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信くんの家は比較的新しい家が集中している、〇〇町でも珍しい場所にあった。
その青色の屋根の家が如月信くんのお家だった。
久美子の家も、あとさゆりちゃんの関谷の家もすごく古い家で(まあ、それが〇〇町では普通なのだけど)久美子は信くんの家がいつも新しくて羨ましいなと思っていた。
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
そう言って信くんは久美子とさゆりちゃんに手を降って自分の家の中に入っていった。
久美子とさゆりちゃんはそんな信くんに手を振り返して玄関のところから信くんを見送った。
「俺の場合は、そんなに時間はかからないと思う」
家に入る直前、ドアを開けたところで、信くんが後ろを振り返って、二人に向かってそう言った。
その言葉通りに信くんは本当にすぐに家の中から一人で出てきた。
「もういいの信くん?」
久美子は言った。
「ああ。別に家にお父さんとお母さんがいると思っていたわけじゃないし、それに、思い出の品とかも、ないしな。あ、でも一応、バットは持ってきた」
そう言って、信くんは木製のバットをその手に持ったまま、空に向かって、掲げた。
「武器はいらないって言った」不服そうな顔でさゆりちゃんは言う。
「一応だよ。一応。俺は男だしさ、責任があるだろ。二人を守る責任がさ。そのための一応の武器だよ。本当に使うつもりは、まあ、今のところ、ないよ」にっこりと笑って信くんが言った。
「それからもう一つ。これを手に入れられたのは大きいかな?」
そう言って、信くんはCDプレーヤーを差し出した。
半月型の青色のCDプレーヤーだった。
どうやら中にはCDが一枚、入っているようだった。
「これ、お父さんとお母さんの大好きな曲なんだ」
嬉しそうな声で信くんは笑いながら、久美子とさゆりちゃんにそう言った。
二人は、そんな信くんににっこりと笑顔を返した。
三人はそれから歩き出して、今度は久美子の三島家に向かって移動を始めた。
その移動の途中で、「ちょっと聞いてみるか?」と信くんに言われて、久美子は信くんの持ってきたCDプレーヤーのイヤフォンを片方もらって、歩きながら、その音楽を聞いた。
その音楽は洋楽のようで、歌詞は英語だった。
だから、どんな内容の歌なのか、英語のわからない久美子にはぜんぜんわからなかったけど、それはどうやら信くんも同じようだった。
「どうだ? すごくいい曲だろ?」
嬉しそうな声で、信くんは言った。
「……うん。すごく素敵な曲だね」
にっこりと笑って久美子は言った。それは久美子の本心だった。(少し寂しい感じのする、ラブソングだと、あとでさゆりちゃんに、久美子はその曲のことを教えてもらったりした)
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