第2話 桜庭
俺は日本一幸運な高校生だ。
なぜそう言えるかは、俺の隣の席に日本一可愛い女の子が座っているからという理由に他ならない。
いやあ、本当に良い席になれたものだ。
俺は今、授業中にもかかわらずそんなことを考えている。ちゃんと授業受けろというツッコミはなしだ。
こっそり右隣の席を一瞥する。神崎さん発見。
黒板を見てノートに書き写しているだけでも映画のワンシーンになりそうなほど映えている。
やはり何度見ても可愛い。
こんなの授業に集中できるわけがない。
最初に授業を受けた日、つまり始業式の次の日から今日で1週間以上経過している。
毎朝教室に入った際挨拶だけはしているものの、いまだに慣れないものだ。心臓の鼓動が休まらない。まあ、休まれると困るんだけど。
再度隣を見る。あ、目が合っちゃった。
神崎さんは微笑みながら俺に会釈する。
俺も同じように軽く頭を下げた。
神崎さんは俺に向かってノートを指さした。
ん……どういうことだ?
よくノートを見てみると、そこには「さっきからこっち見過ぎ!」という文言が。
ありゃ。バレてましたか。
いかん、ここで攻め過ぎて嫌われたら最悪だ。
俺は今度は申し訳なさそうに頭を下げ、神崎さんから目を逸らした。
そんな感じでチラチラ隣を見て時間を潰し、あっという間に放課後になる。
HRが終わるとすぐに、神崎さんはカバンを持ってすぐに教室を出て行ってしまった。さよならの挨拶をしたかったのだが、仕方がない。
神崎さんのいない教室に用はないので、俺も後を追うように学校を出た。
帰りに本屋でも寄るか……
―――俺は今、学校の最寄駅の近くにある本屋に来ている。
お、『省エネ高校生は異世界でもだらりと暮らしたい。』の新刊がある。
やっぱりラノベは最高だ。
現実では冴えない男子高校生の俺も、小説の中では主人公になれる。
異世界の棚からラブコメの棚へ移動しようとしたところ、一人の女子が物色しているのが見え、俺はつい隠れてしまった。
あれって確かうちのクラスの……
名前の通り綺麗な桜色の髪をしている。よく見ると意外と顔は可愛い。
俺がクラスの人と全く話さないのもあって、桜庭とは一度も話したことがない。
いつも陽キャ男子とつるんでいるのでギャルだと思っていたが、まさかラノベを読むなんてな。
オタクに優しいギャルは嫌いじゃないぞ。
まあ俺にはもう心に決めた人がいるからヒロインにはしてあげられないけど。
「ねえ、隠れてないで出てきたら?」
まるで漫画の強キャラのようなセリフで桜庭は言った。
「バレてたのか・・・」
「なんかジロジロ見られてるなあ、て思ってた。」
神崎さんといい、女子は勘が鋭いらしい。
「あんた竹中よね?なんでここにいるのよ。」
「なんでって、ラノベを見に来たからだ。」
「私もラノベ買いに来たのよ。まさかクラスメイトに会うとは・・・」
「ギャルなのにラノベ読むのか?」
「別にギャルじゃないし!ラノベくらい読むわ。
でもあんたと同類だとは思ってないから。」
これは手厳しいな…
オタクに優しくないギャルは好きじゃないぞ。
ふと、俺は桜庭が手に持っているラノベを見た。
「あ、それ。読んだことある、面白いよな。」
「まじ?これ気になってたの!」
桜庭は目を輝かせて言った。こういう仕草は可愛いんだけどな…。要はツンデレ属性か。
「貸そうか?」
「いいの?」
「もちろん。返してくれるならな。」
「やった、ありがとう!」
満面の笑みで桜庭は言う。
くっ、笑顔が可愛い……。
「私この作者さんほんとに好きで・・・」
と、桜庭は語り始めた。俺も結構この作者の作品は好きだ。まさかこんな共通点があるとはな。
話が盛り上がり、俺たちはその場で小一時間話し込んでしまった。
専門分野で饒舌になるのはいかんな。
「やばい、俺そろそろ塾あるから行かないと。」
すっかり忘れていた。今すぐここを出ないと間に合わない。
「そっか。じゃ、帰ろ!」
そして、本屋から最寄りの駅まで2人で帰った。こんなイベントがあるなんてな。
俺は道中ドキドキしまくりだった。
別れ際、「明日借りに行くからね!」と言われた。
そうか、本を貸すということはまた話す口実ができたわけか。
正直今日の会話は楽しかったな。
揺らいでしまう……
俺は塾の授業に集中できなかった。
神崎さんは俺に好かれている らんたん @rantan152
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