遺書を用意している人
かき猫またたび(オス)
遺書を用意している人
今度、文化祭で演劇をやるんだ。クラスの子が脚本書くんだけど結構気に入ってるの。
へえ、いいじゃない。どうせやるなら面白いほうがいいね、恋愛ものとか。
ミステリ系。不倫したおじいさんが殺されるんだけど、「いつ死ぬかわからないから」って毎月遺書をしたためてるの。奥さんは遺書が書斎の引き出しに入っていることを知っていたから自殺したように見せかけるの。
なんかありがちな筋書き。書いた人には悪いけど、あまり特色を感じないかも。
たしかに今言った内容だとありふれてるね。けど面白いのは推理役の刑事で、言い表すのが難しいんだけど、どこか考え方が主観的なんだよね。
というと、何だろうな、推理が偏ってるみたいな。
さすがに推理や証拠はみんなが納得するようなものでなくちゃいけないからちょっと違うけど推理のきっかけがね。実際のところ推理役、かなりクズだからさ。不倫とか脱法ドラッグとか、ギリギリアウトなラインまではひと通り経験してるとか言っちゃってるんだよね。で、「自分の時は自殺する感じにはならなかった」みたいな。
うわーひどいなぁ。っていうか、線踏み越えちゃってるのか、普通超えてないから大丈夫みたいな言い方しそうだけど。だいたい自分が当事者だった時と同じ人でも状況でもないのに自分の経験ではこうだったみたいな考え方って通用するのかなあ。そもそも自分がまったく経験していないケースでは推理の糸口すら掴めない気が。
なかなか難しいんだけど、ちゃんとロジカルに積み上げてはいる。だけど、人の立場に立って考える時に「自分なら自死を選ぶか」、「この程度で死ぬもんだろうか」みたいな視点を入れていくわけ。例えば、不倫していたことが分かった時に、「その程度で、まあ私にそのような人はいないのですが、長年付き添った人を殺したりしますかねえ。誰しも誘惑にかられることはあるし、毒を食らわば皿まででしょ」って。
これはやってますわ。最後の一言ゴミですね。
けど逆にって言っていいのかわからないけど、ミステリとかだと被害者が色々やらかしたうえで最後の一押しみたいなのがあって勢い余ってみたいなのよくあるじゃん。そういう、えいやみたいなのもなく淡々と殺すのは何だかより恨みの深さを感じたわ。動機も結局不倫しているのに気づいたってことしかなかったから、推理した後に「不倫単体で人は殺せる、ふーん勉強になりました」みたいなこと言って立ち去っていくの。
感想がOJT。人の沸点、逆鱗の所在は千差万別ってことなのかねー。作品的には、内容に入り込めるかは大きいと思うから動機の設定は賛否がありそうだけど。
遺書を用意している人 かき猫またたび(オス) @kakinekomatatabi_osu
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