第18話 遠坂結衣の気持ち


★遠坂結衣(side)

 

「はぁー、美月ったら結局どっちなんだろう……」


 私は今日一日で明らかな異変を感じた。

 昨日までは、最近美月の様子が変だなって私も思っていたが何でなのかは聞けていなかった。

 ていうか私も慶君の事があったので同じ感じだったのだろう……


 そんな美月が今日、慶君と楽しそうに教室に入って来て私は心臓がバクバクしていた。

 美月も慶君も笑顔で話していたからとてもびっくりした。

 昨日まではほとんど話していなかったはずなのに……


「それにしても今日の慶君、凄くカッコ良かったな」


 教室に入った時の美月には空が色々と聞いていて当たり障りのない回答が帰って来たが、慶君との関係はたまたま話していただけという結論に空と哉太君はなっていた。

 私もその時はとりあえずほっとしたが、問題は体育の時間だ。

 

 体育が始まって最初の時は空が昔サッカーをやっていた事もあって、気合を入れていた姿を美月も見ていて笑顔だったから安心していた。

 それを横目に私はずっと慶君の事を見ていたのだけど、慶君は一人でアップをしていた。

 私はそんな時ふと美月の方を見ると先程までは空達を見ていた美月は私と同じ所を見ていた。


 それから数分間アップの時間があったのだが、気付けば美月は空の方を見たり慶君の方を見たりと交互に見ている事が分かった。

 私はそれを見て少し違和感を覚えつつも焦りを感じた。

 もしかして美月も……と。


 そんな中試合が始まったのだが、開始早々に空がシュートを打ったがキーパーに止められた。

 私と美月はそれを見て「惜しい」と二人で言ったがキーパーは現役のサッカー部なので仕方のないことだとは思っていた。


 その後空と同じチームのサッカー部の人がゴールを決めて盛り上がっていたのだがそれに関しては私も美月もそこまで何も思っていなかったのだが、問題はその後だ。

 

 慶君がボールを持つと空が何故か凄いぶつかり方をしてボールを奪おうとしていた。

 私はサッカーのルールに詳しく無いけど、危ないぶつかり方だったのは何とく分かったので珍しく空に怒りを覚えていた。

 しかし慶君はそんな空のアタックを軽く躱してもう一人のディフェンスも、何て言う技なのかは分からないけどかっこいい抜き方をしてそのままゴールを決めていた。


 私はそれを見た瞬間元々好きだったのだが更に好きになった気がした……そんな感じで心臓が高鳴っていた。

 クラスメイトの女子達まで慶君の事をカッコ良いと言っていたがそれに対しては嬉しい気持ちと焦りの気持ちを持っていた。


 そんな中、慶君に夢中で美月の事を見ていなかった私が美月に顔を向けると……美月は顔を赤く染めて慶君の事を見ていのだ。


「やっぱりあの顔ってそうだよね……」


 何がきっかけで?サッカーでそうなったの?いややっぱりそれ以前に?今日一緒に居た時も?

 私はそんな事を頭の中でグルグル巡らせていたらいつの間にか放課後になっていた。


 私はチャイムの音でふと我に返り、居ても立っても居られなくなって慶君と一緒に帰る事にしたのだが、その途中で美月とも合流して美月と慶君にあった事を教えて貰った。


「それにしても美月があんな事を思っているなんてね……」


 美月が人一倍勉強を頑張っている事は分かって居たが、倒れるくらいまでしてたんだね……良い教師になるのが夢だとしても頑張り過ぎだよ。

 言ってくれれば私だって、年下だけど明香里ちゃんだって協力を惜しむ気は無いのに。


「まぁ、そこが美月の良さでもあるんだよね。あの優しい子はね」

 

 その話を聞いて私はより一層美月の事が好きになったしこれからは勉強の面でも協力しようと決意した。

 それと同時に慶君とあった事を聞いてモヤモヤもしていた。

 その時は美月の事が心配で何とか表に出さずに済んだが、実はもの凄く美月が慶君をどう思っているのかが気になっていた。

 勿論慶君の気持ちも気になるけど……


「でもあんな状況で聞ける訳ないよね」


 美月は空の事が好きだったんだじゃ……まぁ、それは私も同じか。

 仮に美月がそうだったとしたらそう遠くない内に話し合う必要がありそうだな……

 美月には申し訳ないけど、慶君だけは譲りたくない。

 空の時は何だかんだ行動に起こせなかったけど慶君の場合は何故か違う。

 まぁ、あれかな……それ位慶君の事が好きなんだと思う。


「はぁー、まだ確定ではないけど、何で私達は親友同士でこうなっちゃうんだろうね……まさか明香里ちゃんまで……まぁ、それは無いか、慶君と明香里ちゃんは一度話したっきり関わり無いみたいだしね」


 私はそう思いながら眠りに着いた。

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