みにあのストーカー男は明香里が高校生になってからバイトと言う事に興味があったらしく、カフェで少しだけバイトをしていた時に目があったとか楽しく話したとか意味の分からない動機で犯行に及んだらしい。
勿論明香里はストーカー男の事なんて一ミリも覚えていなかった。
◇
――俺は明香里を家まで送る為に夜道を歩いていた。
「ありがとうございました……」
今は落ち着いた明香里が俺に対して恥ずかしそうにそう言って来た。
きっと先ほど大泣きしてしがみついて来た事を恥ずかしがっているのだろう。
「たまたま通りかかっただけだし気にしなくて良いよ、あの男も逮捕されるらしいし危険はもう無いだろうしね」
「はい……」
「それより今日は流石に家まで送って行くけどいいよな?あんな事があったばかりだしな」
「そうですね……お願いします……でも腕は大丈夫なんでしょうか」
明香里は心配そうにそう言うが、正直これ位の傷なら大した事ないしちゃんと応急手当はしたので全く問題ない。
「うん。これ位だったら全然ケガの内にも入らないからな。手当もしたしな」
俺はそう言って腕を動かして安心させるために大丈夫とアピールをした。
「そうなんですね……だったら良いですけど……その、無理はしないでくださいね……」
「うん。大丈夫だよ、それじゃあ帰ろっか」
「……はい」
そうして俺達は歩き出した。
――家の前まで着いたら明香里が話し出した。
「えっと。本当にありがとうございました……」
「大丈夫だって。それに明香里の恥ずかしがる顔が見れてちょっと嬉しいしな」
今だ申し訳なさそうかつ恥ずかしそうにそう言う明香里は、元気がなかったので俺は少しでも元気を出してくれればなと思いそう言った。
「なっ!恥ずかしがって何て無いですよ……それに私が泣いていた事は忘れてくださいね!!」
「そうか?だったら何で顔が赤いんだ?」
「そんな事知らないですよ!仮に赤いとしても暑いからですよ絶対に!!」
「そっか。まぁそう言う事にしとくよ。じゃあ俺は帰るからゆっくり休めよ」
「わ、分かってますよ……」
そう言って俺が立ち去ろうとしていた時、明香里に呼び止められた。
「あ、あの……」
「ん?どうした?」
「えっと……連絡先を交換してください……」
「え?連絡先?」
「あ、あれですよ!両親が帰って来た時に連絡をとると思うのでその為ですよ!け、決して他意はないですよ!!」
明香里は顔を真っ赤にしてそう言って来た。
はは、ちょっと元気出してくれたみたいで良かったな。
「そうだな。じゃあ連絡先の交換するか」
――LIMEを交換した後。
「それじゃ、帰るからじゃあな」
「はい……さようなら……」
そうして俺は明香里と別れて自分の家へと帰って行った。
◇
――家に帰った俺はベッドの上で考えていた。
「大丈夫だったかな?下手したら男性恐怖症とかになってもおかしくないレベルだったけど……」
普段強気な明香里があそこまで泣いたんだから精神的苦痛は凄かったはずだ。
「まぁ、そこら辺は兄の方がどうにかするよなきっと……」
一緒に住んでる訳だしな。
そんな事を考えていたらスマホに電話が来た。
スマホを手に取り画面を見るとそこには高堂明香里と書かれていた。
『神道先輩、今日は本当にありがとうございました』
『まぁ、明香里が無事で何よりだし気にすんなって』
『そうですね……神道先輩がそう言うならそうさせていただきますね』
『あぁ、それでいいよ』
『はい』
『まぁ、あれだな。今は家に両親はいないらしいが兄はいるだろうから取り敢えずは大丈夫そうだな』
『兄さんなら明日は土曜日で休みだからって酒井先輩の家に泊まり込みでゲームをするって言ってましたからいませんよ』
え?てことは家に一人って事かよ……あんな事があったのに心細いだろ。
と言っても俺に出来る事は無いんだけどさ。
『その……兄の方に今日の事は連絡を入れたのか?』
『えっと、そうですね……実は電話をしたら今友達とゲームしてるからって直ぐに切られちゃいましたね』
はぁ?どうなってんだよ……本当にそれで主人公なのか?
今の所あいつのイメージは最悪なんだが?
でもまぁ、ここは一旦あいつの話は区切った方が良さそうだな。
『えっと?大丈夫か?その……精神的な面でさ?』
『神道先輩って意外と心配性なんですか?』
『え?心配性?』
『そうですよ?私は全然大丈夫ですよ?確かにあの瞬間は凄く怖かったですけど』
確かに声色は……穏やかだし大丈夫そうなのかな?
まぁ、必要以上に俺があれこれ心配しても明香里からしても気まずいよな。
『そっか、だったら安心だな』
『まぁ、そんな訳だから神道先輩は心配しなくて良いですからね!……それじゃあ私はもう寝ますから』
『うん。お休み明香里』
『お……おやすみなさい……』
そうして俺は通話を終えた。
「あー疲れた……でも何事もなくて本当に良かったな」
てか何処が平和なエロゲなんだよ……全然平和じゃねーじゃねーかよ。
まぁ、今更そんな事を考えても仕方ないか……答え何て出ないしな。
ていうかあの日結衣と関わり始めてから色々な事が起こりすぎだろ。
そして高堂はもっとしっかりしろよ。
「まっ、明香里も大丈夫そうだし今はそんな事は考えなくても良いか……」
そう思いながら俺は眠りに着いた。
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