第2話 神様なら故人の息を吹き返せ

記憶の中の君はどんな風に笑ったんだろう。

あの時好きと言っていた髪飾り、僕も好きだったんだ。リボンの大きな髪飾り。いつから見惚れた黒髪よ。風船のように自由なあなたはいつの間に空へ向かって飛んでいった。雲の隙間に挟まっていないかと灰色の空を眺めては、ため息をこぼしてばかり。


気づいたらこんな大人になっていたのはきっとどこかで間違えたんだろう。大人になるほど口を閉ざして、心を絞めてきた。君は今も僕をみているだろうか。そんなわけないよな。こんな何もない僕はまだ君の陰を追いかけて掴めずにその場に立ちつくすつもりさ。未練たらしと笑うか?笑いたきゃ笑え。それだけ好きだってことを証明してるのさ。こんな僕にも心があったんだよ、きっとね。神様に抗って時計の針を巻き戻せたらまた君に会えるかな。また会ってくれますか。晴れ間に舌打ちするこんなやつに。

 

そういえばね、君がこの世から飛んでいったあの日、僕の誕生日だったんだよ。僕は大切な人を失い、生まれた日に死を選ぼうとしていたんだ。知らなかったでしょ?だからね、僕が神様の下で息を繰り返すたび僕は君を思い出して悔やみ続けるんだ。気持ち悪いでしょ。でもね、もうこれは愛とか恋とかそんなきらきらしたものじゃなくって呪いみたいなものなんだ、ごめんね。

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