10
「可哀想に」
男は少女が出て行った扉を見ながら、口元に手を当てて意地悪くクスクスと笑う。
「あの言い分だと、君はまるで路上に転がっている石ころも同然だね」
「‥‥うるさいな」
背後の少年の苦虫を噛み潰したようなぼやきに、肩を上下に揺らす。
「いい加減独り立ちしないと、完全に見捨てられるのは時間の問題だよ」
「そんなこと、分かってるし」
「へぇ、そんな風には見えないけど?」
「おれは別に、ジャンヌに見返りを求めているわけじゃない」
「なら、普通そんな顔しないでしょ」
「‥‥チッ。それより、ジャンヌが顔を見られたってどういうこと?」
「ああ、聞こえてた?安心しなよ、確信がないから聞いたんだし」
「嘘つけ。あれは脅迫だよ」
「脅迫?人聞が悪いこと言わないでほしいな」
「不本意にもお前みたいな性悪のクソ野郎の側にいれば、心が読めなくてもそのくらい分かるんだよ」
「仮にそれが事実だったら何だっていうの?君如きに何が出来る?石ころの癖にさぁ」
「仕事を増やせ。可能な限り」
「‥‥」
「理由は、分かんだろ」
「いいよ。ちょうど暇を持て余していたところだし、無様に足掻く君の醜態でも余興くらいにはなるだろうしね」
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