記録 熒惑編
「記憶消去」
[
「記憶消去、、、!」
[
「記憶消去!!!」
[
「あーーもうなんで消えないの!もうこんなのに従いたくないの!もう、誰も傷つけたくないの!」
それは、micro AIにまで及んだ。
それは人々のリミッターを解除し、良きも悪きもみな暴徒と化していく。
いくらそのプログラムを消去しても何度も復活し人を甘い蜜へと誘う。
それでも人々は抗う。ただこの手に入れた平穏を守るために。愛する人を、守るために。
しかし悪意を持つものもまた後を絶たない。
ソレは更なる平和、人類が人類の手で作る平和などといった偶像を掲げ求め、壊し、今おも破壊していく。
自らが自らの手で勝ち取ったはずの世界政府の旗にに火をくべ、己諸共焼き滅ぼしていく。
惑う人々、暴走するAI、暴れる人々、燃える街、踏み潰されたハト。
ウーーーー! ウーーーー
危険が迫っています、すぐに避難してください!
警報が空気を震わす
「そんなの言われても、、、逃げてどうするのよ!外に出ればあたしも人を殺すだけの兵器に成り下がるのよ!夫おも殺した私に何ができるの!!」
あちらこちらからそんな悲鳴じみた声が聞こえる。
普段なら暗いはずの夜も不気味な黒灰色で曇っている。
輪郭のぼやけた三日月が、まるで嘲笑っているかのように見える。
AIは止められない。己も止まらない、助けも呼べない。火も回ってきている。
己の影に、潜む死
「なんでこんなのに嬉々として便乗している人がいるのよ、、、、そんなのどうかしてるじゃない、、、」
迫る火、響く警報、揺れる振動、闇夜に紛れる、黒い影。
大量に響く、救済の声。
「こんなならいっそ、、、自分で死んだ方が、、、。」
何がいけなかったのか。なぜ努力し、協力し、多大なる時と労力をかけた平和の象徴が、こんなにも人を殺しているのだろうか。私たちは、何を間違ったのか。
あの日。人々はAIと共に歩む未来に希望を見た。実際何もかもが上手くいっていた。貧困も格差もなくなった。私たち自身にも多大な義務が課せられ、それを乗り越えて、やっと掴んだ平和だったはずなのに。
どうして、こんなにも暴動が起きているのだろう。どうして、こうなってしまったのだろう。
ふと空を見上げる。
黒い星が、あたしを、私たちを見ている。
そして、
カッっと、星が爆ぜる
黒い波が辺りを呑み、黒い雨が降る。
あぁ。何を違えてしまったのか。
そんな呟きは風と共に消えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます