第9話 チャラ男対神道慶
「はぁ、そもそも結衣があんたたちと一緒に行きたいって言う訳ないだろ?」
「は?そんな訳無いだろ。な?結衣ちゃん?」
結衣さんは体を震わせているが俺が掴んでいた肩を強く寄せると少し震えが止まり話し出した。
「私はあなた達とは遊びたくありません……」
「は?……なんかもうめんどくせーな。なぁ?結衣ちゃん俺は中学生の頃とは違うんだぞ?分かってる?」
「はぁ、めんどくさいのはあんたな?これ以上結衣と関わるのやめてくれる?」
俺がチャラ男に向かってそう言うと一気に怒りが湧いたのか凄い勢いで睨まれた。
「お前さっきからうっせーんだよ!いい加減にしねーとぶっ殺すぞ?」
今にも殴りかかって来そうな勢いでそう言って来るチャラ男を見て結衣さんが叫んだ。
「慶君ダメ!その人は高校になってから喧嘩が強いって一気に噂が上がって来た人なの!私の事は良いから逃げて!」
結衣さんは涙目になりながら必死にそう唱えて来た。
高校に入ってから?まぁ、確かに筋肉質で良い体ではあるが……高校生になってから不良になったタイプの奴か?
まぁ、関係ない。前世で師匠に鍛えられた俺が高校生に負ける訳がない。
神道慶の体も前世の俺と比べて鍛え切れては無いが元々のスペックが良いしな。
「ははは、今更逃げれると思うなよ?ビビっても逃がさねーよ」
「逃げる気は無いよ。でもその前に一つ聞いて良いか?」
「あ?なんだよ?」
「もし結衣と一緒に居るのが俺じゃ無くてあんたが言ってる男だったどうするつもりだったんだ?」
「そりゃ、ぼこぼこにして目の前で結衣ちゃんを連れて行こうとしてたんだよ。大体あいつは中学生の頃からうざかったからな。ふはははは」
その言葉を聞いて結衣さんは顔を真っ青にした。
「じゃあ、俺はそいつじゃ無いし結衣の事は諦めてくんない?俺は余り喧嘩したくないからさ」
「は?お前自分の立場分かってんの?てかやっぱりビビってんじゃん」
駄目だコイツ。やっぱり話が通じる様な奴じゃないな。
「それじゃ?どうするんだ?俺は結衣を渡すつもりは一ミリもないぞ?」
「は?どうするって?そりゃこうすんだよ!」
そう言ってチャラ男は拳を振りかぶって俺を殴ろうとしてきた。
高校生の喧嘩だと強いのかも知れないが俺からしたら子供騙し程度にしか思えない。
拳を軽く受け流してからチャラ男の鳩尾にカウンターを決める。
チャラ男は地面に膝を着いて涎を垂らしているが、それを見た残りの二人は焦って飛び掛かって来た。
二人に関しては喧嘩慣れはしてそうだがチャラ男と比べてもお世辞にも強いとは言えない。
俺がそんな二人に一撃を加えると一瞬にして地面に伏せる事になった。
それにしてもどうするか……
このままじゃ証拠も無いし、彼らが不良って事だけじゃ正当防衛の主張も難しい。
俺がそんな事を考えていると後ろから結衣さんに話しかけられた。
「慶君!大丈夫?」
「うん、大丈夫だ」
「慶君って、強いんだね……」
やっぱり、結衣さんの前では喧嘩するべきじゃ無かったか?流石に怖がらせたか……
俺がそう思い微妙な表情をすると結衣さんは慌てて話し出した。
「大丈夫だよ!慶君の事を怖がってるとかじゃないからね?……寧ろ凄く……」
最後の言葉はもごもごしていて良く聞き取れなかったが、どうやら怖がられた心配は無さそうで良かった。
「それにしても、コイツらどうするかな?この状況だと自己防衛の主張も厳しそうだし……」
「それは大丈夫かも」
「なんでだ?」
「実は私、この人達と会った時から嫌な予感がしていたから手に持っていたスマホで録画してたの」
マジか……確かに震えながらもずっと両手でスマホを胸に抱えているなとは思ったがそんな事をしてたのか。
「なら、取り敢えず警察に連絡しようか」
「うん」
――結衣さんが警察に連絡をしている時俺はチャラ男に近づいた。
「おい!起きろ!」
