第4話 不思議な男 遠坂結衣(side)
★遠坂結衣(side)
「はぁー、また約束を忘れられたな……」
それだけでも億劫なのに鍵まで忘れるなんて……
雨まで降って来るし……
「なぁ、風邪ひくぞ?何してるんだ?」
私が俯いているとそんな声が聞こえて来た。
声の方を見ると転校生のクラスメイトだった。
「神道君?」
「え?結衣……さん?」
私だと分かってて話しかけたんじゃないんだ。
「えっと、何してるの?風邪ひくって」
神道君は自分が濡れてるのに傘を私の上に差してくれた。
私は優しいな思った。
「ちょっとね、嫌な事があってね……」
「そっか、でも明日も学校あるしさ、帰って早くお風呂にでも入った方が良いよ?」
いや、まぁ、正論だけどさ……そこは話し聞いてくれる所じゃ無いのかな?
話した事無いとしてもクラスメイトの女の子だよ……
そう思い私はじーっと彼をみて言った。
「そこは何があったの?とかじゃないの?」
「思ったより大丈夫そうじゃん……じゃあ何があったの?」
「大した事じゃないけどね、知り合いが私との約束を忘れて友達と遊びに行っちゃっただけ」
私は何があったのかをそれとなく伝えた。
「それで落ち込んでたのか?」
「落ち込んでは無いよ……別に今日が初めてじゃないし……」
「じゃあ、なんで傘も差さずにこんな所に居るんだよ」
「それは今日鍵を家から持って出るのを忘れて親が帰って来るまで入れなかったの、いつもはその知り合いの家にお邪魔するんだけど今日は行きづらくてね」
「そうか、親はいつ帰って来るんだ?」
「そこ」
私が自分の家の方を見ると丁度お母さんが帰って来ていたのでそちらの方向に指を指した。
「アレが私の家」
「って事はあの人が母親って事か?」
「そう言う事」
「ふーん、じゃあ早く帰りなよ」
「そうだね、ありがとう」
「別に俺は何もしてないぞ」
「さっき落ち込んで無いって言ったけど少しブルーな気分だったからさ……でも元気出たよ」
始めた話したけど何故か神道君には気を遣わないで話せている。
恐らく神道君も気を遣わないで話してくれてるからだろう……今までにないタイプの人だな。
「そうか……」
「早くお風呂入りたいなー」
「なら早く帰えればいいんじゃないかな……」
「ちょっと私に対して冷たくないかな?」
でもこのお互いに気を遣わない感じが凄く心地良く感じる。
「そんなつもりは無いけどな」
「そうかな?」
「別に結衣さんに冷たくする理由なんてないでしょ」
そう言えば何で結衣呼びなのかな?
普段誰とも話して無いからコミュニケーションが苦手なのかと思ったけど……もしかして結構女性慣れしてる?
「そう言えば何で結衣呼びなの?」
「あー、確かに無意識にそう呼んでたわ……遠坂さんって呼ぶよ」
ちょっと腑に落ちないけどまぁ、良いか……
「別にやめろとは言って無いけど……気になっただけだし変える必要も無いよ」
「そっか、ならこれからも結衣さんで呼ぶよ」
「うん、それじゃあ私は帰るから、ばいばい慶君」
話していて楽だし、少し悩んだが私も慶君って呼ぶことにした。
「あぁ、風邪ひくなよ」
「大丈夫大丈夫」
私はそう言って手を振って帰った。
――私は翌日に慶君とまた話した。
いつ話してもやっぱり落ち着く。
普段人に気を遣い続けて来た私からしたら、男性で気を遣わないなんて家族を除いたら初めてだ。
席替えで三人とは離れちゃって悲しかったけど、慶君が隣だったので嬉しくなった。
気付いたら私は慶君に弱音を吐いていた。
慶君は優しく聞いてくれて、話くらい聞いてくれるって言ってくれた。
知り合ってから間もないのにやっぱり優しい。
慶君と話すと気が楽になるんだよな……
私はそんな慶君に空の事を相談することにした。
◇
――私達は放課後にカフェに来た。
私はカフェに着くと早速相談する事にした。
「はっきり言って慶君から見て私達三人を女性としてどう思う?」
「えっと、それは良く一緒に居る女子三人だよな?」
「うん」
「んーそうだな、話した事無いし性格は知らないけど、見た目で言うと三人共相当レベル高いと思うぞ、それこそアイドルにも勝るほどにな」
だよね……やっぱりあの二人はレベルが違うよね……
って……え?三人共って私もって事?
「私も同じくらいって事?」
「あぁ」
「ほんとにそう思う?」
本当かな?
