第10話 自覚した遠坂結衣
私は慶君に家まで送って貰ってから一人部屋で考えていた。
「うそ……ドキドキがとまらない……」
先程私を守ってくれた慶君の顔が頭から離れない。
慶君が居なかったら私は今頃……なんて事は考えたく無いがそれ位まずい状況だった。
「それにしても、慶君がいてくれて良かったな……」
私が高校生になった位に同じ中学だった子が教えてくれたのだがあの先輩が不良になって喧嘩ばっかりしているとの事だった。
私はそれを聞いてかなり不安に思っていたので空にも相談したら「まぁ、大丈夫でしょ?」って言われて余り心配してくれなかったのがちょっと悲しかったが結局その後ずっと何もなかったので忘れかけていた。
仮に出会うとしても正直慶君と一緒に居る時には出会いたくなかった。
そんな中で出会ってしまったので私は慶君を巻き込みたくなくて敢えて他人の振りをしようとしたんだけどな……まさか自分の彼女とまで言って守ってくれるなんて……
「あぁだめだ……思い出すと顔が熱くなる」
ずるいよ慶君……あんなのかっこ良すぎるよ。
私は顔が火照るのを感じて枕に顔を埋めて落ち着かせた。
今となってはあの先輩への恐怖心は一ミリも残っていなかった。
警察の人にも言われてもう二度と私に近づかないと約束した事もあるが、慶君にやられた後の先輩の姿を見たら情けないとしか思えなかったからだ。
それよりも今の私は慶君のカッコよさで心を埋め尽くされている。
「はぁ、結衣って呼び捨てされた時本当にヤバかったな」
慶君があんなに強い何て思ってもみなかった。
喧嘩が強いって言われていたあの先輩をあんなに簡単に倒す何て……
正直に言うと私を体を張って守ってくれた慶君に呼び捨てされた時は心臓が自分でもびっくりする位ドキドキしていた。
その後勢い余ってそのまま呼び捨てで呼んでと言ってしまったが、私自身は慶君を呼び捨てに出来る程心が落ち着いていなかった。
大体今の私じゃ慶君を呼び捨てになんて出来ない。そんな事をしたら恥ずかし過ぎてまともに会話できる気がしない。
「何かあれば助けてくれる……か……」
その言葉を聞いてから私は家に着くまで恥ずかし過ぎて慶君とまともに会話出来なかった。
慶君なら本当にどんな事があっても助けてくれる……何故かそう感じられた。
実際に強い所を見てるしいつも優しいし安心感が凄いし。
「空だったらそんな事言ってくれるのかな……」
私はふと空と慶君を比較してしまったが、空がそんな事を言ってくれるとは思わない。
私が頼めば助けてくれるんだろうけど、空は自分から行動する人じゃないから分かってしまう。
大体空はそう言った事に凄く鈍感で私が困っていても気付かないからね。
そう思った瞬間私の中で何かが変わり自覚した。
私の中では空以外の男子を好きになる事なんて無いと思っていた。
でも今の私は確実に空の事を考える時よりも慶君を考えた時の方がドキドキする……
思えば慶君と居る時間は楽しい時間しかなかった。
私の冗談をめんどくさがらずに相手してくれてなんだかんだ言っても付き合ってくれる。
その上細かい所の気遣いが凄いし安心感がある。
「やっぱりそうなんだね……私」
これはもう認めるしかない。
私にとって慶君は美月や明香里ちゃんとは全く違う感情だと……
空に思っていた感情と全く同じ感情。
空みたいに長年積み重なった訳じゃないけど今日の一件でそれと同等、いやそれ以上なんじゃないかと自覚した。
「私って慶君の事が好きなんだね」
正直に言うと空と比べてもそれ以上に好きな気がする。
私自身気持ちの整理もついていないからはっきりとは言えないがその位好きになってしまったんだと思う。
「明日からちゃんと話せるかな……」
好きって自覚してしまったからか慶君と話すと考えただけで恥ずかしくなる。
「美月と明香里ちゃんに相談してみようかな……」
いやでも私達三人の中では恋愛相談なんてした事はない。
まぁ、対象が同じだったから当たり前なんだけどね。
そんな二人に急に慶君に惚れたなんて言っても混乱されるだけだよね……大体今でも空への気持ちが完全に消えた訳では無い。
「うん。そこら辺の整理がついた上で慶君だけが好きって思えた時に相談しようかな……その方が余計な混乱をうまないしね」
その後数分間無言で目を瞑って考えていた後私は呟いた。
「はぁ、私ってこんなに女々しかったかな……」
早く慶君に会いたい……でも会ってもちゃんと話せる気がしない。
こんな事を思った事は生まれてから一度もない。
「ううん。駄目だ!しっかりしないと!ちゃんといつも通り話そう!」
変に緊張して気まずくなるのが一番嫌だ!
この気持ちを伝えるとしてもまだ先の事だろうけど、今は慶君ともっと仲良くなりたいし一緒にいたい。
そんな事を思っていたらスマホにメッセージが届いた。
『結衣大丈夫だった?心配だから一応連絡したけど……』
慶君から届いたメッセージで私はそれを見た瞬間せっかく落ち着かせた心臓が再び騒ぎ出したのが分かった。
「はは、慶君が心配してくれただけでこんなになっちゃうんだ、私って……」
私はそう思ったが心臓を落ち着かせた後に慶君に連絡を返した。
『大丈夫だよ慶君のおかげでね』
『そっか。良かったよ本当に』
私は無意識のうちにスマホに"家近いんだったら明日一緒に登校しない?"と打ちかけていたが我に返って考えたら流石に急過ぎるなと思いそう送るのはやめた。
大体いつも空と明香里ちゃんと一緒に登校してるしね……
『ねぇ?慶君?これからもよろしくね』
『ん?急にどうした?そんな事当たり前だろ?前から言ってるけど俺には結衣以外に友達いないんだからそれは俺の言葉だぞって事でよろしくな』
ふふふ、私だけか……その言葉を聞くと凄くテンションが上がるが、慶君には楽しく学校生活を送って欲しい。だから私は慶君に友達を作れるように協力して欲しいって言われたら全力で協力しないとね。
『うん。最初の友達なんだから他にも友達出来てもちゃんと相手してよね?』
『当たり前だろ?俺はそんなに薄情じゃないぞ』
『冗談だよ。慶君がそんな人じゃないのは私が一番良く知ってるよ。今日だって助けてくれたしね、それにこれからも助けてくれるんでしょ?』
『勿論そのつもりだぞ。遠慮しないで言ってくれよ』
『頼りにしてるよ慶君♪』
『あぁ、何より元気そうで良かったよ。それじゃあ今日はもう寝るからお休みな』
『うんお休みなさい』
「ふぅー、思ったより大丈夫そうだね」
最初こそ緊張したが話している内に冗談も言えたしドキドキしてるとはいえ落ち着けた。
この調子なら学校で会っても変に気まずくなる事も無さそうだね。
「よし!私も寝よっと」
結局私は慶君の事を考えてしまって寝付くのに一時間かかった。
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