第12話 体調不良の宮本美月と遭遇した

「はぁー、久しぶりのテストだけどやっぱり疲れるな」


 チャイムがなり三日間続いたテスト期間が遂に終わった。

 こればっかりは二度目の人生だとしても疲れるもんなんだな。

 正直この三日間は凄く長く感じたし思った以上に大変だった。


「てか、思ったよりテストのレベル高かったな」


 俺が通っていた高校と比べても明らかにレベルは違うと思う。

 大学まで行って無かったらかなり悲惨な結果になっていたな絶対に……

 流石レベルの高い高校って感じがしたな。

 この学校で学年トップクラスの成績を取ってる結衣と宮本さんってマジで凄いんだな。

 俺は実際にテストを受けてみて二人の凄さを改めて実感した。


「ちょっと疲れたし今日は外食にでも行こっかな」

 

 俺はそんな事を考えながら教室を後にした。



 ――時刻は七時三十分。俺が外食を終えて帰宅している途中の事だった。


「久しぶりに外食したけどやっぱり滅茶苦茶美味しいな」


 この世界に来てからはほとんど外食をしていなかった上に、最近はコンビニ弁当ばかりだったので尚更美味しく感じた。


「ん?どうしたんだあれ?」


 少し前の角から曲がって来た女の子なのだがどうやら同じ学校の生徒みたいだ。

 進行方向が同じで顔は良く見れないが、明らかにふらふらしていて危険な感じだった。

 しかもこの時間帯だと外も結構暗いし、この辺は車の通りが多い上に歩道が狭いので割と危険な道だ。

 危ないなあの子……俺はとてもじゃないけど放って置ける感じではないと感じた。


 同じ学校の子だし俺が危ないと思い女の子に近づき声をかけようとした時、女の子はバランスを崩して車道側に倒れそうになった。

 しかも明らかにスピード違反をしているだろう車が丁度凄い勢いで向かって来ていた。 


「は!?」


 俺は思わず声が出てしまったが、咄嗟の事に体は勝手に動いていて転びそうな女の子の手を掴み軽く抱きしめていた。


「あっぶねー……大丈夫か?」


 俺はそう言いながら女の子の顔を見ると辛そうな顔でこちらを見ていたのだが……その子は美月さんだった。

 俺はそっと美月さんを体から離してから尋ねた。


「えっと、宮本さん?どうしたの?」

「はぁ、ごめんね……ちょっと調子悪くて……」


 そう言う美月さんだが、顔が赤く手も熱かったし明らかに熱がある感じだった。


「体調悪いみたいだけど家まで帰れる?」

「分からない……さっきまで歩くのも……辛かったから」


 途切れ途切れ話している所も見てもとてもじゃないけど一人で歩けそうな感じではない。

 立ってるのでもやっとって感じだし家まで送って行くべきだよな。


「えっと、じゃあ家まで送っていくよ」

「……ありがとう……」

「肩貸すから捕まって」

「うん……」


 ――そうして家を教えて貰って向かっていたのだが、肩を貸していても凄く息を切らして辛そうにしていた。


「宮本さん?家までまだちょっと距離あるけど大丈夫?凄く辛そうだけど……」

「多分……」


 美月さんは先程よりも更にふらふらしていて体にも力が全然入っていなかった。

 そこまで仲が良い訳でも無いからおぶっていくって言わなかったど、流石にこれは出来るだけ早めに家に送り届けないとまずいな。

 

「宮本さん。もしよかったらおぶっていくけど……歩くのも辛いでしょ?」

「……ありがとう」


 俺がそう言うと美月さんはその言葉だけ言ってあっさりと背中に乗って来た。


「じゃあ、進むから少し揺れるかも知れないけど楽にしてね」

「うん……神道君の匂い……凄く落ち着くね……」


 美月さんはそう言うと直ぐに俺の背中で眠りに着いた。


「よっぽど辛かったんだろうな……」


 その後俺はなるべく揺らさない様に意識しながら歩き始めた。

 

 ――暫く歩き続けると美月さんの家に着いた。

 

 背中に居る美月さんは、先ほどよりかは明らかに辛そうでは無かった。


「宮本さん、着いたよ」


 俺は背中に居る美月さんにそう教えるがなかなか目を覚まさなかった。

 

「気持ち良さそうに眠ってるし無理に起こすのも悪いか」


 そう思った俺は美月さんの家のチャイムを鳴らした。


(ピーンポーン)


 チャイムを鳴らすと直ぐに出て来たのは美月さんの母親らしき人物だった。


「えっと?どなた?それに背負ってるのって美月?」


 母親らしき人物は困惑そうにそう尋ねて来た。


「そうですね。えっと俺は美月さんと同じクラスの神道慶って言います。なんでこうなったのかは後程説明しますので先に美月さんを寝させてあげたいんですが……どうやら体調が悪いみたいで」


 俺がそう言うと母親らしき人物は美月さんの体温を確認した。


「ほんとね……取り敢えず中に入ってベッドまで運んでもらえる?」


 俺の事は信用していないだろうけど、美月さんが調子悪そうだと分かったからか母親らしき人物はそう言った。

 まぁ、突然知らない男が娘を背負って来たら親ならだれでも警戒するわな……ちょっとそこまで意識回ってなかったな。


 ――俺は美月さんをベッドに寝かせてから、美月さんに会ってからの事を丁寧に伝えた。


「そうなのね。本当にありがとう、美月を助けてくれて。自己紹介が遅れたけど私は美月の母親で宮本恵(みやもとめぐみ)よ」

「いえいえ、たまたま会っただけですし大丈夫ですよ」

「何かお礼がしたいんだけど……」

「いや、お礼は大丈夫ですよ。それより今は美月さんの看病をしてあげてください。俺はもう帰りますので」


 俺がそう言うと恵さんは少し微笑んで言った。


「美月を助けてくれたのが神道君で良かったわ。話していても分かるけど凄く良い子っぽいし」


 恵さんは先程とは打って変わって優しそうな顔でそう言って来た。 


「そんな事ないですよ。当然の事をしただけですから」

「ふふ、本当にいい子ね。それじゃあ気を付けて帰ってね」

「はい。美月さんに体調に気を付けてと伝えて置いてください」

「分かったわ」

「それじゃ失礼しました」


 そうして俺は美月さんの家を後にした。

 

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