「うぐぅ……ひぇ!ごめんなさい!」
なんだコイツ……本当に喧嘩してきたのか?一回やられただけで怯え過ぎだろ……まぁ高校生の不良だしこんなもんか。
二度と結衣さんに近づかない様に脅して置こうとしたが……その必要すらなさそうだな。
「お前さ?次はないからな。もし次結衣に近づいたらこの程度じゃ済まさないからな?」
「は……はぃ。二度と近づきません……」
俺はそれだけ聞いて酷く震えているチャラ男を再び気絶させた。
この世界では喧嘩なんてするつもり無かったんだけどな。
まぁ、師匠の教えもあるし、何より結衣さんを見捨てるなんて絶対に出来ないからな。
ていうかこのイベントがゲームであったとして高堂はどうやって解決したんだ?あいつらには勝てないだろうし……
中学生の頃からの因縁だったから俺のせいで起きたイベントとも思いずらいし……
まぁ、鬱展開のないエロゲだし大丈夫だったんだろうけどさ、俺が今考えても答えなんか出ないか。
◇
――警察が来て証拠の映像を見せると警察は三人を連れて署に向かい俺達はその場で軽く事情聴取をされて解放された。
「じゃあ、帰るか」
「う、うん……」
――帰りの途中あのチャラ男との関係を聞いたのだがこんな感じだった。
結衣さんが中学二年生の頃にあのチャラ男はチャラ男じゃなくて普通の先輩で、結衣さんに何回も何回もアタックしてきたらしい。
そんな先輩の告白を結衣さんは断り続けて、高堂にももう止めるように出て来てもらったらしい。
その時のチャラ男は喧嘩とかする様な人じゃなかったから高堂が出て来てあっさりと引いたとの事だった。
そしてその先輩が高校生になり結衣さんの元に噂が回って来たらしい。それもあの先輩がチャラ男となり喧嘩をしまくってるとのうわさだ。
なぜそうなったか分からないが、結衣さんは言い寄って来られた事もありちょっと心配だったらしい。
その噂を聞いたのが一年前で既に頭から離れていた時の事が今日だったらしい。
「まぁ、あの人が結衣さんの前に現れる事はもう無いから安心していいよ。警察の人もそう言ってたしな」
「うん……ねぇ慶君……」
「どうした?」
「さっき私の事さ……呼び捨てにしてくれたよね?」
「そうだな……まぁ、彼氏の振りするためにな」
「振りとかじゃなくてさ……これからは私の事を呼び捨てで呼んで欲しいの……」
俯いてそう言う結衣さんの顔は良く見えないが、暗くなって来た中でも良く分かる位に赤くなっていた。
それも先程怯えていたとは思えない程に……
「えっと?どうしたんだ?」
「どうもしてない……ただ結衣って呼んで欲しいの……」
「絶対か?」
「うん……」
「えっとじゃあ、これからは結衣って呼ぶよ」
「……うん」
――その後暫く二人とも無言が続いたが次第に結衣が話し出した。
「本当にありがとう。慶君……慶君が居なかったらどうなってた事か……」
「まぁ、大丈夫だ。何かあればこれからも助けるからさ」
「……ありがとう」
そう言う結衣の顔は真っ赤になっていた。
ていうかずっと思ってたが距離が近すぎる。
結衣は歩いてるのに手が触れ合う程の距離感を維持しようとしてくるし、その上なんかもじもじしてるし……
俺は別に鈍感じゃないから分かるが……これってまさか……
もしかしたら今回のチャラ男イベントは結衣との距離を一気に詰める為のイベントだったのか?
明らかにチャラ男が来る前と今では結衣の様子が全く違う。
いやまぁ、結衣に好かれるのは凄く嬉しいんだが……こんな事があるとは思いもしてなかったからどうするべきか分からないな……
まぁ、俺の勘違いって事もないとは言い切れないから、取り敢えずは変わらずに接して行こうか……今後の事なんか考えてもなるようにしかならないしな。
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