〈幟〉のカナシュ/7
「あった! 道具、全部残ってた!」
「まつりおねえさん。これ」
孤児院の奥からはしゃいだ声が戻ってくる。リズの手には今日の空のように青いハンカチが握られていた。
ハンカチを差し出されたまつりは、そっと手に取ってまじまじ見つめる。ところどころほつれた糸、ムラのある染めの青。深青のネイルがハンカチの青の鮮やかさを際立たせる。
「綺麗だね、この青。手作り?」
「すごいだろ! リズと俺が縫ったんだぜ」
「もらって、ほしいの。ありがとう」
「いいの? ……ありがと。大事にする」
ハンカチを丁寧に畳んで、制服の内ポケットにしまう。に、っと嬉しそうに笑った。
「オリヴィア」
「はい」
「いいぜ。推しのライブのためなら、あたしは聖女にだってなってやる」
「……感謝します。私も全力で、貴女の帰還をお助けします」
「三ヶ月後。ロンペンのライブまでに、絶ッッッ対に帰るから!」
ネイルを傷めないように拳を握り、まつりは宣言した。
オリヴィアもまた真剣な表情で頷き、言った。
「ところで、ロンペンとは何なのでしょう?」
「知ーらんのかい! 〈ロンリー・ペンギン〉! ロックバンド! ギターもめっちゃいいけどとにかくドラムが神なの!」
「神……なるほど、貴女が信仰する異界の神ですか。大変興味深い。ああ、申し遅れましたが私は月の三女神、特に知恵と記録を司る巡月の女神を信仰しています」
「なんか伝わってない気がする……!」
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