20
「ほら、もう大丈夫。もう怖くないよ」
さゆりちゃんはそう言って久美子の頭を優しく撫でた。
そのおかげなのかもしれない。
久美子はそのあとでゆっくりと安心して布団の中で眠ることができた。「ありがとう。さゆりちゃん」久美子は言った。
さゆりちゃんは久美子ににっこりと微笑んでそれから自分の布団の中に戻って行った。
そんな二人の姿を見て、「三島はまだまだおこちゃまだな」と信くんが言った。
久美子はその次の日の朝、布団から出ることができなかった。
それはお母さんやお父さん、おばあちゃんやおじいちゃんのことが恋しくなったからではなくて、熱を出してしまったからだった。(昨日の帰り道は雨が降っていたし、山道を歩いたことで体力を使ってしまったからかもしれないし、あるいは、この不思議な経験の続いた数日の出来事で思ったよりも私(久美子)は疲れていたのかもしれない)
久美子は自分の体の丈夫さに自信があったので、熱を出してしまったことに結構ショックを受けた。
「ごめんね、さゆりちゃん。ごめんね、信くん」
布団の中から久美子はそんなことを二人に言った。
「まあ、ゆっくり寝てろよ。どうせ、今日も自習かなにかだろうしな」朝の準備を終えた信くんが言った。
「久美子ちゃん。またあとでね」同じように朝の支度を終えた、さゆりちゃんがそう言った。
それから二人は準備室の中から出て行った。
それから数時間後に道草先生が準備室にやってきた。
そこで道草先生は今日の授業も昨日と同じように一日中自習になること。それから、まだ久美子たち三人は学校を出て家に帰ることができないこと。(まだ川の氾濫やそのあとの道などの修復が終わっていないかららしい。その言葉を聞いて、久美子はまるで自分たちが本当に小学校の中に永遠に閉じこめられているような、そんな不気味な気持ちになった)
「どうする三島さん。保健室に移動をする?」
それから道草先生はそんなことを久美子に提案した。
久美子は最初は一人は寂しいからこのまま準備室で寝ていたいと思ったのだけど、よく考えてみると、久美子の風邪をさゆりちゃんや信くんにうつしてはいけないと思って、「はい。移動します」と道草先生に答えた。
「わかった」
道草先生はそう言って久美子の移動の手伝いをしてくれた。
それから道草先生と久美子は○○小学校の一階にある(ちょうど準備室とは反対側の場所にあった)保健室まで移動をした。
保健室の白いベットの中に入り込むと、久美子は道草先生に風邪薬を用意してもらって、その薬を飲んでからそのベットの中でぐっすりと眠りについた。
それはとても深い眠りだった。
なので久美子はその眠りの中で夢をなにもみなかった。
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