第17話 遠坂結衣、宮本美月と下校する

 チャイムが鳴って今日最後の授業が終わった後直ぐに隣の席の結衣が俺に話しかけて来た。


「ねぇ?慶君?」

「どうしたんだ?」

「えっとね、慶君ってこの後直ぐに帰るの?」

「まぁ、そうだな一応そのつもりだぞ。特にする事も無いしな」


 俺がそう言うと結衣は少しもじもじした後に笑顔で言って来た。


「それじゃあ一緒に帰ろうよ!家も近いんだしさ……友達なんだからたまにはさ」

「えっと、じゃあそうするか」


 俺は特に断る理由もなかったので一緒に帰る事にした。


「うん!そうしよう!」


 そんな感じで俺と結衣は一緒に帰る事になった――


「それでどうしんだ?急に一緒に帰ろうだなんて?いつもは高堂達と一緒に帰ってるんだろ?」

「そうだね。でも特に深い意味はないよ?ただたまには慶君と一緒に帰りたいなって思っただけだよ?それに今日は元々皆と一緒に帰る約束はしてなかったしね」


 俺の問いに結衣は笑顔でそう返す。

 そいえば最近結衣から高堂の相談をほとんどされてないけど……まぁそれについては俺から聞く事じゃないか。

 大体最近の俺的には今更高堂に勘違いされるぞとかは言う気は無い……だってそのくだりは今までに何回もした上でその事はこれからも気にすんなと結衣本人に言われたからだ。

 それなのに俺が言うのもおかしな話だしね。


「そっか……そう言えば結衣は今回のテスト二位だったんだな。一位とも数点の差が僅かだったしほんとに凄いな」

「でしょ!今回も頑張ったからね!」

「次のテストでは一位とれんじゃないか?」

「ふふ、だと良いけどね」

「結衣だったらできるよ絶対にね……」

「ありがとう慶君」

「あ!テストと言えば一年の結果が目に入ったんだけどさ、明香里って滅茶苦茶頭良いんだな、ほぼ満点だったし」

「そうだよ。あの子は本当に頭良いよ。勉強時間も私より短いと思うしね。明香里ちゃんは覚えが本当に早いからね」


 へぇー、俺からしたら結衣も大概だけどそんな結衣が言うんだったらよっぽどなんだろうな。


 ――その後勉強についての話を少しした後結衣が話を変えた。


「そいえば慶君ってサッカーをやってたの?」

「あーまぁそうだな。昔ちょっとだけね」


 流石に前世の話なんて出来る訳ないからこれしか言いようがない。


「え?少しだけなの?丸山君ってサッカー部で二年のエースなんだよ?」

「らしいな」

「らしいなって……でもまぁ、凄くカッコ良かったよ……」

「……っ!」


 結衣は俯きながらそう言う。

 俺は余りにも突然そんな事を言われたので少しドキっとした。


「ほんと凄かったんだよ?クラスの女子達も慶君の事かっこいいって言ってたんだからね?」


 次に結衣は顔を上げていつも通り揶揄うようにそう言って来た。


「大袈裟だって流石にそれは」

「大袈裟か……そう言えば慶君?」

「ん?」

「慶君って美月と何かあったの?」


 結衣は訝し気に俺の事を見てそう言う。


「え?宮本さんと?それってどういう意味だ?」

「今日なんか二人仲良かったじゃん?楽しそうに話して教室に入って来たし……」

「あー、あれはテストの結果がお互いに良かったからそれで盛り上がってたんだよな」

「そうなの?」

「そうだよ」


 まぁ、あの時は本当にそんな感じだったしな。


 俺達がそんな会話をしていると丁度と言って良いのか、美月さんと出会った。


「あ……結衣ちゃんと神道君」

「み、美月……」


 二人は顔を見合って少し気まずそうにしていた。

 そんな二人を見て俺はすかさず美月さんに話しかける事にした。


「えっと?宮本さんも今帰り?」

「うん、そうだよ。二人は一緒に帰ってたの」

「そうだよ。私から誘ったの。折角だし美月も一緒に帰ろ」

「そうだね。折角だしそうするよ」

「じゃあ三人で帰るか」


 ――そうして三人で帰る事になった俺達は話しながら帰っていた。


「えっと?慶君?美月?やっぱり二人何かあったよね?」

「どうしたんだ急に?」

「そうだよ結衣ちゃん?」

「だって明らかに二人の距離が近いよ?前よりも気軽に話してるし」


 俺としてはそこまで意識してなかったから気付かなかったがそう見えるのか。

 まぁ、隠してる訳じゃないけど美月さんが言って無いんだったら俺も言わない方が良いのかなって思ってたんだよな。


「あ!美月!その顔はやっぱり何かあったんだね?そんなに言いたく無いの?」


 まぁ、美月さんは隠し事を出来るタイプじゃなさそうだし、しかも仲の良い結衣からしたら簡単に分かっちゃうんだろうな。


「えっと、そうじゃ無いけど……」

「じゃあ話してよ、気になるからさ」

「うん、分かったよ」


 そうして美月さんはあの時の事を話した。

 どうやら美月さんは俺の事と勉強をし過ぎたって事は伏せて体調が悪くなったとだけ話していたみたいだった。


「なる程……それじゃあ、美月は慶君に助けられた後で美月の手料理を食べて仲良くなったんだね……」

「えっと。まぁ、そうなるのかな」

「そっか。慶君……ありがとうね。美月を助けてくれて」

 

 結衣はそれを聞いて俺の方をみて笑顔でそう言って来た。


「良いって過ぎた事だし、ちゃんとお礼もしてくれたしな」

「それにしても美月がそんなに勉強頑張ってるなんて……言ってくれれば私も協力するのに……」

「そうだよね……でも完全に私の都合だし、自分の勉強もあるだろうから迷惑かなって……」

「はぁー」


 美月さんがそう言うと結衣は深くため息をついてから話し出した。


「あのね美月?私と明香里ちゃんは絶対に迷惑とか思わないよ?美月が逆の立場でもそうでしょ?」

「それは……そうだね……」

「でしょ?だったらもう迷惑とか考えないで相談してよね?」

「そうだね。ありがとう結衣ちゃん!」

「うん♪どういたしまして」


 二人は笑顔でそう言い合い手を握り合っていた。

 俺はそんな二人を見て本当に仲が良いんだなって改めて思いつい笑顔になっていた。


「どうしたの慶君?そんな笑顔でこっち見てるけど?」

「なにかあったの?」

「あ、いや本当に二人は仲いいんだなって思ってね、まぁ明香里も入れて三人なのかな?」

「それは当たり前だよ。私達はそんじゃそこらの人とは信頼度が違うからね」

「ふふふ、そうだね。私も結衣ちゃんと明香里ちゃんの事が大好きだからね」


 そんなこんなで俺達は楽しく話しながら帰った。

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