第3話 モブの俺が遠坂結衣の相談相手になった。
――次の日俺はいつも通り登校して席に着いていた。
「よーし、それじゃあそろそろ席替えの時期だな」
先生が教室に入って来て早々にそう言って来た。
クラスメイト達は喜んでいる者も居れば今の席を惜しんでいる者もいる。
高堂や結衣さん達は席が四人で近いから、少し残念そうにしている。
「じゃぁ、名簿順でくじを引きに来てくれ」
次々とクラスメイト達がくじを引きに行った。
やっぱり一番左後ろで窓際席が良いよな……落ち着くしゆったり出来るからな。
そして俺はくじを引いた――
「よし!それじゃあ、引いたくじの番号に合う席にそれぞれ移動してくれ」
先生の言葉を聞いてクラスメイト達は一斉に動き出した。
俺も移動したのだが、結果としてなんと希望していた席になる事が出来た……が少し予想外な事が起きた。
「よろしくね!慶君!」
「あ、あぁ、よろしく」
そう、結衣さんが隣の席にきてしまったのだ。
「もっと嬉しそうにしてよ、折角隣の席になったんだから」
結衣さんはジト目でそう言って来た。
「いやいや、ちゃんと嬉しいぞ?友達は結衣さんしかいないんだしな」
「ふーん、だったらいいけどね……」
「それより結衣さんは大丈夫なのか?一人だけ離れちゃってるけど」
「それはしょうがないよ、ちょっと悲しいけど、まぁ、そこまで気にしてないよ」
「そっか、なら良かったよ」
「うん……」
少し無言が続いた後に結衣さんは話し出した。
「私ね……空達と一緒に居ると楽しいけど少し辛いの……」
「こんな所でそんな話をしても良いのか?」
「大丈夫だよ、こんな小さな声だと皆が騒いでる教室の中じゃ誰にも聞かれて無いよ」
まぁ、確かにそうか。
席替えをしてクラスメイト達は凄くはしゃいでるしな。
隣のクラスが体育じゃなくて教室にいたら間違いなく迷惑になってただろうな。
「それもそうだな、それでどうしたんだ?」
「うん……慶君は私達と一緒にいる美月と明香里ちゃんの事どう思う?」
「ん?どういう意味だ?」
「二人が誰を好きなのか分かる?」
「えっと、そうだな、結衣さんと同じだろ」
「そうなんだよね……だから楽しいけど不安……ずっとそんな想いなんだよね……」
色々苦労してんだな……ずっと笑顔だと思ってたけど。
「大変なんだな、結衣さんも」
「うん……でもこうして慶君に話すと少し気が楽になるんだね……今まではそんな相手居なかったから」
「て言っても話し始めて間もないぞ?」
「だから不思議だよね、私も良く分からないけど、慶君が相手だとそうなの」
何でかは俺も良く分からないけど、まぁ、それで心に余裕が出来るなら悪い話でも無いよな。
「まぁ、昨日も言ったけど話くらいいつでも聞くよ」
「ふーん、じゃあ今日の放課後付き合ってよ」
「放課後?別に用事は無いが何するんだ?」
「もっとちゃんと話してみたいだけ、それに相談したい事もあるしね」
「まぁ、良いけど」
「それじゃあ、よろしくね」
「あぁ」
そうして俺は放課後に結衣さんに付き合う事になった。
◇
――放課後になり俺達はカフェで話していた。
「はっきり言って慶君から見て私達三人を女性としてどう思う?」
「えっと、それは良く一緒に居る女子三人だよな?」
「うん」
「んーそうだな、話した事無いし性格は知らないけど、見た目で言うと三人共相当レベル高いと思うぞ、それこそアイドルにも勝るほどにな」
「私も同じくらい?」
「あぁ」
「ほんとにそう思う?」
結衣さんが怪訝そうな表情でそう聞いて来た。
なんでそんなに疑うのか?
