第8話 勉強会とハプニング
「どうしたんだろう?ちょっと結衣さんの様子が変だったけど」
先ほど結衣さんから勉強会のお誘い電話があった後、俺は考えていた。
「勢いに押されて勉強を教えてもらう事になっちゃったけど大丈夫だったかな?」
まぁ、結衣さんも言ってたけど確かにやましい事は全くないし大丈夫か。
友達として勉強を教えてもらうだけだしな。
実際俺からしても高校二年生の勉強は忘れてる所も多かったしいちいちネットで調べてやるってのもめんどくさいって思ってたから助かるしな。
「まっ、寝るか」
◇
――次の人放課後に俺と結衣さんで図書室で勉強をしていた。
「だからここはこしてこうするの」
俺は結衣さんに数学を教えて貰っていた。
「あぁ!なるどほ!凄い分かりやすいわ」
「当然!私に任せなさい!」
凄く自信気に言っているが、実際に滅茶苦茶説明が上手くて本当に凄いと思う。
「結衣さんって本当に頭良かったんだな」
「信じてなかったの?酷いなー」
「ごめんごめん。正直に言うと宮本さんは頭が良いのは納得だけど結衣さんが頭良いのは意外だったわ」
「私だって頑張ってるんだからね!」
「そうだな。めっちゃ凄いよ本当に」
「あ、ありがとう……」
俺がそう言うと結衣さんは照れくさそうにそう返事をした。
「結構やったし少し休憩しよっか」
「うん、そうだね」
「てか本当にありがとな。勉強を教えてくれて」
「その位全然当たり前だよ。慶君には相談に乗ってもらってるしね」
「大した事言えてるとは思えないけどな」
「ううん、そんな事ないよ。私からしたら凄く助かってるからね」
「そっか。なら良かった」
自分自身結衣さんの助けになってるのかは良く分からないけど、そう言ってくれると嬉しい気分になる。
「はぁー、空達も慶君みたいにちゃんと勉強してくれたらいいんだけどな」
「高堂達がどうかしたのか?」
「いや、空達ったら勉強会なのに勉強する時間よりゲームしたり駄弁ってる時間が凄く多いからさ。前回のテスト赤点もあったのにさ」
「高堂と酒井両方とも赤点あったのか?」
「うん、そうなの」
意外……とは言わないけど赤点がある程とまでは思わなかったな。
でも結衣さんに教えて貰ってるなら赤点回避位だったら簡単だと思うけど……って思ったけど勉強自体そこまで本気でやってなさそうな感じだよなこの話を聞く限りだと。
「そうなのか。俺なら結衣さんが勉強を教えてくれるんだったらいつも以上に勉強を頑張れると思うけどな。今日凄く楽しいと思ったし教え方も凄い上手だしな」
「えっ?そっ、そっか。それだったら私も嬉しいよ……」
その後少しだけ無言が続いたが結衣さんが話し出した。
「それにしても慶君って覚えが凄く良いね」
「そうか?」
まぁ、忘れてるだけであって一度勉強した事はあるのでそのおかげが大きいだろう。
「うん、教えてて直ぐ理解してくれるから私も教えてて楽しいよ」
「いやいや、さっきも言ったけど結衣さんの教え方が凄い分かりやすいからだぞ?」
「そう?教えるって点では美月の方が上手だと思うけどね」
「え?まじで?」
「うんうん、私も教えてる所を聞いてた事あるけど凄い分かりやすくてびっくりしたもん。てゆうか美月は両親の影響で教師になるのが夢だからそこら辺も頑張ってるんだって」
宮本さんにそんな夢があったのか……滅茶苦茶イメージ出来るわ。
絶対に良い教師になれる気がする。
「教師か……なんか似合ってるな」
「ね!私もそう思うよ。美月って凄く良い子だから絶対に生徒から好かれるよね」
結衣さんは美月さんの事を自分の事の様に凄い笑顔で話していている。
「結衣さんって本当に宮本さんの事が好きなんだね」
「うん!美月と明香里ちゃんは特に大好きな二人だよ!家族にも負けない位にね」
俺はそんな満面な笑みで笑う結衣さんの顔を見て本当に二人が好きなんだなって思い、なんかそう言う関係っていいなと素直に感じた。
「そっか。結衣さんの顔を見てると心からそう思ってるんだって伝わって来るよ、なんか良いねそこまで言える関係って」
「慶君は居なかったの?そんな感じの親友は?」
親友か……前世の俺は友達が多い方じゃなかったがいない訳ではなかった。