私自身あの二人と同じ位自分の見た目たが良いとは思えない……
そんな事を誰かに聞く事も出来た事無かったから少し信じられない。
「勿論……そんな嘘つく訳無いだろ」
私が疑っていると慶君は、何でそんなに疑うんだよ?というかのような不思議そうな表情でそう言った。
そんな慶君を見て本当にそう思ってるんだと感じられた。
「そっか、そうなんだね……」
私は少し嬉しくなってそう言ってから話し続けた。
「私ね、美月と明香里ちゃんが可愛すぎて、どんどん自信を無くしてたんだ……かといって私と二人を比べてどっちが可愛い?とか聞けないし、空も二人と話す時凄く嬉しそうだし……」
「考え過ぎだぞ?もっと気楽に接すれば良いじゃん」
考え過ぎか……確かにそうかも知れない。
でも気楽に接したくてもどうしても不安に思う事が多い。
だって空の周りには空の事が好きな可愛すぎる子が二人もいるんだから……不安にならない訳無いよ……
その上二人は私の親友だ、嫉妬は勿論するけど大好きだ。
何でも話し合える仲だけどやっぱり空の事になると深い話は絶対に出来ない。
だから簡単な話じゃないんだよね……
でも慶君に話して良かった……少し自信もついたしね。
「それが出来たら苦労しないって、まぁ、でもありがとう……ちょっと自信ついたよ」
「なら良かったよ」
私は少し暗くなっていた空気を変える為に話し出した。
「所で、慶君は気になる人とか居ないの?」
「いる訳無いだろ、ほとんど誰とも話してないんだからさ」
気になる人すらいないなんて珍しい……慶君って結構モテそうだけど。
「話した事なくても気になるなんて事は別にあってもおかしく無いでしょ」
「まぁ、とりあえず居ないんだよ」
でも慶君と話してる感じ確かに遊んでそうでは無いし……
本当にそうなのかな?
「ふーん、そうなんだ……まぁ、確かに慶君は結構堅実そうだしね」
「ん?別にそんな事も無いと思うぞ?」
「そうなの?じゃあ彼女いた事ある?」
「いや、無いな」
悔しそうに言う慶君の表情が少し可愛く見えてつい揶揄いたくなった。
「ほらね……あっ、もしかして慶君って告白された事無いの?……」
「告白された事だったら何回もあるよ……でも全部断ってたんだ、気持ちが無い人と付き合う訳にも行かないしな」
本当に堅実じゃん……
男子だったら告白されたらとりあえず付き合ってみる人も少なく無いのに……
「じゃあやっぱり堅実じゃない、男子だったらとりあえず付き合ってみるとか珍しく無いんだよ」
「まぁ、そう言う人もいるだろうな……まぁ、でもそれでも良いから付き合いたいと思う女子も居るだろうしな……逆も然りだけど」
「たしかにね……まぁ、人それぞれか」
「そう言う事だな」
私は話し始めて2.3日の人と何を話しているんだろうと思い慶君の方を見たら目が合った。
私達はそれでお互いに笑い合っていた。
やっぱり慶君と話すのは楽しいし、気分が楽になる……
本当に不思議な人だな……まさかたった数日の付き合いでこんな気持ちになるなんてね……
「やっぱり慶君と話すの楽しいよ、全く気を遣わなくて良いし」
「それはどうも、俺も楽しいしお互い様だな」
「これからもこうして話す時間貰っても良い?」
私は何故か少し照れくさくなったので俯いてそう聞いた。
「うん、勿論いいよ」
「そっか、ありがとう!それじゃあ今日は結構話したし、そろそろ帰ろ!」
「そうだな」
そうして私達は帰ることにした。
「家まで送って行こうか?」
「もしかして、私を狙ってる?」
私はいつも通り揶揄いつつ返事した。
「違うって、少し暗いし聞いたんだよ」
「ふふ、冗談だよ、じゃあ送って貰おうかな」
「あっ、でも誰かに見られたらマズいかもな」
「そう言われたら確かに……」
私はそう言われ確かにと思った。
男子と二人っきりだと流石にマズいか?
でも、美月だって空が好きだけど、哉太君と二人で帰ってる時もあるし……
ていうか一緒にカフェに居たんだから今更って感じもするけど。
「んじゃ、距離をとって付いて行くよ。俺の家も結衣さんの家から近いしね」
「え?そうなの?」
「うん、あの夜はコンビニ弁当を買った帰りだったし、結衣さんの家から徒歩五分かからないよ」
そうだったんだ……
なら別に一緒に帰っても何とでもなるんじゃないかな?
「んーじゃあ良いんじゃない?誰かに見つかっても、たまたま会って家が近いから一緒に帰ってたって言えば……距離をとってまで送って貰うのも申し訳ないし」
「勘違いされて困るのは結衣さんだよ……男子って以外と嫉妬深いよ」
空は嫉妬するのかな?私が男子と話してても別に何も言って来ないけど?
それに哉太はいつも美月や明香里ちゃんとイチャイチャしてるし……
「そうなの?でも空って私に嫉妬するのかな?大体私が嫉妬してる側だし……」
「でも一応な……帰り道同じだし申し訳ないとか思わなくて良いから」
まぁ、恋の相談を聞いてもらってるんだし……慶君の言う事はちゃんと聞いた方がいいよね。
「そうね、慶君がそう言うならそうするね」
「うん」
そうして私達は家に帰った。
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