そんな嘘ついてなんの意味がないのにな。
「勿論……そんな嘘つく訳無いだろ」
「そっか、そうなんだね……」
俺が真剣な顔でそう言う結衣さんは少し嬉しそうな表になった。
「私ね、美月と明香里ちゃんが可愛すぎて、どんどん自信を無くしてたんだ……かといって私と二人を比べてどっちが可愛い?とか聞けないし、空も二人と話す時凄く嬉しそうだし……」
「考え過ぎだぞ?もっと気楽に接すれば良いじゃん」
俺がそう言うと結衣さんは何かを少し考えてから口を開いた。
「それが出来たら苦労しないって、まぁ、でもありがとう……ちょっと自信ついたよ」
「そうか……なら良かったよ」
その後少し静かな時間が続いた後に結衣さんがニヤニヤして言った。
「所で、慶君は気になる人とか居ないの?」
「いる訳無いだろ、ほとんど誰とも話してないんだからさ」
「話した事なくても気になるなんて事は別にあってもおかしく無いでしょ」
クラスメイトの名前は一応大体覚えているけど、ちゃんと見ていたのはヒロインの三人と高堂と酒井だけだったしな。
だから気になる人とかそんな事を考えたことはなかったな。
「まぁ、とりあえず居ないんだよ」
「ふーん、そうなんだ……まぁ、確かに慶君は結構堅実そうだしね」
「ん?別にそんな事も無いと思うぞ?」
「そうなの?じゃあ彼女いた事ある?」
……悔しいが無いな……
「いや、無いな」
「ほらね……あっ、もしかして慶君って告白された事無いの?……」
そんな可哀そうな人を見る目で見るのやめろよ。
確かに前世では無かったが、この体だと何回か告白されてたよ……まぁ全部断ってるけど……
ん?それってつまり俺が転生する前だから俺自身は告白された事無いな……
いやでも今は俺が神道慶だ、告白された事あるっていっても良いよな。
何となく無いって言うのも馬鹿にされそうで嫌だし……
「告白された事だったら何回もあるよ……でも全部断ってたんだ、気持ちが無い人と付き合う訳にも行かないしな」
「じゃあやっぱり堅実じゃない、男子だったらとりあえず付き合ってみるとか珍しく無いんだよ」
「まぁ、そう言う人もいるだろうな……それでも良いから付き合いたいと思う女子も居るだろうしな……逆も然りだけど」
「たしかにね……まぁ、人それぞれか」
「そう言う事だな」
そう言って目が合った俺達は二人でクスッと笑った。
「やっぱり慶君と話すの楽しいよ、全く気を遣わなくて良いし」
「それはどうも、俺も楽しいしお互い様だな」
「これからもこうして話す時間貰っても良い?」
結衣さんは少し俯いてそう聞いて来た。
「うん、勿論いいよ」
「そっか、ありがとう!それじゃあ今日は結構話したし、そろそろ帰ろ!」
「そうだな」
そうして俺と結衣さんはカフェを後にした。
「家まで送って行こうか?」
「もしかして、私を狙ってる?」
俺がそう聞くと結衣さんはニヤニヤしてそう返して来た。
「違うって、少し暗いし聞いたんだよ」
「ふふ、冗談だよ、じゃあ送って貰おうかな」
「あっ、でも誰かに見られたらマズいかもな」
「そう言われたら確かに……」
「んじゃ、距離をとって付いて行くよ。俺の家も結衣さんの家から近いしね」
「え?そうなの?」
「うん、あの夜はコンビニ弁当を買った帰りだったし、結衣さんの家から徒歩五分かからないよ」
「んーじゃあ良いんじゃない?誰かに見つかっても、たまたま会って家が近いから一緒に帰ってたって言えば……距離をとってまで送って貰うのも申し訳ないし」
んー、まぁ、一応な。
てか今思ったら放課後一緒にカフェに居る事自体危ないが、今更だなそれは。
「勘違いされて困るのは結衣さんだよ……男子って意外と嫉妬深いよ」
「そうなの?でも空って私に嫉妬するのかな?大体私が嫉妬してる側だし……」
そう言われたらそうだな……
美月さんとか明香里ともイチャイチャしてるしな……
それに何より鈍感ですしね。
「でも一応な……帰り道が同じだし申し訳ないとか思わなくて良いから」
「そうね、慶君がそう言うならそうするね」
「うん」
そうして俺は結衣さんを家に送ってから家に帰った。
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