第13話 宮本美月からのお礼


「よし!やっと掃除終わったな!」


 テスト明けは四連休だったので火曜日の今日に俺は家の掃除をしていた。

 俺はふと時計を見ると午前11時だった。


「もうこんな時間か……早起きしたんだけどやっぱり掃除をしてると時間経つの早いな……てか昼ごはんどうすっかな」


 俺が掃除を終えて昼ごはんはどうするか考えいるとスマホの通知が鳴った。


「ん?なんだ?」


 俺は机に上に置いてあったスマホを手に取り確認したのだが、美月さんからの連絡だった。


『神道君、グループチャットから追加させて貰いました。先日はありがとうございました。私は体調が悪かったのでちょっとうろ覚えでしたがお母さんに聞きましたが迷惑をかけてすいませんでした。』


 えっと。なんで敬語なんだ?てかやけに丁寧だな。


『いや、大丈夫だよ。それより元気になったのか?』

『はい。医者に診て貰ったんですが実は、テスト勉強や塾やらでろくに寝てなかったので疲れが急に来たらしくて、この三日間しっかり休んだら元気になりました』

『そうなのか……勉強を頑張るのは偉いけど体調には気を付けなよ?』

『はい。これからはちゃんと気を付けます……えっと、神道君はこれから用事はありますか?』


 これからって今日の話だよな?特に用事はないけどどうしたんだろうか?


『そうだな……これから昼ご飯を食べようとしてた位で特に用事はないけどどうしたんだ?』

『えっと。神道君にお礼がしたくて良かったら一緒にお昼ご飯を食べませんか?私が作りますので……』

『宮本さんのお母さんにも言ったけどお礼とか気にしなくて良いんだぞ?』

『これは私の気持ちなので……それにお母さんにもその位しなさいって言われましたし』


 まぁ、丁度昼ごはんを食べに行こうとしてたしここまで言われたら断る方が申し訳なくなるしお言葉に甘えるか。


『分かったじゃあ作ってもらおうかな』

『はい!えっと、それじゃあこれから私の家までこれますか?材料はあるので作って待ってますので』

『うん、分かった。じゃあこの後行くから』

『はい。待ってます』


 そんな訳でお昼ご飯を作って貰う事になったのだが……本当に何故敬語だったのだろうか?

 元々敬語なんかじゃなかったよな?



 ――俺は美月さんの自宅に着いたのでチャイムを鳴らした。


(ピーンポーン)


「宮本さんこんにちは」

「あ……こんにちは……神道君……取り敢えず中に入ってください」

 

 俺が挨拶をすると美月さんは少し恥ずかしそうに挨拶をしてきて中に招いてくれた。


 ――リビングルームまで案内されたが机の上には料理が置いてあった。


「これ全部宮本さんが作ったの?」

「はい。そうです……」


 机の上にはオムライスに味噌汁。様々なオカズが並んでいた。


「凄いね。めっちゃおいしそうだよ」

「ありがとうございます……」


 俺が褒めると美月さんは照れくさそうにそう言った。


「えっと、宮本さん?メッセージでやり取りしてた時から思ってたけど……何で敬語?」


 そう尋ねてみると美月さんはもじもじした後に恐る恐る口を開いた。


「あ、ごめんね……でも、うろ覚えだけど私が神道君に負ぶって貰った上に、その……凄く恥ずかし事を言った気がして……」


 恥ずかし事って……あぁ、俺的にはそこまで気にして無かったけどアレかな?匂いが落ち着くって言った事かな?


「あ、えっとそれで敬語だったのか?そんな気にする事でも無いんじゃないか?俺も悪い気はしなかったしな」

「てことはやっぱりアレは私の気のせいじゃなかったんですね……」


 美月さんは顔を真っ赤にしてそう言う。

 俺はそれを見て少し気まずくなったので慌てて話を変えた。


「それより宮本さんの料理食べていいか?」

「あ、うん大丈夫だよ」


 俺はまずオムライスに手を付けたのだが、プロの料理人が作ったのかって位ふわふわで凄くおいしそうだった。

 そのまま俺はオムライスを一口分スプーンで取るとそのまま口に運んだ。


「え!このオムライスめっちゃ美味しいよ!宮本さんって料理まで上手なんだ」

「ありがとう。実は小さい頃からお母さんとお父さんに喜んで貰いたくて練習してたの」


 先程まで恥ずかしそうにしていた美月さんは凄く素敵な笑顔でそう言った。


「マジで美味しいよ料理人を目指してるって言われても納得出来るレベルだよ」

「ふふ、そんなに喜んでもらえると私も嬉しいよ」


 ――俺と美月さんは料理を食べ終えた後少し話していた。


「そう言えば神道君はテストどうだったの?」

「そうだな。思ったより出来たなって感じかな?」

「そうなんだ、結衣ちゃんに教えて貰ってたんだよね。覚えが早いって褒めてたよ」

「いやいや、あれは結衣が教えるの上手いだけだよ」

「……いつの間に呼び捨てになったの?」


 あ……理由か、それ言って良いのかな?

 結衣があのチャラ男事件の事を皆に教えてないかもしれないしな……てか教えてない可能の方が高いよな?聞いてたら呼び捨てになった理由も知ってると思うし。


「えっと、まぁ、仲良くなったし呼び捨てでいいよって事になったんだよ」

「そうなの?でもまぁ、神道君の話をする結衣ちゃんって凄く楽しそうだしそうなのかもね」


 結衣は美月さんがそう思う程嬉しそうに俺の事を話しているのか?

 まぁ、でもちょっと恥ずかしい気もするが、そう言われると俺も凄い嬉しい気分になるな。


「そう言えば宮本さんってなんで倒れるまで勉強を頑張れるんだ?」

「そうだね……私って要領悪いんだよね……結衣ちゃんは少し勉強をすると出来ちゃうタイプだけど私はそうじゃないから……」


 美月さんは悲しそうな声と表情で俯いてそう言う。

 そう言えば教師になるのが夢って言ってたよな。

 それも相まって勉強を頑張ってるんだろうな……


「宮本さんって凄いんだね……」

「え?私が凄い?」

「だって倒れるまで頑張れるなんて事、誰にでも出来る事じゃないよ。そんなに努力出来るのに凄く無い訳ないじゃん」

「そんな事ないよ……だってそれだけしても結衣ちゃんより頭悪いし……」


 そう言えばうろ覚えではあるが美月さんって優しけど自分に自信がない性格だったっけな。

 凄い良い子なんだけどね……こういう時はどうやって返事をすればいいんだろうか……


「いや、努力出来る事に意味があるんだよ……宮本さんだって成績で言うとトップなんだしそんなに悲観する必要ないと思うよ。少なくとも俺の目から見たら努力出来る宮本さんは凄くカッコよくて素敵だよ?」

「……そっか。ありがとう……」


 今さっきまで少し悲しそうな表情をしていた美月さんだったが俺の言葉を聞いてか、少し笑顔になり嬉しそうだった。

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