第5話 高堂明香里がナンパされていた

「んー、やっぱり休日って暇だな……」


 友達が結衣さんしかいない俺は特に遊ぶ人もいないから暇なのだ……俺は空が暗くなって来た時間帯にそんな事を思っていた。

 

「まぁ、家にいてもする事ないし少し散歩でも行くか」


 ――特に目的もなく長い時間散歩していた時、一人の女の子がナンパされている場面を目にした。


「ねぇ、良いでしょ?少し遊ぼうよ」

「……」

「聞いてる?無言は肯定って捉えるけどいいよね?」

「……」

「オッケーって事ね、じゃあ行こうか」


 あれは……明らかに高堂明香里だよな?

 男子には冷たい性格ってのは分かってるがナンパ野郎の事を完全に無視しちゃってるよ……

 でもそれが逆効果になってるな、ナンパ野郎の顔からイライラしてるの事が伝わってくるよ。


 明香里がナンパ野郎に腕を掴まれそうになっていたので俺は流石に助ける事にした。


「あのー?俺の彼女に何か用ですか?」


 すまん、今は彼女って言うの許してくれ。

 後で怒ってもいいからさ……


「は?何?彼氏?」

「そうですけど」

「チッ!彼氏持ちなら早く言えよクソ女が……」


 そう吐き捨ててナンパ野郎共は何処かに行った。

 俺がナンパ野郎から明香里に目を戻したらじーっとこちらを見ていた。


「えっと……」

「あなたも私をナンパする気?」

「するように見えるか?」

「……見えない……助けてくれてありがとうございます……鬱陶しかったので助かりました」

「あぁ、気を付けろよ?」

「あなたの名前は?」


 明香里の方から男子に名前を聞くなんてどうなってんだ……


「神道慶だ」

「そう、やっぱりあなたがそうなんですね」

「ん?どういう意味だ?」

「別に、ただ結衣さんが面白い子と友達になったって言ってたから気になっただけです……」


 結衣さん……そんな事を話していたのか。


「そうか、それで普段男子と話そうともしない高堂妹が名前を聞いて来たのか」

「私をなんだと思ってるんですか……助けてくれたらお礼くらいしますよ……てかその高堂妹はどうなんですか?おかしくないですか?」

「ん?だって高堂って呼ぶと兄の方と紛らわしいだろ?」

「なら兄さんの方を名前で呼べばいいじゃないですか……」

「いや、話した事すら無いぞ?だからそれは無理だ」

「はぁ、そう言えば結衣さんがぼっち君って言ってましたね……」


 待て……結衣さんはこの子に何を話してるんだよ……

 ぼっち君は不評被害……じゃないな、事実だわ……


「そう、だから友達のいない俺には無理」

「開き直らないでくださいよ……こっちが申し訳なくなるじゃないですか……」

「気にするなよ」

「はぁ、なんか調子狂いますね……結衣さんが気に入る訳だ」


 良く分からんけど、結衣さんに気に入られてるのか俺って?


「ていうか高堂妹はこんな時間になにしてんだ?」

「塾の帰りですよ……ていうかその高堂妹は止めてくださいって」

「じゃぁ、なんて呼ぶんだよ?」

「結衣さんが認めてるならまぁ、明香里でいいですよ……仕方ないですから……」

「そうか?じゃあ明香里の事を家まで送って行った方が良いか?」

「大丈夫です。子供扱いしてますよね?」

「いやいや、ただ心配だっただけだよ、さっきもナンパされてたしな」

「そうですか……まぁ、良いです、家までそれ程遠くないので」

「てか、明香里って思ったより話すんだな」

「それは人に次第ですよ……それでは失礼します」

「あぁ、気を付けて早く帰ろよ」

「分かってますよ……」


 そう言って明香里は帰って行った。

 

「んー俺も帰るか……」



 ――俺が寝ようとしていたら電話がかかって来た。


『どうした?結衣さん』

『慶君ったら私の次は明香里ちゃんなのー?』


 結衣は明らかに揶揄ってそう言って来た。

 絶対にニヤニヤしてるなコレ……声で分かる様になって来たよ。

 てか情報早くないか?


『そう思うか?』

『うん』

『な訳あるかい……』

『ふふ、冗談よ、それより明香里ちゃんとまともに話せるなんてやっぱり面白いよ慶君は』

『まともだったかは知らないが、ただ助けたからだろ……てかそれ以前に結衣が変な事吹き込んだんだろ……』

『ははは、それがきっかけだとしても明香里ちゃん的には悪い印象じゃなかったよ』

『そうなのか?てか結衣さん達はなんでそんなに情報を交換してるんだよ』

『私達三人はこういう面白い事とか変わった事があれば共有する事にしてるんだよ』

『俺と話した事を全て共有するって事は無いよな……』

『え?するよ?勿論全部ではないけど……問題あったりする?』


 いや、まぁ、問題は無いけどちょっと恥ずかしいだろ。

 

『まぁ、いいけど……って三人って事は宮本さんにも話してるのか?』

『当たり前でしょ?』

『それって傍から聞いたら完全変人じゃないか?』

『そんな事ないよ?』

『そうか?』

『うん』


 そんな事ないと思うがまぁ、いいか。


『もしかして俺を揶揄う為にだけ電話してきたのか?』

『そうだよ?』

『暇人か?』

『酷い……』

『はいはい、そろそろ寝るぞ』

『折角唯一の友達が電話してあげたのに冷たいなー』

『唯一を強調するな……まぁ、事実ですけどね』

『ふふふ、冗談だよ、お休みなさい』

『お休み』


「ふわぁーねむ……」

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