元の世界の俺は事故で死んだ訳だからもう戻れる事は無いが、アイツら元気にしてるかな……
それに師匠には育てて貰った恩返しすら余り出来てなかったしな。
まぁ、もう切り替えてるから未練自体はそこまでないけど……
「えっと、もしかしたら聞いちゃまずかったかな?」
俺がそんな事を思い出していたら結衣さんは気まずそうにそう聞いて来た。
「ううん。そんな事は無いけどちょっと昔を思い出してただけ」
「……そうなんだね」
「まぁ、そろそろ勉強を再開しようぜ」
「そうね。そうしよっか」
俺と結衣さんは少し気まずい空気になったが、勉強を始めると直ぐにそんな空気はなくなり有意義な勉強時間となった。
◇
――勉強を長い時間していたのでそろそろ帰ろうという事になり俺と結衣さんは一緒に下校していた。
俺は前と同じ様に一緒に帰るのはどうかとも思い聞いてみたのだが、結衣さん的にはそんな事は気にしなくて良いとの事だった。
正直結衣さんがどう思っているのかは俺にも分からないが、結衣さん自身が大丈夫って言っているならそれ以上に俺が否定するのもおかしな話だと思ったので取りあえず俺は高堂の事を気にするのを止めた。
大体放課後に一緒に勉強してる時点でそんな事を気にするのもおかしな話だしね。
「何度も言うけど今日はありがとな。一人でするのとは段違いに効率が良かったよ」
「友達だからね。言ってくれれば何時でも教えるよ」
「助かるよ。また今度お願いするよ」
「うん!」
しっかし改めて思うがゲームの中で見ていた子と一緒に居るってなんか感慨深い物があるな……
少し前までの俺からしたらこの状況になるとは思いもしなかったよなマジで。
――その後軽く雑談しながら帰っていると、前方から三人組のいかにもチャラそうな人たちが近づいて来た。
「お!結衣ちゃんじゃん♪久しぶりだね」
「はっ……はい、そうですね……」
いかにも軽薄そうに結衣さんに話しかけているが、当の結衣さんは手が震えている。
何だこれ?この世界は平和なエロゲの世界だったはずだよな?
いや、もしかしたらこのイベントはあったのかも知れないが絶対に解決出来るようになっていただけって可能性もあるな。
本来なら今日一緒に居るのが俺じゃ無かったはずだしな。
まぁ、今考えた所で分かる訳ないか……てかこいつらは結衣さんとどんな関係なんだ?
「結衣ちゃん?今日はあのダサい男と一緒じゃないんだね?もしかしてその男が彼氏だったりする?」
「いや、そんな事は無いです……今日はたまたまで……慶……神道君とは友達です」
「ははは!まぁ、そうだよな。俺達があんなに誘ったのに断った位だからな、本命はやっぱりあいつだよな」
リーダーっぽい奴がそう言って笑うと他二人も一緒に笑い出した。
話を聞いてる感じだとこいつらは過去に結衣さんに言い寄って振られたのだろうが、結衣さんの震え方からしてろくな奴らじゃないんだろうな。
ていうか滅茶苦茶不愉快な奴らだな……結衣さんが神道君と呼んだのは俺を巻き込まない為なのだろう。
「いやー、でも結衣ちゃんってやっぱり可愛いね。俺達と遊ぼうよ。ね?」
「それは……嫌です……」
「はぁ?彼氏がいる訳でもないんでしょ?だったらいいじゃん。中学の頃は諦めたけどやっぱり諦めきれないからさ」
ニヤニヤしてそう言いながら結衣さんに近づいて来た。
はぁ、余り喧嘩とかはしたくないんだけどな、まぁ、仕方ないか。こいつらは明らかに話し合える様な奴らには見えないしな。
それにここで見捨てるなんて事したらもう会えない師匠に顔向けできないしな。
「なぁ?結衣?良く分からないけど何で俺と付き合ってるってはっきり言わないんだ?」
「え?」
俺はそう言いながら結衣さんの肩を抱いた。
「は?お前と付き合ってる?ッチ!まぁどうでもいいや。彼氏がいても遊ぶ位いいだろ?もしかして束縛するタイプだったりする?」
チャラ男は最初こそイライラした声色で睨みながらそう圧を掛けて来たのだが、次第に馬鹿にするようにそう言って来た。
前世でこんな感じの奴を相手にするのは慣れていたがやっぱりイライラしてくるなこういう奴は。
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